二十年

「そこはな」
「左様ですか」
「ではな」
「これよりですね」
「話をしよう」
　美女の身体が許す限りというのだ、こうしたことも話してだった。
　王は美女と話した、そして美女が言葉を終えると明日もと告げてその場を後にした。そして玉座に戻るとまた廷臣達に話した。
「ポンバドゥール侯爵夫人のことだが」
「先程も会われましたね」
「そうされましたね」
「そして明日も」
「そうするが。だが」
　それでもとだ、王は言うのだった。
「会えば会うだけな」
「あの方は、ですね」
「痩せ衰えていっておられる」
「そうなのですね」
「労咳だ」
　この病だとだ、王は言った。
「元々助からぬ病でだ」
「かなり重くなっている」
「そうなのですね」
「あの方は」
「そうだ、だからもうだ」
　それこそというのだ。
「余命幾許もない」
「だからこそですか」
「王はあの方を見舞われるのですね」
「明日も」
「そうする、余が出来ることはだ」
　それこそというのだ。
「これ位しかないのだからな」
「そう言われますが」
「王がそこまでされるとは」
「流石に」
「私は彼女にどれだけ助けられてきたか」
　ポンパドゥール侯爵夫人、彼女にというのだ。
「それでだ」
「そう思われるとですか」
「この様にせざるを得ない」
「そうなのですか」
「そうだ、余はこの通りの者だ」
　王は自分でこうも言った。
「王としての資質はない、しかしだ」
「あの方は助けてくれた」
「そして国を治めることを手伝ってくれた」
「だからですか」
「そのことを思うとだ」
　まさにというのだ。
「こうせざるを得ない」
「左様ですか」
「それで明日もですね」
「あの方を見舞われる」
「そうされますか」
「彼女が世を去るまで」
　この時までというのだ。
「私は彼女を見舞う」
「ご公務が大変ですが」
「それでもですね」
「時間を見られてですね」
「そうしていこう」
　こう言って実際にだった。
　王は時間が許す限りポンバドゥール侯爵夫人の枕元にいて
だった、その中でいつも着飾っている夫人に対して告げた。