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戦国異伝供書

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第四十二話 信濃の南その六

「確かな法を定めて」
「そのことからも治めておるな」
「それぞれの領地を」
「本来ならな」
「幕府の法に従えばよいですが」
「今の戦国の世もじゃ」
 そもそもというのだ。
「幕府が何の力もなくしておるからな」
「そのせいですし」
「それを考えるとな」
「ここは」
「そうじゃ、幕府ではなくな」
「我等が法を定める」
「武田の領地のな、では定めようぞ」
 こうしてだった、晴信は武田家の領地の法も定めた。そしてそれを定めるとすぐに家臣達にも領内にも告げた。
 その法を聞いてだった、信之は唸って述べた。
「実にです」
「しっかりとした法じゃな」
「はい」
 父の昌幸にも答えた。
「そう思いました」
「国を治める要点を全て踏まえたな」
「簡潔ですが」
「しかとしておるな」
「この法なら」
 晴信が定めたそれならというのだ。
「当家の領地はです」
「しかと治まるな」
「国の法がなければ」
 信之もわかっていることだ。
「それこそです」
「国は治まらずな」
「ならず者達がいい様に暴れ回り」
「民達は苦しむ」
「そうなります」
「民は国を治めてじゃ」
「悪者達を縛り捕らえ懲らしめる」
「そうしたものじゃ」
 まさにというのだ。
「それが法じゃからな」
「民達にとっても必要ですな」
「お館様は常にじゃ」
 晴信、彼はというのだ。
「民達のことをお考えじゃ」
「その通りでありますな」
「だからこそな」
「法も定められるのですな」
「弱い者は法がなくてはどうなる」
「はい、まさにです」
 信之自身が今言った通りだった。
「ならず者達にです」
「やられるがままじゃな」
「そうなってしまいます」
「お館様はこのこともおわかりだからな」
「それでじゃ」
 まさにというのだ。
「しかとな」
「この度法を定められたのですな」
「これで前よりもな」
「民達は守られますな」
「お館様にな」
「実に素晴らしき方ですな」
 晴信についてだ、信之は感慨を感じて述べた。
「まさに天下を治めるにです」
「相応しい方じゃな」
「そう思いまする」
「わしもじゃ、ではな」
「真田家はこれからも」
「お館様に忠義を尽くしな」
 そしてと言うのだった、昌幸も。
「働いていこう」
「さすれば」
「それではな」
「それで、ですが」
 信之は父にあらためて話した。 
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