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レーヴァティン

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第百九話 書の収集その五

「その壁は低く堀も狭く浅いもので」
「ないよりまし程度だな」
「ですから守るに適した場所ではないので」
「篭られてもな」
「大したものではありません、ですが」
「都が戦で荒れることはな」
「避けたいですね」
 良太は英雄にこのことを確認した。
「どうしても」
「戦の間に都にも兵を向けておくか」
「それがいいかと」
「ではな」
 ここでだ、ここでまた言った英雄だった。
「兵の一部でもな」
「先に都にですね」
「送っておいてだ、敵が都に逃れようとしてもな」
「そして籠城しようとしても」
「それが出来ない様にしておくか」
「先にですね」
「そしてだ」
 そのうえでというのだ。
「今のうちにな」
「ことを進めておくか」
「そうしましょう、都についても」
「ではここはだ」
 ここでだ、英雄は耕平と峰夫に対して言った。
「二人で僅かな兵でもな」
「身軽な連中を連れてやな」
「秘かに都に入ってでありますな」
「都の要所を固めて」
「敵が逃げてきても」
「都に入れるな、お前達が敵を足止めしている間にな」
 その間にというのだ。
「俺達が敵を破った主力を率いてだ」
「その敵に迫って」
「都から追い払うでありますな」
「そうする、都に敵を入れなければいい、都にある程守りの兵はいると思うが」
「少ないで」
 そうだとだ、ここで言ったのは耕平だった。
「都の状況も調べたけどな」
「そうか、どれ位いる」
「千もおらん」
「ではお前達が軽く兵を率いて奇襲を仕掛ければな」
「千もおったらな」
「充分だな」
「それ位の兵は割けますね」
 良太はここでまた述べた。
「では問題なしですね」
「そうだな、ではだ」
「今からやな」
「そうして攻めていく」
 戦略はそれでいくというのだ、こう言ってだった。
 英雄は兵を動かした、そうして敵の軍勢四万に兵を向けた、その敵とは摂津から山城に入って三日程して対した。
 その敵を見てだった、彼は言った。
「言った通りだな、敵は四万でだ」
「はい、そしてですね」
 謙二もその敵の軍勢を見ている、そのうえで英雄に話した。
「鉄砲は五百、大砲は一つで」
「槍は短い」
「しかも弓矢も具足も質が落ちます」
「俺達のものと比べてな」
「それではですね」
「勝てる相手だ、だが」
 敵を見つつだ、さらに言う英雄だった。
「陣はいいな」
「守りは固いですね」
「敵もわかっている」
「自分達の劣勢を」
「だからだ、敵は迂闊に攻めずにな」
「守りを固めてですね」
「戦うつもりだ、敵将は決して愚かではない」
 確かな声でだ、英雄は言った。 
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