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パンドラの箱

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第二章

「パンドラという女に開けさせたのだ」
「左様でしたね」
「そして今度もな」
「ギリシアの者達にですね」
「希望を与えてだ」
「そしてそのうえで」
「働いてもらってな」
 そうしてというのだ。
「この厳しい状況を乗り越えてもらう」
「それがいいですね」
「そうだ、しかし見れば見る程な」
 オリンポスからギリシアという国を見下ろしてだ、ゼウスは呆れた顔になってそのうえでこうも言うのだった。
「怠惰というかな」
「何かですね」
「働く気がないというか」
「どうにもならないですね」
「経済がわかっているのか」
 そもそもというのだ。
「神も同じだが人間はだ」
「働かなくてはですね」
「どうにもならないが」
「それがですね」
「あの者達はだ」
「怠けてばかりで」
「どうにでもなれではないか」
 そうした状況だった、ゼウスが見る限り。
「役人は増やして税逃れはして」
「何か色々とありますな」
「全く、しかしな」
「しっかりとすればですね」
「この危機は乗り越えられるからな」
 だからこそというのだ。
「希望を与えよう」
「さらなるそれを」
「そうしよう」
 こう言ってだった、ゼウスはギリシアのある平凡な家庭の居間に箱を一つ置いた、そうしてオリンポスの神々を集めてオリンポスの主神の座から言った。
「ギリシアはこれより蘇る」
「あの、そう言える根拠は」
 アテナが父でもある彼に真剣な顔で突っ込みを入れた。
「一体」
「私が希望を与えたからだ」 
 立派な髭を生やした端整な顔での返事だった、そこには威厳があった。
「だからだ」
「その希望と共にですか」
「彼等は立ち上がってだ」 
 そのうえでというのだ。
「今のどうにもならない経済を自分達の力でだ」
「建て直しますか」
「しっかりと働いてな」
「そうですか」
「あの箱を開ければだ」
 ゼウスは上に移してあるその家の居間の状況を見つつ言った。
「その時からギリシアは蘇るのだ」
「そうなりますか?」
 今度はヘパイストスがかなり真剣に尋ねてきた。
「果たして」
「なる」
 ゼウスはヘパイストスにも答えた。
「誰でも箱位開けるな」
「それはそうですが」
「それだけではじまるのだからな」
 それならというのだ。
「ギリシアが蘇らない筈がない」
「あの、希望よりも」
 今度はデメテルが言ってきた。
「むしろ彼等に必要なのは」
「何だ、それは」
「勤労意欲とです」
 それと、というのだ。
「自立心では」
「その二つか」
「希望を与えても」
 今のギリシア人達にというのだ。 
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