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戦国異伝供書

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第四十四話 上田原の戦いその一

               第四十四話  上田原の戦い
 晴信率いる武田軍二万は上田原の方に兵を進めた、この時晴信は前を見つつ信繁に対してこんなことを言った。
「思いついたことがある」
「何でしょうか」
「うむ、わしの兜じゃが」
 武田家の赤い軍勢の中での言葉だ。具足も陣羽織も旗も兜や陣笠も鞍も全て赤い。それはまるで燃え盛る火の様である。
「この諏訪の兜はな」
「目立ちますか」
「うむ、それで思いついたのじゃが」
 こう前置きして話すのだった。
「この兜を一つか二つ余計に作ってな」
「そのうえで、ですか」
「影武者を置いてじゃ」
 そのうえでというのだ。
「敵を惑わすな」
「そうしたこともですか」
「どう思うか」
「面白いですな」
 信繁は兄の言葉を聞いて考える顔になって答えた。
「それもまた」
「そう思うか」
「はい、そう言えばそれがしもです」
「わしに似ておるな」
 外見がとだ、晴信は信繁に応えた。
「そして他の弟達もな」
「兄弟だからですが」
「なら例えばお主をわしの影武者にしてな」
「そうしてその間にですな」
「他の策を講じることもな」
 そうしたこともというのだ。
「出来るしな、あとわしがおらぬと思えば」
「いるという風にも見せられる」
「わしが二人おればどうじゃ」
 晴信はその場合のことも話した。
「その場合は」
「敵はどちらが兄上かと惑いますな」
「そうじゃ、だからな」
 それでと言うのだった。
「色々に使えるからな」
「影武者を用意しますか」
「兜も用意してな」
 諏訪のそれをというのだ。
「いいであろう」
「そうじゃな、ではこの戦の後でな」
「影武者を置く用意をですか」
「しようぞ、まあこの話は後にしてな」
「今はですな」
「村上家、小笠原家の軍勢と戦おう」
 目の前にいる敵達と、というのだ。
「そうしようぞ」
「さすれば、それでなのですが」
 信繁は戦のことになってだ、晴信にあらためて話した。目の前には両家の軍勢の八千がいる。
 兵の数はこちらが明らかに上だ、だが彼はそれでも兄に話した。
「敵は数が少ない分必死であり」
「普段以上の力を出してくるわ」
「はい、しかも布陣を見れば」
 信繁はさらに話した。
「槍兵達が多く」
「迂闊に攻めればな」
「あの槍で動きを止められ」
「そしてな」
 そのうえでとだ、今度は晴信が話した。
「槍で突き崩される」
「そうなりますな」
「見れば前からだけでなくな」
 敵の布陣をまじまじと見てだ、晴信はさらに話した。
「横から攻めてもな」
「堅固ですな」
「騎馬隊は動きを止められるか横から攻められると終わりじゃ」
 晴信は騎馬隊の弱みもわかっていた、その場合はというのだ。 
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