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DQ3 そして現実へ…  (リュカ伝その2)

作者:あちゃ
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目覚め

<エルフの隠れ里>

まだ夜も明けきらぬ前に、リュカの寝ている部屋の前に集まる4人。
エルフ達を刺激せぬ様、早めに村から出て行く為、身支度を調えたのだが…案の定リュカが起きてこないのだ…

「なぁ…リュカはんの事や、誰が女を連れ込んどるんやないか?」
「連れ込むって…エルフしか居ないのよ!?」
「カリーって女戦士じゃないか?剣を突き付けておきながら、抱き寄せられてたぞ!」
「女王様もリュカさんの笑顔で虜になってた様に見えましたよ!」

ヒソヒソとそんな話をしていると、リュカが部屋から静かに出てきた。
「あれ?みんなどうしたの?」
すぐに扉を閉めた為、中を確認する事は出来なかった…
「リュカさん…中に誰か居るんですか?」

「………そんな事を聞く必要ある?」
リュカは昨晩の事を教えるつもりはない様だ。
「世の中には知らなくていい事もあるんだよ。それが大人になるって事だよ。諸君!」
リュカは4人を部屋から遠ざけ、退村を促す。
エルフ族と人間との間でトラブルが起きぬ様、祈るしかないだろう…



<エルフの隠れ里近郊の森>

「ハツキ…」
リュカはエルフの隠れ里よりノアニールへと向かう道中、ハツキに声をかける。
「はい、何ですかリュカさん?」
「これ…カリーから貰ったんだけど…ハツキが使ってよ」
そう言って手渡されたのはアンが使用してた聖なるナイフだ。

「こ、これって!?アンさんの形見じゃ…!?」
「うん。カリーに渡したんだけど、僕等が役立てた方がアンも喜ぶからって…」
「で、ベットの中で渡されたんですか?」

「…イッテルイミガワカリマセン」
「……………」
ジト目で見つめるハツキ…
視線を合わせないリュカ…
「ふぅ…そうですね、アンさんの為に私が使用させてもらいます」
「ありがとう」

「でもナイフだと攻撃範囲が狭いから、素早く動ける様に特訓しないと…」
「うん。僕も手伝うよ」
リュカの笑顔と一緒に特訓と言うご褒美に、昨晩の事などどうでもよくなってしまうハツキだった。



<ノアニール>

アルル達が村へ入ると、奥の方からイノック老人が小走りで近付いてくる。
「おぉ…アルル殿!エルフの女王には会えましたか?」
側に立っていたリュカとは視線を合わせず、アルルとだけ話を進める。

「はい。呪いを解く方法入手にも成功しました…」
「なんと!!ありがとうございます!では、早速…」
「アンタ、自分の息子の行方はどうでもいいのか?」
冷たい口調でリュカが問う。

「いいわけない!…だが、探しようがないのだ…足取り一つ掴めなかったのだから…」
イノック老人は怒りと悲しみの目で、リュカを睨み付ける。
「何処か別の地で…二人幸せに暮らしていると思い、祈るしかないだろう…」
「僕達は足取りを見つけました…」
「!!本当ですか!?そ、それで何処に…!?」
イノック老人は驚き、縋る様な表情でリュカに詰め寄る。

「……………」
だがリュカは答えない…アルル達も答える事が出来ない。
「………ま、まさか……」

「……この世じゃ添い遂げられないと悟り、二人天国で幸せになる為に……」
「そ、そんな…(うっうっ)!」
リュカの言葉を聞き、両手で顔を覆い泣き崩れるイノック老人。

「…貴方が…せめて貴方だけでも味方をすれば…父親である貴方が、自分を犠牲にしてでも守ってやれば…」
リュカは懐から、目覚めの粉を取り出し空中へばらまく。
粉は風に乗り、村の隅々まで行き渡る。
すると、其処彼処から人々の声が聞こえだした!

「ジイさん…村の人達への説明はアンタに任せる。呪いで10年間眠り続けた事を、伝えるか伝えないかは……伝えれば、きっと皆怒るだろう!呪われる原因を造ったアンタの息子と…そしてアンタ自身も…責められるだろう…」
リュカ達は泣き崩れるイノック老人を尻目に、その場を立ち去った。
心身共に疲れた為、今日は宿屋で休み、ロマリアへ帰るのは明日にすることに…



村中の人々が、荒れ放題の村を見て驚いている…
そんな中、アルル達は宿屋へ赴く。
数日前に勝手に宿泊した為、アルルは少し後ろめたそうだ。

「あ、あの…5人一晩なんですが…大丈夫ですか?」
「もちろんだとも!5人で25ゴールド。…ただ少し待っていてくれ!何故だか客室が荒れててね…急いで片づけるので時間をください。」
「ぜ、全然大丈夫です!どうぞごゆっくり!!」

客室を荒らしたのは、数日前のアルル達…
そんな事知らない店主は、慌てて2階へ行き部屋を整える。
その間、アルル達はロビーの椅子に座り待つ事に…

其処には一人の若い女性が物思いに耽っていた…
無論リュカがスルーするわけもなく、口説き出す。
「お嬢さん、何か悩み事ですか?僕がご相談に乗りますが…ベットの中で」
この男、何時もこんなストーレートなんですかね?

「ありがとう…私、失恋しちゃった…」
女性は少し微笑むと、悩み事を語り始めた。ベットの中ではないけれど…
「昨晩、あんなに愛し合ったのに…今朝起きたら居なくなってたの、彼…」

「けしからんヤツだ!貴女の様な美しい女性を、黙って捨てるなんて!何てヤツですか!?出会ったらデコピンしてやりますよ!」
「ふふふ…面白いのね、アナタ。」
「ありがとう。僕の名前はリュカ。ベットの中では、また違った僕をお披露目出来ますが…」
「私はジェシカ。そして私を捨てた男はオルテガ…もし、出会ったらデコピンをよろしくね」

「あの!…も、もう一度…男性の名前を…」
アルルが立ち上がり、ジェシカへと詰め寄る。
「え!?えぇ…オ、オルテガよ…そ、それが何か…」

「ねぇアルル…もしかして…あ「それ以上言わないで!」
ハツキの言葉を遮り、考え込むアルル。
オルテガ…それは10年前に魔王バラモス討伐の為に、アリアハンから一人で旅立ち、そして散った男…しかもアルルの父親の名前である!
アリアハン出身のハツキとウルフは、その事を分かっている為、アルルを気遣い心配そうに見守っている。

そんな事知らないリュカは、ジェシカを口説き相部屋の了承を得ていた。
「皆さん、お待たせしました。お部屋のご用意が整いました。どうぞおくつろぎください」
リュカのナンパが成功したタイミングで、店主が2階から下りてきた。
リュカだけが女性を伴い、部屋へと消えて行く…
暗い表情で部屋に入るアルル…
他の3人は、戸惑いながらも旅の疲れを癒す為、各々の部屋へと入って行く。




翌朝、あまり眠れなかったアルルは、皆が起きる前にベットから起き、村内を散歩する事に…
其処には、既に起きていたリュカが小鳥達と戯れている。
父親と関係を持った女性と、昨晩関係を持った憧れの男性…リュカ。
アルルの気持ちは複雑になり、リュカにどの様に接していいのか分からない。

「おはようアルル。どうしたの、元気ないね?何か相談事があるなら聞くよ」
「………オルテガとは…私の父なんです…」
「オルテガ?誰?」
さすがにイラつくアルル。

「昨日出会った、ジェシカさんが言ってた男です!」
「……あぁ!ジェシカさんの元彼ね!へー、さすがアルルのパパさん。趣味が良いね!」
「(イラ)趣味がどうとかじゃないです!父は私やお母さんを置いて、旅だったんですよ!それなのにこんな所で浮気をして…」

「イヤイヤ、浮気じゃないよ。ジェシカさんから聞いた話では、モンスターに襲われている所を、オルテガさんに助けられて、惚れちゃったジェシカさんが、お礼と称してベットで迫ったんだって。まぁ…もちろん、据え膳食わねばってヤツで、やる事はヤったみたいだけど…」
「同じですよ!お母さんを裏切ってるじゃないですか!」

「男なんて、そんなもんだよ…」
「父はお母さんの事など愛してないという事ですか?リュカさんもそうなんですか!?」
アルルは泣いていた。
リュカは優しくアルルを抱き寄せ、その場に座ると膝の上にアルルを座らせ宥めながら話す。

「アルルのお父さんは、お母さんの事を愛してるよ。」
「何でそんな事言えるんですか!」
「大好きな人の為に、世界を救う旅に一人で出たんだ!お母さんの事を愛していなければ出来ないよ。」

「じゃぁどうして…」
「男ってのはね、欲求を止められないもんなんだ!人によって処理の方法が違うだけで、皆同じなんだよ。」
「処理の方法?」

「そ!自分の手を使う人もいれば、僕みたいに女性をナンパする人も居る」
「そんな身勝手な!」
「身勝手だねぇ…僕もビアンカの事を愛してるよ。この世で一番…でも、身勝手なんだ…困ったねぇ」

「男の人はズルイです!そんな人、嫌いです!身勝手じゃない真面目な人が私は好きです。」
「う~ん…じゃぁアルルには、僕の息子がお似合いかな?」
「ティミーさんですか?真面目なんですか?」
「うん。父親とは正反対!」
「そうですか…会って見たいですねぇ…」

「そうだね、年頃もアルルと同じくらいだし…バカが付くぐらい真面目だからね。もてるのに、摘み食いしようとしないんだ。男としてどうなの?って思うよ…」
「……(スー)…(スー)……」
気付くとリュカの腕の中で寝息をたてるアルル。
少しだが心の蟠りが解け、安心してしまったのだろう。
リュカが優しく抱き上げ、宿屋までアルルを運ぶ…
どうやら今日の出立は、遅くなりそうだ…



 
 

 
後書き
オルテガ…
知らない人の為に多くは語りません。

知っている人は多くを語らないで! 
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