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ある晴れた日に

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34部分:噂はそよ風の様にその十一


噂はそよ風の様にその十一

「あんなチーム応援する位ならね」
「まあそれはねえか」
「っていうか俺等もだけれどな」
「このクラスで夕刊フジとかサンスポとか見たら許さないから」
 こうまで言う咲だった。
「特に夕刊フジ、報知も駄目よ」
「心底巨人が嫌いなんだな、御前」
「俺等もそうだけれどな」
 実はそこは同じな坪本と佐々だった。
「まあ巨人の話はいいや」
「で、竹林だけれどよ」
「ええ」 
 咲は未晴の話になると表情をすぐに戻してきた。
「未晴ね」
「実際悪い奴じゃねえのは俺達だってわかるさ」
「まだ付き合いだして少しだけれどな」
「少なくとも私達とは違うわよね」
「私達ってどうせ騒がしい系だから」
 自分で自分のことがよくわかっている静華と凛だった。
「未晴はその点ね」
「しっかりしてるし落ち着いてるしね」
「だからいいのよ」
 また奈々瀬が言う。
「私達頼りにしてるのよ。中学校でもね」
「まとめ役ってこと?」
「ええ、そうだったのよ」
 奈々瀬はにこりと笑って明日夢の言葉にも答える。
「未晴は親友よ。私達のね」
「助けてもらってるのは私だし」
 未晴は未晴で照れ臭そうに笑っている。やはり控えめだ。
「皆に。ずっとね」
「うち等何もしてねえよな」
「ねえ」
 春華と静華が言い合う。
「別にな。何も」
「助けてもらってるだけで」
「少なくとも仲はかなりいいね」
 恵美はこう結論づけてきた。
「あんた達はね」
「そうよ。だから」
「未晴に何かあったら許さないから」
「そうそう」
 奈々瀬、凛、咲が言う。
「悪い虫がついても許さないわよ」
「実際の虫も悪い男もね」
「そういうことだから。ギター君」
 咲はここで正道に顔を向けて言ってきた。
「未晴を困らせないようにね。困らせたら許さないから」
「また俺かよっ」
 話を聞いているだけなのにまた言われて立腹している正道だった。ギターを手にしたまま少し怒った顔を見せる。
「何で俺ばかり言われるんだよ。しかもここで」
「そりゃ御前が園芸委員だからだろ」
「それしかないよ」
 その彼に野本と竹山が言う。
「大体御前真面目にやってるのかよ」
「言っておくけれど多分手を抜いたら」
「少なくとも御前には言われたくねえんだけれどな」
 野本に対しての言葉だ。
「図書委員。どうなんだよ」
「いることはいるぜ」
 やはりいい加減な調子である。
「カウンターにな。毎回な」
「それでも態度かなり悪いよ」
 横から加山が言ってきた。
「漫画読んでジュース飲みながらだから」
「やっぱりそうなのかよ」
「予想していたけれど」
「せめて雑誌にしろよな」
「くっ、今度は俺かよ」
 矛先が正道から自分になって歯噛みする野本だった。
「何でこうなるんだよ。大体御前な」
「御前とは違うよ」
 正道は今度は機先を制してきた。
「言っておくけれどな」
「違うっていうのかよ」
「真面目にやってるさ」
 はっきりと言い切るのだった。
「少なくとも御前みたいにカウンターで堂々と漫画読んだりジュース読んだりはしねえよ」
「読んでるのはちゃんと図書館にある教養漫画だよ」
 かなり苦しい言い訳だった。
「歴史のな。幾ら何でも堂々とそんな所でサンデーとかマガジンとか読むかよ」
「いや、あんただったらね」
「同意」
 明日夢と茜も厳しい。
「普通に授業中してるし」
「北斗の拳読んでたわよね」
「あれこそ教養漫画なんだよ」
 またしても強引な言い訳だった。
「男と男のな。生き様を描いた名作だろうが」
「それはそうだけれど授業中は駄目でしょ」
「ねえ」
 明日夢と茜の方が正論だった。
「授業中に漫画読んだら」
「何考えてるのよ、あんた」
「ちぇっ、堅苦しいな、おい」
 野本はここでよりによって居直ってきた。
 
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