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レーヴァティン

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第百九話 書の収集その七

「退きだした今強い一撃を浴びせ」
「そこで勝敗を決しますか」
「そうする、では攻めさせろ」 
 騎馬隊、彼等をというのだ。こう話してだった。
 英雄は実際に自分達の軍勢の左手に布陣している騎馬隊を敵の軍勢の右手に向かわせた、騎馬隊を率いていた智はすぐにだった。
 自ら馬を駆った、そうして先頭に立って刀を抜いてだった。
 敵の軍勢を攻めた、すると退いていた敵の軍勢はこれで総崩れになった。彼等は何とか軍勢の形を保ったまま都に向けて逃げていった。
 その敵の軍勢を見てだった、英雄は言った。
「先に都に兵を進ませていてよかったな」
「はい、敵は都に逃げています」
「そちらの方に向かっています」
「ならですね」
「先に兵を進ませていてよかったですね」
「その都の方に」
「全くだ」
 その通りだとだ、英雄は兵達に応えた。
「先に手を打っておいてな」
「若し都に篭られますと」
「そう思っただけで、ですね」
「嫌なものがありましたな」
「都での戦になると」
「都は荒らしたくない」
 本音もだ、英雄は出した。
「その見事な街並はな」
「荒らさないで、ですね」
「そのまま手に入れる」
「そうお思いですね、棟梁は」
「その通りだ、都の街はだ」
 そこはまず、というのだ。
「出来るだけ無傷で手に入れたい」
「だからこそですね」
「敵が都に逃げ込ませない」
「ここは」
「そうだ、では追うぞ」
 その敵をと言ってだ、そしてだった。
 英雄は逃げる敵を追ってさらに攻めた、彼等は都に向かって逃げていきその足は速かったがそれでもだった。
 彼等は都に英雄達の軍勢の旗が翻っているのを見て言った。
「なっ、馬鹿な」
「何故敵の旗が翻っている」
「都にまで敵が来ていたのか」
「そうなのか」
「こうなっては仕方がない」
 敵の総大将が忌々し気に言った。
「ここは近江まで逃げるぞ」
「わかりました」
「こうなっては仕方ないですね」
「それでは」
「逃げるぞ」
 こう言うしかなかった、それでだった。
 敵は近江に逃げた、英雄達は彼等にさらに追撃を仕掛けたがそれは近江との境まででそこから先は進まなかった。
 逸る兵達にだ、英雄はこう言った。
「深追いはするな」
「だからですか」
「追うのはここまでですか」
「これ以上は追わない」
「そうなのですか」
「そうだ、これから先は敵の庭だ」
 つまり本拠地だというのだ。
「だからだ」
「ここで止まる」
「そうすべきですか」
「山城の国は抑えた」
 都のあるこの国はというのだ。
「だから今はこれでいい」
「ではですね」
「今は山城の守りを固め」
「そしてですか」
「そうだ、都に入る」
 こう言ってだった、英雄は山城と近江の国境の守りを固めてそうしてだった。主力を都に入れたのだった。
 英雄は都に入るとすぐにだ、御所に入り代々の帝であられる神々を奉る朝廷に置いて公卿達に礼装姿で会った。 
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