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美化し過ぎ

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第一章

               美化し過ぎ
 極楽での話である、豊臣秀吉は極楽浄土では正室のねねと共に暮らし轢き米だの漬けものだのを楽しみつつ悠々自適な暮らしだった。
 かつては殺し合った者達とも仲直りして仲良く暮らしてもいる、その彼がやはり仲直りした千利休の屋敷に来て茶室で彼の茶を馳走になっていると。
 ふとその利休が彼にこんなことを言ってきた。
「我等の顔のことですが」
「お主はともかくわしはこの通りじゃ」
 秀吉は真面目な顔で語る利休のきりっとした顔を見つつ笑って言った。
「猿顔じゃ、猿関白だの言われておった通りにな」
「いや、それがです」 
 利休は秀吉にさらに話した、彼も茶を飲みながら。
「人の世では変わってきていますぞ」
「わしの顔がか?」
「はい、確かに猿面冠者だの猿関白だの言われていますが」 
 秀吉が猿顔であることは後世の人の世でも知られているというのだ。
「しかしです」
「変わっておるのか」
「今下の世界では様々な遊びがありまして」
「それは聞いておる、書も随分変わってな」
「絵と文字で成っている大層面白い」
「漫画であるな」
「そこで我等が描かれていますが」
 こう言ってだ、利休は秀吉に何冊かの漫画を出した。そうして秀吉もその漫画を手に取ってぱらぱらと見てみるが。
 全部の漫画をおおよそ読んでから利休に言った。
「確かにわしと書かれておるが」
「それもわかりやすい字で」
「そうであるが」
「我等の顔は」
「お主随分と達観して整った顔にばかり書かれておるな」
 秀吉はどうかという顔になって利休を見て述べた。
「多くの漫画でな」
「そして太閤様は」
「猿顔に書かれておるのが多いが」
 秀吉自身そこは納得した、何しろ生きていた頃ずっと猿と言われてきたからだ。
「しかし今のわしよりずっとな」
「恰好いいとですな」
「思う、わしはあそこまでじゃ」
「きりっとしておらず端正でもというのですな」
「自分の顔のことは誰よりもわかっておるわ」
 それこそというのだ。
「わしは不細工じゃ、男前ではないわ」
「ですがそこをです」
「わし等の後の時代の本朝の者達はか」
「恰好よく男前に描いているのです」
「美化し過ぎであろう」
 こうも言った秀吉だった。
「幾ら何でも」
「それでもです」
「後世の者達はこう描いておるか」
「そしてゲームなる遊戯では」
「それも知っておるがな」
「お家にテレビはありますな」
「うむ、実はねねが昔からファミコンやセガやプレステが好きでのう」
 極楽にもそうしたゲームが伝わっていて他ならぬねねが夢中になっているのだ。 
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