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英雄伝説~灰の騎士の成り上がり~

作者:sorano
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第9話

メンフィル・クロスベル連合軍によるエレボニア帝国のクロスベル侵攻軍の迎撃・殲滅が終わった数時間後ロイド達はセルゲイとルファディエルからある説明を受けていた。

同日、PM4:30―――

~特務支援課~

「”祝勝会”、ですか?」
「ああ…………本日の夜19:00からメンフィル・クロスベル連合のお偉いさん達と今回の迎撃戦で活躍した連中をオルキスタワーに集めて祝勝会をするんだとさ。」
「内容は今回の迎撃戦で活躍した人物達への表彰と今回の迎撃戦の勝利を祝うパーティーよ。」
ロイドの疑問にセルゲイとルファディエルはそれぞれ説明し
「おいおい、勝ったのはあくまで侵攻軍の連中であって、エレボニア帝国にまだ侵攻すらもしていないのに”祝勝会”をするなんて、幾ら何でも早すぎねぇか?」
「まあ、メンフィルが味方についている時点で勝利は確定しているようなものではありますが…………」
二人の説明を聞いたランディは呆れ、ティオは静かな表情で呟いた。

「”クロスベル帝国”の建国から電撃的な速さで共和国を占領したとはいえ、クロスベル帝国はクロスベルの有力者達と正式な顔合わせ等をしていなかったから、その顔合わせも兼ねて”祝勝会”を開くそうよ。」
「後はまあ、エレボニア帝国との決着がつくまで戦争状態が続く事になるから、その合間に一息入れる事で戦争が続いている事で内心不安を感じているクロスベルの市民達を安心させる為でもあるそうだ。その証拠にクロスベル政府は今日限定でクロスベル中の飲食店に酒を含めたドリンクの類を一杯だけ無料にするように通達している。―――もちろん、その無料にする一杯分はクロスベル政府が負担するという内容でな。」
「ええっ!?一杯だけとはいえ、お酒を含めたドリンクが無料になるんですか…………」
「今頃飲食店は大忙しでしょうね…………一杯だけとはいえ、お酒が無料になるんですから、お客様も当然それを目当てにお店に足を運ぶと思いますし。」
「クロスベルがかつては”大陸最強”で呼ばれていたエレボニア帝国軍相手に勝利した事によるクロスベルの市民達の興奮も相まって市民達の財布のひもも緩くなるでしょうから、クロスベルの経済、市民達の感情を考えた上での合理的な政策でもあるわ。」
ルファディエルの後に説明したセルゲイの説明を聞いたノエルは驚き、セティは苦笑し、エリィは静かな表情で呟いた。

「え、えっと………その”祝勝会”?でしたっけ。その話を今、あたし達にもしたって事はもしかしてあたし達、”祝勝会”の警備とかを担当することになるんですか!?」
一方ルファディエルとセルゲイの話を聞いてある事を推測したユウナは興奮した様子で二人に訊ねた。
「ふふ、残念ながら”特務支援課”は”祝勝会”の警備を担当しないわ。」
「警備を担当するのは警備隊と一課の刑事達だ。――――――むしろ、支援課は”祝勝会”に関連する支援要請で今夜は大忙しになると思うぞ。」
「”祝勝会”関連で普段よりも大忙しになっている飲食店に関連する支援要請やトラブル、エレボニア人関連の支援要請に酔っ払いの保護等考えただけでもキリがありませんね。」
「ったく、下手したら今日は日をまたいでも仕事が終わらないんじゃねぇのか?」
「当然遊撃士協会も大忙しになるでしょうね…………」
「う~…………今日は寝る事ができるのかな…………?」
ユウナの期待に対してルファディエルは苦笑しながら否定し、口元に笑みを浮かべて答えたセルゲイの指摘に続くように推測を口にしたティオはジト目になり、ランディは疲れた表情で溜息を吐き、エリナは苦笑し、シャマーラは疲れた表情で頭を抱えた。

「えっと………キーア、疲労を回復させるイーリュンの治癒術も使えるから疲れたらいつでもロイド達の疲れを癒してあげるよ!」
「えっと、えっと………それじゃあキーアはロイド達の仕事の合間に食べられるような軽食やエリィのおじいちゃんが大好物の”特製にがトマトシェイク”を作っておくね~♪」
二人のキーアの申し出を聞いたロイド達はそれぞれ冷や汗をかいて表情を引きつらせ
「え、えっと、キーアちゃん?軽食はともかく、あのジュースは確かに疲れがとれるかもしれないけど私達はどちらかというと苦手だから、別のジュースにして欲しいのだけど…………」
「しかも未来のキーアの治癒術による疲労回復も何だか無理矢理働かされるような感じもして、少々ブラックな気がするのですが…………」
我に返ったエリィは苦笑しながら、ティオはジト目でそれぞれ指摘した。

「クク…………―――それで話を”祝勝会”の件に戻すが…………まずはセティ、シャマーラ、エリナ。お前達はヴァイスハイト皇帝から”祝勝会”の参加を要請されている。」
「ほえ?どうしてあたし達が…………」
「多分私達がお父様―――ユイドラ領主の娘だからでしょうね。」
「私達はクロスベルにとっては他国から来ている有力者の関係者ですから、呼ばれてもおかしくないかと。」
セルゲイの話に首を傾げているシャマーラにセティとエリナはそれぞれ苦笑しながら説明し
「それとエリィ。できれば貴女も”祝勝会”に参加して欲しいと、ヴァイスハイト皇帝から要望が来ているわ。」
「え…………私もですか?一体どうして…………」
「それはやっぱりエリィ先輩がマクダエル議長の孫娘だからじゃないですか?既に議長から引退されたとはいえ、マクダエル議長は市長に当選してきた時からずっとクロスベルの人達が慕っていた政治家なんですから、マクダエル議長や議長のご家族であるエリィ先輩をそんな大事なパーティーに呼ばない方がおかしいと思いますし。」
ルファディエルに名指しされたエリィが呆けている中、ユウナが自身の推測をエリィに伝えた。

「ユウナの推測通り、マクダエル元議長も祝勝会に招待されているわ。…………まあ、エリィに関してはユウナが言っていた事もあるでしょうけど、かつての”特務支援課”の仲間としての気遣いで、将来政治や外交の道を進む事に決めているエリィの”社会勉強”やメンフィルとクロスベルの有力者達と顔見知りになって、様々な方面のコネクションを作る足掛かりにしてもらう為でもあると思うわよ?」
「あ……………………」
「……………………わかりました。せっかくの機会ですし、私も参加させて頂きます。」
ルファディエルの推測を聞いたロイドは呆けた声を出し、エリィは目を伏せて考え込んだ後目を見開いて答えを口にした。
「フフ、そう言うと思っていたわ。―――という事でロイド、貴方もエリィの付き添いとして”祝勝会”に参加しなさいね。」
「ええっ、俺が!?何で!?」
「あら、貴方は私と正式に婚約を結んでいるんでしょう?”黒の競売会(シュバルツオークション)”の時と違って今は偽の恋人関係どころか、本物の恋人―――いえ、婚約者同士の関係なのだから、今回の”祝勝会”に参加する私の婚約者として”祝勝会”に私と参加するのは当たり前じゃない。」
「そ、それは…………」
自分まで祝勝会に参加する事になるとは思わなかったロイドだったが、笑顔を浮かべたエリィの説明を聞くと反論をなくした。

(エリィさん、何気に自分がロイドさんの”正妻”であることを私達にアピールしている気がするのですが…………)
(アハハ、それはあたしも思ったよ~。)
(別に私達は”正妻”の座を奪うような事は考えていないのですが…………)
(さすがはエリィさん。やはり一番最初にロイドさんと恋人になっただけはありますね…………)
(アハハ、そうだね。これ見よがしに私達がいる目の前で堂々とロイドさんと婚約者同士である事も宣言しているし…………)
一方その様子を見守っていたセティ、シャマーラ、エリナは苦笑し、真剣な表情で呟いたティオの言葉に続くようにノエルは苦笑しながら答えた。
「それに貴方の事だから、例の”灰色の騎士”の事も気になっているのでしょう?彼と直接会って話す機会でもあるのだから、貴方にとってもちょうどいい機会だと思うわよ?」
「!あの”灰の騎神”を操縦していたエリゼさんのお兄さん――――”灰色の騎士”リィン・シュバルツァーか…………さっき、今回の迎撃戦で活躍した人達も参加するって言っていたけど、彼もやはり”祝勝会”に?」
ルファディエルの指摘に血相を変えたロイドは真剣な表情でルファディエルに訊ねた。

「ええ。―――というか、”祝勝会”のメインは彼よ?迎撃戦で侵攻軍の多くの空挺部隊を撃破した事に加えて侵攻軍の”総大将”まで討ち取ったから、表彰されるのは”灰色の騎士”―――リィン・シュバルツァー少佐だとの事だし。」
「ええっ!?そのリィン少佐って人はクロスベル侵攻軍の”総大将”まで討ったのですか!?」
「ああ、その手柄を評価されて”少佐”に昇進したとの事だ。」
ルファディエルのリィンの事についての説明に驚いたノエルにセルゲイがルファディエルの説明を補足した。
「おいおい…………空中戦での大活躍どころか”総大将”まで討ったのかよ、そのリィンって野郎は…………」
「そのクロスベル侵攻軍を率いていた”総大将”がどんな実力なのかはわかりませんけど、あの銀色の大きな戦艦―――”パンダグリュエル”でしたっけ?さすがにパンダグリュエルの中ではあの”騎神”って存在を操縦して戦う事はできないでしょうから、その”総大将”とはあたし達みたいに生身で戦って勝ったんですから、凄いですよね…………」
「「………………………………」」
セルゲイの話を聞いたランディは目を細め、ユウナは驚きの表情で呟き、二人のキーアは複雑そうな表情で黙り込んでいた。

「それとその表彰式の際にリィン少佐とヴァイスハイト皇帝の娘―――メサイア皇女の正式な婚約も発表するそうよ。」
「へ…………」
「む、娘!?やっぱりあの人、既に子供がいたんですか!?」
ルファディエルが口にした驚愕の事実に仲間達がそれぞれ驚いている中ロイドは思わず呆けた声を出し、ノエルは真剣な表情で声を上げた。そしてルファディエルはメサイアの事について説明した。
「並行世界の昔に生きていたリア充皇帝の娘の一人とか色々と無茶苦茶だな、オイ…………」
「そしてそんな人物がこちらの世界の現代に現れてそのリィンさんと出会った原因はどう考えても、”並行世界のキーア”の仕業でしょうね…………」
「「アハハ…………」」
説明を聞き終えたランディは疲れた表情で呟き、推測を口にしたジト目のティオに視線を向けられた二人のキーアは苦笑していた。

「それにしてもどうしてわざわざそのメサイア皇女殿下とリィン少佐の婚約を発表するんですか?ルファディエル警視の話によりますとヴァイスハイト陛下は元々お二人の婚約を認めていたとの事ですし…………」
「…………恐らく今回の戦で新たに生まれたメンフィル帝国の”英雄”であるリィン少佐と自国の皇女の婚約を世間に発表する事で、世間にメンフィルとクロスベルの関係がより強固になった事を知らしめて戦争で不安な気持ちを抱えているクロスベルの市民達の安心させる為だと思うわ。それとメンフィルと関係を深めている事で”クロスベルはゼムリア大陸最大にして最強の国家であるメンフィル帝国に国として認められて、既に国交を行っている事”で他国―――特にリベールやレミフェリアとの国交を開く足掛かりにする為でもある事も考えられるし、後は…………内戦終結の鍵となった事で恐らくエレボニア帝国でも”英雄”扱いされているであろうリィン少佐がメンフィル・クロスベル連合に所属している事をエレボニア帝国にも知らしめて、エレボニア帝国に混乱を起こす為でもあるかと思うわ…………」
「ったく、並行世界とはいえ自分の娘の婚約をそんなキナ臭い事に使うとか何考えてんだ、あのリア充皇帝は…………―――いや、向こうにはルイーネ姐さんもいるから、ひょっとしたらルイーネ姐さんの考えかもしれねぇが…………」
「どっちにしても、戦争や政治的な理由で婚約を利用されるお二人は可哀想ですよね…………」
ユウナの疑問に答えたエリィの推測を聞いたランディとノエルはそれぞれ疲れた表情で溜息を吐いた。

「――――表彰式は”祝勝会”の最初に行われるとの事だから、表彰式が終わって彼に対するマスコミの取材が終われば、彼も他の参加者達のようにパーティーに参加する事になっているから、もし彼に接触するのだったらその時に接触しなさい。」
「………わかりました。ロイド、有力者達が参加するパーティーに参加するのだから当然フォーマルな恰好に着替えてね。」
「あ、ああ。というか、そういった場で着る服は”黒の競売会(シュバルツオークション)”に潜入するために買ってもらった服しかないんだが…………ハハ、まさかこんな形で再び着る事になるなんてな。…………そういえばフォーマルな恰好で気になっていたけど、セティ達はどうするんだ?今からそう言った服が売っている店で買って、その場で着て行くのか?」
ルファディエルの説明に頷いたエリィはロイドに助言し、助言されたロイドは当時の事を思い返して苦笑した後ある事に気づいてセティ達に訊ねた。
「いえ、私達は既にユイドラからそれぞれ自分達のドレスを持ってきていますから、それを着て行きます。」
「ちなみにドレスは全部あたし達の手作りだよ♪」
「フフ、当時徹夜をしてまで作った事が懐かしく思えますね。」
ロイドの疑問にセティが答え、シャマーラとエリナの説明によってドレスをセティ達自身で用意した事実を知ったロイド達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

「さすがは”工匠に不可能はない”を公言しているウィルさんの娘さん達ですよね…………セティさん達の事ですから、その内自分達の家や本格的な工房も自分達だけで作るんじゃないんですか?」
「しゃ、シャレになっていないよ、ティオちゃん…………」
静かな表情で呟いたティオの推測にノエルは冷や汗をかきながら苦笑した。
「やれやれ…………ロイド達がパーティーを楽しんでいる間、俺達の方は仕事かよ。」
「普段以上の”残業”をする事は確実なのですから、臨時ボーナスを出しても罰は当たらないと思うのですが。」
「あ、あのなぁ…………」
「クク、パーティーに参加しないお前達の方は後日”臨時ボーナス”としてどの飲食店でも一回だけどれだけ注文を頼んでもヴァイスハイト皇帝達――”六銃士”の連中が負担するクロスベル中の全ての飲食店で使える特別無料券がそれぞれ支給され、更に”臨時休暇”として1日だけ有給休暇とは別の休暇がとれる事になっているぞ。」
疲れた表情で呟いたランディとジト目のティオの文句にロイドが疲れた表情で溜息を吐いている中セルゲイが口元に笑みを浮かべてランディ達にとって朗報となる情報を口にした。

「マジっすか!?それならやる気が出るってもんだぜ~♪」
「どの飲食店でもどれだけ注文を頼んでも無料になる特別無料券に加えて有給休暇とは別の休暇もくれるなんて、太っ腹ですね。」
「もう、二人とも幾ら何でもあからさま過ぎよ…………」
セルゲイの話を聞いてやる気になったランディとティオの様子を見たエリィは呆れた表情で溜息を吐いた。

「え、えっと………パーティーに参加しない人達って事はあたしもですか?」
「ええ、ユウナも支援課の一員なんだから当然ユウナにも特別無料券の支給と臨時休暇が与えられることになっているわよ。」
「そ、そうなんですか…………でも本当にいいんでしょうか…………?あたしは人手不足になっている特務支援課を手伝う為に警察学校から派遣されているのに…………」
臨時に派遣されている自分までランディ達と同じ扱いである事を肯定したルファディエルの答えを聞いたユウナは謙遜した様子で答え
「ふふっ、せっかくのご褒美なんだから遠慮せずもらっておいた方がいいと思うよ。」
「ええ…………それにユウナも今から一番忙しくなる時期に私達の分も働いてくれるのですから、そのくらいのご褒美があっても当然だと私も思いますよ。」
「ノエル先輩…………セティ先輩…………」
ノエルとセティの答えを聞くと嬉しそうな表情をした。

「さてと…………そうと決まれば私達は準備を始めないといけませんね。」
「メンフィルとクロスベルの有力者達がたくさんいるパーティーに参加しなければならないから、軽くシャワーは浴びておいた方がいいもんね~。」
「そうね。”黒の競売会(シュバルツオークション)”の時とは訳が違うもの。―――そういう訳だから、ロイドも着替える前にシャワーを浴びておいてね。」
「ハハ、わかったよ。」
エリナの言葉に続くように呟いたシャマーラの言葉に頷いたエリィはロイドにも自分達と同じ事をするように伝え、ロイドは苦笑しながら答えた。

その後、ランディ達が仕事を再開する為に行動を開始している中ロイド達はシャワーを浴びてフォーマルな服装に着替えた後――――”祝勝会”が開かれるオルキスタワーへと向かった―――
 
 

 
後書き
予告とは違う内容にしてしまってすいません(汗)ロイド達の話もちょっとだけ書こうと思って書いたのですが、気づいたら結構長く書いてしまったので一つの話として更新する事にしました(汗)なので前の話で予告した内容は次の更新です………… 
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