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麗しのヴァンパイア

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第百四十四話

             第百四十四話  十時のワイン
 カーミラは雪路をその店に案内した、そこは屋外でも飲むことが出来る喫茶店にも見える店であった。
 その店でカーミラハ赤ワインを二本とだった。
 ソーセージとチーズ、クラッカーそれにハムも注文した。そうしてだった。
 グラスで飲みはじめた、雪路はその赤ワインを飲んで言った。
「甘いですね」
「そう、飲みやすいね」
「そうしたワインですね」
「それをね」
 今からと言うのだった。
「一本飲むのよ」
「このお店ではですね」
「ええ、一本でもね」
「充分ですね」
「今飲むには」
 それならというのだ。
「これ位よ、ではね」
「今からその一本を」
「ソーセージやチーズと一緒にね」
 見ればどれも量は多くない、二人のそれぞれの白い大きめの皿にあるだけだ。少し少食な人の朝食位の量だ。
 そのソーセージやチーズを食べてワインを飲むとだった。
 美味い、雪路はそのことを実感して笑顔になった。
「チーズもクラッカーもよくて」
「ソーセージもでしょ」
「ワインが進みます」
「昼食前の軽いおやつでね」
「カーミラさんも飲まれていますか」
「そうなの、そしてね」
 それでと言うのだった。
「楽しんでいるわ」
「そうですか」
「時々だけれどね、けれど」
「その時々がですね」
「楽しいのよ」
「そうですか。ただ」
 雪路はワインの美味さ、そして酒だからこその酔いを感じつつカーミラを見て彼女に尋ねた。
「カーミラさんのお仕事は」
「お金はあるから」
「働かれていないですか」
「そうなの、資産は自然と増えてるし」
 実はその辺りの手配は使い魔達がしている、資産運用についても有能な者達なのだ。
「何も困っていないわ」
「そうしてですか」
「今は日本で暮らしているの」
「それは何よりですね」 
 こう話しつつだった、雪路は一本を飲んで言った。
「食べるものもなくなりましたし」
「私もね」
「素敵な時間を過ごせました」
「その時間は終わりではないわよ」
 カーミラは空になった赤ワインの二本のボトルを見つつ述べた、皿の上にも何もなかった。だがそれでも終わりではないというのだった。


第百四十四話   完


                2019・3・21 
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