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蘇った女

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第三章

「違うか」
「山田の娘をですか」
「それは鵜足の老婆だ」
 同じ讃岐の同じ名前の者といってもというのだ。
「そこが違う」
「おわかりですか」
「そうじゃ、そしてお主がそうした訳もわかっておるわ」
 閻魔は己の座から役鬼に対して厳しい声で告げた。
「既にな」
「門で馳走を食ったことを」
「迂闊なことをしたな」
「申し訳ありませぬ」
「その罰としてお主は暫し飯抜きにし牢に入れる」
 閻魔は役鬼に彼への沙汰も告げた。
「そこで反省せよ」
「それでは」
「しかしじゃ」
 役鬼への沙汰を下してからだ、閻魔は彼にあらためて話した。
「お主が門の左右の馳走を食ってしまったならな」
「それならですね」
「まじないを聞かぬ訳にはいかぬ」
 こうも言うのだった。
「約束をしたのだからな」
「まじないにある願いを聞くという」
「それならば鵜足の女の命は取れぬ」
 決してというのだった。
「何があってもな」
「それでは」
「あの女の命は助けよ、あとじゃ」
 閻魔は今度は鵜足の老婆を見て話した。
「そちらの鵜足の老婆じゃが」
「どうされますか」
「まだ死ぬ時ではない」
 それが間近でもというのだ。
「なら死なせることもな」
「ありませぬか」
「うむ」
 その通りだというのだ。
「ない、決まった時に死んでもらう」
「それでは」
「その老婆は送り返せ、そして山田の娘はじゃ」
 この娘のこともあらためて話すのだった。
「お主が馳走を食ったからな」
「だからですか」
「助けてやる、寿命は伸ばす」
 そうするというのだ。
「何十年かな」
「その様にしますか」
「うむ、ではその老婆を送り返せ」
 役鬼にこう告げてだった、閻魔は役鬼に老婆を鵜足まで送らせた。そして老婆は戻ってすぐに自分の家族に話した。 
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