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本物はどちらか

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第三章

「私も困ってるんです」
「私も困ってるんです」
「朝起きて朝ご飯食べようとしたらお父さんが驚いて」
「朝起きて朝ご飯食べようとしたらお父さんが驚いて」
「そこで私も気付いたんです」
「そこで私も気付いたんです」
 声が完全にエコーしていた。
「私が二人いるって」
「私が二人いるって」
「それで驚きました」
「それで驚きました」
「鏡みたいに私がもう一人いましたから」
「鏡みたいに私がもう一人いましたから」
 二人で一人だった、まさに。
「何がどうなっているのかって」
「何がどうなっているのかって」
「本当にこれは何か」
「本当にこれは何か」
「早く一人に戻りたいです」
「早く一人に戻りたいです」
「そうよね、これはね」
 まさにとだ、デリーロは保安官の娘である少女彼から見ても一人だが身体が二つある様にしか見えない彼女に答えた。
「ドッペルゲンガーとね」
「考えるのが普通ですね」
「それか一心二身ね」
「その怪異ですね」
「ええ、こんなことはね」
 それこそとだ、デリーロはルイスにも述べた。
「本当にね」
「稀なことですね」
「あたしもはじめて見たし」
 この世界ではとだ、デリーロは自分達が今は旅の冒険者ということにしてギルドの依頼を受けていることを念頭に述べた。
「こんなことは、ただ」
「ただ?」
「これはドッペルゲンガーではないわね」
 こうルイスに言った。
「どうやら」
「えっ、そうなのか?」
「本当ですか?」
 保安官とその妻つまり彼の妻であり少女の母である中年のやや太っているが整った水の精霊の女も言ってきた。着ている服はロングスカートにエプロンだ。
「これはドッペルゲンガーでないですか」
「そうなのかよ」
「ええ、ドッペルゲンガーはね」
 このモンスターはとだ、ルイスは夫婦に話した。
「魂が抜けてね」
「それでか」
「もう一人いるのですか」
「そう言われているわ、身体が魂から出て」
 そしてというのだ。
「魂が去るから」
「だからか」
「死ぬのが近いのですか」
「ええ、けれどこの娘からはね」
 まさにとだ、デリーロは二人を見つつさらに話した。
「魂を二つ感じるわ」
「二つ?」
「二つですか」
「全く同じものをね、あたしはソーサラーでね」
 術を使うがメイジに比べると妖術とされるものを得意としそちらを主に使う職業だ。
「妖気にも敏感だけれど」
「まさか娘からか」
「どちらの娘からもですか」
「はっきりとね」
 少女を見つつ言うのだった、どちらの娘も。
「妖気を感じるわ、しかもね」
「しかも?」
「ええ、内から出て来ていないわ」
 保安官にこうも話した。
「全くね」
「っていうと」
「外からかけられたものね」
 その妖気はというのだ。 
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