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戦国異伝供書

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第四十四話 上田原の戦いその八

「油断出来ぬ、ただな」
「はい、道三殿はご子息はおられますが」
「そのご子息殿と不仲じゃな」
 嫡男の義龍と、というのだ。
「若し何かあればな」
「そこに隙が出来るやも知れぬので」
「その時はな」
「美濃を伺いますか」
「お家騒動が起こって長引けば」
 その時はというのだ。
「付け入ることが出来るやも知れぬ」
「では美濃の東から入り」
 板垣も言ってきた。
「そこを抑えて」
「そして稲葉山のな」
「あの城も攻め落としますか」
「そうじゃ、しかしあの城はじゃ」
 稲葉山城、この城はというのだ。
「今我等が話した砥石城よりもじゃ」
「攻めにくい城ですな」
「稲葉山全てを使った城じゃ」
 かなり大きな山城である。
「それ故にじゃ」
「攻めてもですな」
「そうそうは攻め落とせぬ」
「だからですな」
「あの城を攻めるにあたっては焦らずじゃ」
 そうしてというのだ。
「そのうえでじゃ」
「攻めてですな」
「そのうえでな」
「攻め落として」
「手に入れたい」
 これが晴信の稲葉山城に対しての考えだった。
「是非な」
「左様でありますな」
「うむ、しかし美濃はおそらくじゃが」
「おそらくとは」
「道三殿健在なら攻めにくく道三殿が倒れても」
 それからのこともだ、晴信は考えつつ述べた。
「娘婿の織田殿が出れば」
「美濃はですか」
「織田家のものになる」
「そうなるとですか」
「お館様は言われますか」
「あの御仁がうつけとはわしは全く思っておらぬ」
 ここでも信長のことを話すのだった。
「それどころかじゃ」
「お館様はいつも言っておられますな」
「天下の傑物だと」
「長尾殿と共に片腕に欲しい」
「そこまでの御仁だと」
「そうじゃ、だからじゃ」
 信長はそこまでの者だからだというのだ。
「わしがうかうかしておるとな」
「その時はですか」
「美濃は織田家のものとなる」
「そして上洛もですか」
「織田家がですか」
「今織田家は今川家と対しておるが」
 尚今川家の主である義元は織田家を軽く見ている、うつけが自分達より弱い勢力でいるだけだとだ。
「しかしな」
「今川殿でもですな」
「勝てるかどうか」
「そうそう間違いはないと思うが」 
 今川家にはというのだ。
「今川殿も聡明で雪斎殿もおられるしな」
「ですな、大きな不覚はないかと」
「それでは」
「そうであるが」
「今川殿は足止めして下さいますか」
「織田家を」
「そう見るが若しもじゃ」 
 晴信は今川家と織田家のことをさらに話した。 
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