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大学の怪異

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第四章

「もう一度調べなおすか気付いていないものがあるか」
「そう思ってですね」
「調べることよ。例えば」
 ボームはこうも言った。
「ガリレイもそうね」
「地動説ですね」
「当時は聖書の天動説が定説だったけれど」
 それも絶対のだ。
「この天動説はどうなのかと思って」
「独自で調べて」
「地動説に至ったわ」
「だからですね」
「そう、ワテクシ達もね」
「ここは、ですね」
「もう一度おかしいところはないか」 
 大学を隅から隅まで見て回ったが、というのだ。
「そう考えてね」
「調べることですね」
「そうあるべきよ」
 こう言うのだった。
「科学はね」
「では」
「ええ、もう一度ね」
「調べることですね」
「実験もね」
 こちらもというのだ。
「何度もしてね」
「そうしてこそですね」
「そう、真実に近づけたりするから」
「もう一度は大事ですね」
「科学はね、一度でわからないこともあるから」
「それと同じで」
「もう一度よ。それにね」
 ボームは飲みつつこうも言った。
「一つ興味があるものがあるし」
「そういえはよく大学のある絵をご覧になっていますね」
「どうもあちらのハーバード大学にはないものみたいだけれど」
 ボームはヘミングウェーに笑顔で話した。
「大学の美術館にあるね」
「あの一際大きな絵ですね」
「あの絵が気に入っているから」
「それで、ですね」
「あの絵も観るわ」
 ボームはこのことを楽しそうに言い差し入れのバーボンを二人で一本ずつ空けてそれから寝た。そして翌朝大学の寮の朝食をご馳走になり。
 そのうえでボームはまずは美術館に入りその絵を観たが。
 ここでだ、彼は絵の右側をふと観て言った。
「あら、ヤグルマギクがね」
「ありますね」
「ええ、十輪ね」
「お花まで奇麗ですね」
 ヘミングウェーもその花を観ている、そのうえでの言葉だ。
「この絵は」
「そうね、何度も観てね」
「気付きましたね」
「そうね、じゃあこの絵も観たし」
「それでは」
「今日も観て回って手掛かりを探しましょう」
 その絵には美女と恐ろしい顔をした悪魔が共に描かれていた、聖俗を共に描いた絵だという。その絵がボームのお気に入りになっていた。
 その絵を観てそれからだった。
 二人で大学の中を観て回った、だがこの日も手掛かりは得られなかった。それでボームは夕方にヘミングウェーに大学の図書館の中でこれもと思って大学の歴史について調べている本を読みつつ話した。
「歴史を調べることもね」
「科学ですね」
「ええ、時としてね」
「昔を調べることもですね」
「そう思ってね」
 そのうえでというのだ。
「今調べているけれど」
「今回は」
「どうもね」
 ボームの言葉は今は歯切れが悪かった、そのうえでの言葉だった。 
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