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ある晴れた日に

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5部分:序曲その五


序曲その五

「だから言うなよ。いいな」
「まあ別に言わないけどな」
「少なくとも御前イケメンじゃねえぞ」 
 このことに関しては引かないのだった。
「ドラマに出て来るチンピラにしかな」
「それも特撮だといきなり怪人にやられるタイプだ」
「宇宙人にやられないだけましだって思う場所か?ここは」
 野本も少し冗談を交えてきた。
「ったくよお、俺言われっ放しだな」
「御前が下手こいてんだよ」
「竹やん呼ばなかったらよかったんだろ」
「ちっ、御前等まで言うのかよ」
 仲間の坪本と佐々にまで言われて余計に不機嫌な顔を見せる。
「何なんだよ、ったくよお」
「まあこれでクラスのメンバーのことがかなりわかったね」
「ああ」
 正道は桐生の言葉に頷いた。
「そうだな。男も女も」
「しっかしこのクラスよ」
 もう立ち直った野本がここで言う。
「どいつもこいつも個性強そうだな」
「御前が言うと余計にそう思えるな」
 正道はこう野本に突っ込みを入れた。
「そのブレザーといいな」
「ああ、いいだろ」
 見れば彼のブレザーは上が青でズボンは赤だ。シャツは何と黄色でネクタイも赤い。
「俺のファッションってやつだ」
「全然似合ってねえよ」
 少なくとも色黒の坊主にはお世辞にも合っている服装ではなかった。
「趣味悪いぞ」
「ほら、やっぱり言われた」
 親戚の竹山にも言われる。彼は黒の詰襟である。
「僕の言った通りになったじゃない」
「うるせえっ」
 ムキになって言い返す野本であった。
「俺はこのファッションが合ってるんだよ」
「だからそれでいくんだ」
「ああ、ずっとな」
 やはりムキになっていた。
「このままいくぜ。高校の三年間な」
「まあだったらそれでいいけれど」
「そういう御前もよ」
 今度は野本が竹山に言うのだった。完全に親戚同士の会話である。
「何か愛想がねえよな。黒の学ランなんてよ」
「そうかな」
「そうだよ。折角この学校色々な制服があるんだぜ。だったらよ」
 そして言う。
「ほら、あそこの女連中みたいによ。カラフルに」
「確かに凄いね」
 彼の指摘に桐生が頷く。
「東が赤と青、黄色で」
 明日夢が赤、恵美が青、茜が黄色のブレザーを着ていた。完全に信号の配色である。だから余計に目立つ格好になっていた。
「西側も同じだね」
「ええと、あれは」
「こっちも戦隊っぽいな」
 野茂と坂上も言う。見れば咲が赤で凛が青、静華が黄、春華が緑、奈々瀬がピンクであった。未晴は黒でやはり戦隊の色であった。
「まあ全員似合ってるっていえば似合ってはいるな」
「まあそうだな。しかしよ」
 ここで坂上は苦笑いになるのだった。
「本当に制服は色々ある学校だな」
「詰襟にブレザーに」
 彼等は制服の話に入る。
「色だって色々だしな」
「こんな学校も珍しいよな」
「八条町にあるからか?」
 正道はこう仮定を立ててきた。
「八条学園だってあんな感じだろ」
「そういえばそうか」
「影響受けたのかね」
 この町にあるマンモス学園である。八条グループが経営しており幼稚園から大学院まである。それこそ生徒だけで万を優に超える巨大な学園である。この学園も制服は生徒がそれぞれ選ぶことができる実に多彩な種類の制服を持っているのである。
「あそこに」
「絶対そうだな」
「ここ一応市立だけれどな」
 神戸市立というわけである。
「それでも八条町だからな」
「八条グループの企業町だよな」
「そうそう、それそれ」
 皆今度はこのことについての話になるのだった。
「俺の親父も八条グループの工場にいるんだよ」
 坪本が言った。
「そこで課長やってるさ」
「課長さんかよ」
「毎日油だらけになって頑張ってるぜ」
 誇らしげに一同に語る坪本だった。
 
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