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戦国異伝供書

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第四十一話 人と城その十

「兄上はこの二つの家との戦でも」
「うむ、六分か七分でな」
「よいのですな」
「勝ち過ぎぬことじゃ」
 晴信自身もこう返した。
「戦はな」
「勝ってもそれがよ過ぎると」
「誰もが気付かぬうちに驕ってな」
「そこに隙が出来て」
「そこから負ける、しかもじゃ」
「大事な時に」
「そうなるからじゃ」
 だからだというのだ。
「わしもこう言うのじゃ」
「勝ち過ぎぬことですな」
「そうじゃ」
 まさにという口調だった。
「だからな」
「この度も」
「そうじゃ、勝つが」
 それでもというのだ。
「過ぎぬことじゃ」
「左様ですな、しかし」
「お主としてはか」
「戦によりますが」
「勝つならか」
「大きく勝ってもです」
 それでもというのだ。
「よいのでは、驕ってはなりませぬが」
「それでもか」
「大きく勝てばこちらで死ぬ者が少なく」
 そうした勝ちであればある程というのだ。
「また周りもです」
「武田が強しと見てじゃな」
「恐れますが」
「確かに死ぬ者は少なくあるべきじゃ」
 このことは晴信もわかっていた、信繁に確かな声で返したのが何よりの証だ。
「戦をしてもな」
「左様ですな」
「わしもそうしたことを心掛けておる、だがな」
「死ぬ者の大小ではなく」
「大きなものを得られるかどうかじゃ」
 晴信が今言うことはというのだ。
「つまりはな」
「そう言われたいのですな」
「そうじゃ」
 このことだというのだ。
「一度の戦ではじゃ」
「勝とうとも」
「欲張らずな」
「そして焦らず」
「徐々にでよいしな」
「驕らない為にも」
「得られるものはじゃ」
 戦に勝ってのそれはというのだ。
「六分か七分でな」
「よいですか」
「そういうことじゃ、わしが言うのはな」
「そうですか、十得られようとも」
「それでよい、勝ち方にしてもな」
「兵が死んだち傷付くのは僅かでも」
「十ではなくな」
「六分か七分じゃ」
 それだけだというのだ。
「それでよいのじゃ」
「ではこの度も戦も」
「それでよい、後じゃ」
「後とは」
「小笠原家を倒せばな」
「その次はですな」
「今木曽に話をしておる」
 この家にというのだ。 
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