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ロックマンX~Vermilion Warrior~

作者:setuna
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第156話:Σ Dead

VAVAを退けたアクセルはルナのバレットを構えてシグマパレスの通路を縦横無尽に動き回っていた。

「ホーミングショット!!」

目の前のシグマ…正確には新世代型のレプリロイドがシグマボディをコピーしたコピーシグマを蹴り上げて体勢を崩した後にホーミングショットによる追撃を浴びせる。

絶え間なく、体勢を崩されたことで逃げることすら許されない怒濤の連続攻撃の前には流石の頑丈で優れた設計のシグマボディも耐えきれずに爆散してしまう。

ホーミング弾を放ってくるコピーシグマにはステルスで対応し、攻撃を防いだ後は不可視状態を活かして無慈悲なブラストランチャーの手榴弾の爆風で粉砕されてしまった。

「コピーしてもオリジナルには遠く及ばないか」

オリジナルのシグマとはアクセルも戦ったことがあるために分かるのだ。

シグマの強さはこんなものではないと。

「スパイラルマグナム!!」

小さな反応を感知したアクセルはそこにマグナム弾を数発放って狙撃しようとしたコピーシグマの頭部と動力炉を撃ち抜いて破壊した。

しばらくするとシグマパレスの最深部に辿り着いて高台になった足場に飛び移り、これまでと打って変わって誰もいない通路を抜ける。

その場所はまるで絨毯のように真っ直ぐ伸びた赤いラインがあり、目で数えられる階段の上にぼんやりと見える人物に目を見開いた。

忌まわしい男の、あまりにも人型としてかけ離れた姿が目の前にあったからだ。

「小僧…確か、アクセルと言ったか…新世代型レプリロイドのプロトタイプ…その貧弱な能力で良くぞここまで辿り着いたものよ」

「…………」

アクセルはシグマの姿を思わず凝視する。

灰色の金属が剥き出しのまま所々途切れ、その切断を緑色の光が繋いでいた。

今までのシグマにあった、メカニロイドと思わせた程のレッドアラートの戦いのシグマにもあった人工皮膚が存在せず、内部構造を露出させ、より地獄の住人に相応しい姿に成り果てた姿だった。

同時にこれはシグマ本体とも言えるシグマウィルスが消滅しかけている証拠でもあった。

先のコロニー事件でシグマウィルスの大半を失い、度重なる偶然による残滓のウィルスによる奇跡の復活はしたが、残ったウィルスではシグマの完全な復活は無理になってしまったのかもしれない。

「随分気持ちの悪い外見になったね。宇宙に逃げたら僕らが手を出せないとでも思った?」

「逃げた…のではないな…我々は愚かな連中がひしめくあの惑星を捨てたのだよ。」

人の表皮など始めから存在しないボディはロボットすらまともに造れなかった西暦二千年代の、前時代的なそれに感じられた。

胸部の紅いコアは生物の心臓のように明滅しており、あまりにも動物じみたそれにアクセルは悍ましさを抱く。

「あんたはレッドやレッドアラートだけじゃなくルナにまで手を出した。僕の大事な物に手を出すとどうなるか…前の戦いでたっぷりと教えてあげたつもりだけどあんたの頭に叩き込むには全然足りなかったようだね…まあ、今度こそあんたはここで終わりだよ」

アクセルの冷徹な声にシグマは嘲笑を浮かべながら口を開いた。

「クックックッ…終わるのはどちらかな?最早時間の針を戻すことは出来ん。全ては過ぎたこと、過去など最早どうでも良いことだ。今は未来しか興味を覚えぬ。世界が宇宙にその生きる道を見出だした時…、宇宙開発に携わった、高性能な新世代型レプリロイドは、我が意思を継ぐ子供達だったのだからな!!」

「意思を継ぐ…子供…!?」

シグマの言葉にアクセルは思わず目を見開く。

そんなアクセルをシグマは嘲笑いながら更に言葉を続けた。

「そう…ヤコブ計画で産み出された新世代型レプリロイドの設計に干渉し、コピーチップに我がデータを刻んだのだ!貴様らが築こうとした世界は我々の世界なのだよ!最早、計画は最終段階だ。旧き世代の貴様らの役目は終わった、哀れなプロトタイプよ…滅ぶが良い!!」

シグマはアクセルの前に立ちはだかると数瞬を置いて、いつの間にか握り締めていた緑に光り輝くブレード…Σブレードがその力を惜しみなく解放した。

「でかっ…」

思わずアクセルは呟いてしまう。

それはゼロやルインのセイバーすら凌駕する出力を誇る大剣で全身から凄まじい殺気がシグマから吹き荒れる。

シグマは最初から本気で決着をつけるために全力でアクセルを叩き潰しに向かう。

「全力で来い!エクリプスレイ!!」

掌からリング状のレーザーを放つ。

3つのリングが連なって迫るが、アクセルはエアダッシュを駆使してレーザーを回避する。

「こんなもの当たるか!!」

回避するのと同時にバレットを構えてショット連射するアクセル。

「それがお前の力か?」

ショットの連射をまともに浴びてもびくともしないどころか嘲笑を浮かべるシグマ。

どうやら見た目に反してシグマのボディの頑強さは健在なようだ。

「ならこいつはどうだ!?レイガン!!」

邪悪な見た目のために光属性の攻撃が弱点ではないかと予想してレイガンのレーザーを当ててみたアクセル。

「ぬっ…ふっ…小僧、やるではないか…」

レーザーがシグマのボディに当たると僅かに頑強なボディに傷を付けた。

「余裕でいられるのも今のうちだ!!一気に決めてやる!!」

時間を与えればシグマはどんな手を使ってくるか分からないために弱点と判明したレイガンで一気に仕留めに掛かる。

「クク…そうでなければ面白くないわ!!」

アクセルの放ったレーザーがかわされた。

シグマが空間転移で回避したのを理解して辺りを見回すがいない。

しかし、突如発生した凄まじいエネルギー反応にそちらを向くと、シグマが掌にエネルギーを収束していた。

「喰らうがいい!!ドゥームバスター!!」

シグマ版のチャージショットとも言うべき一撃がアクセルに向けて放たれた。

「ステルス!!」

即座にステルスの特殊な力場でシグマの放ったエネルギー弾を防ぐ。

防ぎ切ったことを確認するとステルスを解除する。

このステルスは効力は素晴らしいが、持続時間はアクセルのコピー能力を維持するのと同じくらいしか保たない。

ホワイトアクセル状態ならば無制限に使えるが、流石に斬撃などの強力な直接攻撃は防げないので防御力が低くなるホワイトアクセルを発動するのはパワーが高いシグマ相手ではリスクが伴う。

「ほう、その光学迷彩は防御にも使えるか…あの時、私のレーザーを防いだのもそれか…プロトタイプにしては有用な技を使うではないか」

「その余裕の顔を消してやるよ!!」

再びレイガンを構えてシグマにレーザーを発射するアクセルだが、シグマはブレードで防ぎながらアクセルに斬りかかる。

巨大な大剣をまともに受ければアクセルの細い体など容易に真っ二つとなるが、アクセルはそれをローリングでかわしながらレイガンで反撃する。

「そうだ、存分に足掻け!!貴様も我が野望を阻止した愚か者の1人!あの愚かな小娘を壊した程度では私の怒りは収まらぬわ!!」

「ルナを侮辱するなイレギュラー!!」

ルナを侮辱したことに怒りを露にしながらレーザーの弾幕を張る。

「甘いわ小僧!!ファントムデヴァイド!!」

空間転移でアクセルの真上に移動し、落下の勢いを加算してブレードを振り下ろしてくる。

アクセルはダッシュでかわすが、一撃、二撃…攻撃を繰り返す度に衝撃波の範囲が広くなっていき、そして三撃目の衝撃波を受けて吹き飛んでしまう。

「ぐっ!?」

「終わりだ小僧」

仰向けに倒れたアクセルの頭を踏みつけるシグマは忌々しい物を見る目でアクセルを見つめる。

「っ…」

「元はと言えば貴様があの時、レッドアラートを抜けなければこんな不完全な復活を遂げることはなかったのだ!!貴様が抜けなければ、私はレッドを利用して貴様に手に入れさせたDNAデータで私自身の強化と共にルインに奪われたシグマウィルスを補うことが出来たのだ!!それどころか貴様は抜け出しただけではなく、私の野望を阻止した。あの役立たずのレッドや小娘など壊され、死んで当然だったのだ。それが私の野望を阻止した貴様の罪だと知れ!!」

シグマの言葉にアクセルの中で何かが切れた。

ルナだけでなく、育ての親であるレッドまで侮辱する言葉にアクセルは憎悪の表情を向けた。

「……して…やる…」

「む?」

「殺してやる…!!ルナだけでなくレッドまで侮辱するなんて…絶対に許さない…!!」

ブラックアローを構えて闇属性の矢を発射する。

レイガンのレーザーと比べて遥かに遅い攻撃は至近距離での発射であってもシグマにはかわすのは容易であった。

「ふん、このような攻撃…ぬう!?」

背中に衝撃が走ってシグマの体勢が崩れた。

シグマの背に矢が刺さっていたのだ。

これがブラックアローの特徴で、ブラックアローは確かに射程、連射性能はレイガンやアイスガトリングに劣るが、高いホーミング性能を誇るのだ。

威力は大きく劣るものの、Aバレットのホーミングショットとは違って一々ロックオンしなくても良いのも利点だろう。

体勢を崩した隙にアクセルはシグマとの距離を取ってホワイトアクセルを解放した。

リスクなど最早どうでもいい、目の前の敵を討滅することに全神経を注ぐだけだ。

「…それが貴様の真の姿か?奇妙な偶然もあるものだ。出来損ないのプロトタイプである貴様が新世代型の最高傑作であるルミネと酷似した姿とは」

「どうでもいいよそんなこと。僕はあんたを倒す。今はそれ以外どうでもいいんだ」

負担など考えずに目の前の怨敵に意識を集中。

アクセルは負担度外視でダッシュでシグマに接近してルナのバレットを構えた。

「馬鹿め!!」

横薙ぎしてアクセルを両断しようとするが、それよりもアクセルが動く方が早い。

跳躍してシグマの顎を蹴り飛ばして体勢を崩しつつ、距離を取ってロックオン。

「ホーミングショット!!」

バレットから発射されたレーザーはシグマを逃すことなく確実に決まっていく。

「小癪な…!!」

思わずシグマは呻くが、アクセルはバレットのエネルギーが尽きるまでレーザーを撃っていく。

そして使い切るとレイガンの弾幕を張りながら縦横無尽に駆け回る。

「速い…何なのだその速さは…?その速さはレプリロイドの限界を超えている…だが、いくら足掻いたところで貴様らが守ろうとした世界が縋った計画も全て我が手の内だったのだ。貴様らに残されているのは絶望しかない。大人しく滅びを受け入れるがいい!!」

「冗談!ここで諦めたらあんたが喜ぶだけだし、レッドやルナにどやされるに決まってるからね!!僕らがいる限りあんたに都合のいいエンディングなんかない!!」

負担を顧みないダッシュはアクセルの加速器にダメージを蓄積させていくが、元々機動力が優れるホワイトアクセルでのそれはシグマですら対処が難しい程の速さに達しており、アクセルは最終手段に出た。

「ステルス!!」

光学迷彩を使って姿を消しながら再び蹴り上げてシグマの体勢を崩すと、再びホーミングショットのレーザーを浴びせる。

「ぬおおおお!?こ、これは…先程よりも威力が上がっているだと…?」

「忘れた?この状態の時は攻撃力が上がるんだよ。あの時のあんたの体に風穴を開けたのもこれのおかげさ」

ステルスの効力は不可視や力場による防御性能だけでなく攻撃力強化もあるのだ。

「ぬうう…だが、プロトタイプの貴様がどれだけ浅知恵を働かせようとも、次世代の王たる我が力の前には何もかも無力よ!!レイヴデヴァイド!!」

ダメージに構わずにシグマは空間転移で真上に移動し、風を切って飛び降りて着地と同時に斬り上げ、残像を持って振り下ろす。

鋸に似た線を描く攻撃がアクセルに繰り出された。

致命傷はかわすものの、ダメージでステルスが解除されてしまうが、構わずに反撃でブラックアローを連射していく。

激しく動き回る相手に確実に当てるにはこのブラックアローが一番だ。

ダメージの蓄積によりシグマのコアにピシリと僅かに罅が入っていく。

「(シグマのコアに罅が入った。あと少しだ!!)ブラストランチャー!!」

再びステルスを発動してブラストランチャーの手榴弾を連射しながら反撃する。

無理な機動で体が悲鳴を上げており、アクセルの体に亀裂が入り始めた。

しかしそれはシグマも同じで、爆風を受ける度にシグマのボディのあちこちで亀裂が生じていた。

シグマの纏うオーラが一目瞭然なほどに弱っているのを感じた。

「あんたの負けだ!!」 

至近距離でのプラズマガン。

全身を襲う痺れにシグマは表情を歪めた。

「舐めるな小僧!ドゥームバスターで散れ!!」

掌に収束させたエネルギー弾を放とうとするシグマだが、アクセルはその腕を蹴り上げてシグマの体勢を崩すと再びロックオン。

「散るのはあんただよ。今度こそ終わりさ」

ロックオンしたのは罅の入ったコアのみ。

そこにホーミングショットを叩き込んでコアを破砕した。

コアを破壊されたシグマは信じられない表情でコアを失い、空洞となった胸を抑えた。

「ま、まさか…私がここで倒れるなどと…このような…プロトタイプに…私が…滅びるのは…奴ら…旧世代の………ぐぶっ…」

コアを破壊されたことでボディから爆発が起き、段々とその規模が大きくなっていく。

「プロトタイプにだって意地があるってことさ…もう蘇らないでよね」

「がはっ…でえええぇぇやああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああうっっ!!!!!」

シグマは断末魔の叫びを上げながらシグマウィルスを撒き散らしながら爆散した。 
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