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ロックマンX~Vermilion Warrior~

作者:setuna
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第137話:New Generationtype

アクセル達は立ちはだかろうとするメカニロイドを一蹴しながら突き進みながら宮殿の頂上で邪悪な気配を感じていた。

彼等はもう分かっている。

この事件の黒幕の気配だということに、そしてアクセル達は目の前の転送装置に駆け寄ろうとするが…。

「っ!みんな、避けろ!!」

その言葉にエックス達は慌てて散開し、エックス達がいた場所に見覚えのある衝撃波が炸裂した。

「……なるほどね、君達も来ていたんだ」

「やはり来たか、イレギュラーハンター共」

「まだ僕達との決着はついてないだろ?勝ち逃げなんかさせないよ」

「これ以上、先へは行かせない!!」

「あの方の覇道に立ち塞がる者は誰1人生かしはせん」

強化でも施されているのか以前よりもエネルギー反応が増大している四天王が立ち塞がる。

ルナはあまりのタイミングの悪さに舌打ちするが、エックスとゼロ、ルインが2人の前に出る。

「アクセル、ルナ。こいつらは私達に任せて先を急いで!!」

ZXバスターを向けながらアクセルとルナに先に向かうように促すルイン。

「シグマはお前達に任せる!!」

「任せる以上は必ずシグマを倒せ…いいな?」

チャージショットとチャージスプラッシュレーザー、波断撃がウェントスとテネブラエに迫る。

2人はそれを回避したが、アクセルとルナは転送装置に乗り込み、無事に転送された。

「貴様ら…」

「さてと、君達が使ってるアーマー…それは元々私の力の一部、君達のオリジナルとして私が相手になるよ!!」

「ここから先はアクセルにとって譲れない戦いだ。それに水を差すようなことは許さないぞ!!」

「曲がりなりにもルインの力を持ってるんだ。シグマの代わりに少しはマシな戦いをしてもらおうか」

エックス達がそれぞれの武器を構えて、ウェントス達を睨み据えた。

そして一方、エックス達に打倒シグマを託されたアクセルとルナは両手のバレットを握ったまま声を発した。

「感じるか?」

「勿論。出て来なよ。いるのは分かってるんだよ、“センセイ”」

「とっとと出てこいや。あんたの下らねえ茶番はさっさと終わらせてやるぜ」

2人の言葉に高笑いと共に、階下からその男が飛び上がって来た。

黒いマントを撥ね除け、アクセルとルナを見下ろす。

「ご苦労だったな。ここまで来てくれるとはこちらから出向く手間が省けた。役立たず共は全てやられたようだ…まさかエックス達がここに来ずに貴様らのような小僧や小娘がここに来るとはな」

“役立たず”。

そう言ったシグマにアクセルはギリッと奥歯を噛み、ルナが蔑むように笑いながら一歩踏み出す。

「やっぱりてめえだったのかよシグマ。本当にどこまでも懲りない野郎だな。ルインにシグマウィルスを奪われてボコボコにされて、不完全な復活を遂げたところをエックスとゼロに一方的に叩き潰されたのにも関わらず復活するとは…正直ゴキブリの方がまだ潔いぜ」

ルナはコピー能力でウェントスに変身するとダブルセイバーを抜き、ヒュッと空を裂いて構える。

アクセルはシグマを見つめながら珍しくも鋭く細めた。

ライフルとレーザー砲を携えた姿はとても物々しく、彼が人間型とはにわかには認められなかった。

兵器そのものの姿で、まだメカニロイドと言われた方がしっくり来る。

「フン、何とでも言え。ワシは人間に与する貴様らイレギュラーハンターを、エックス達…特にワシからシグマウィルスの全能の力を奪い、耐え難い屈辱を与えたルインを倒してこの世界の覇者となるまで、何度でも、何度でも、な・ん・ど・で・も!蘇ってやる!!」

「いや、ルインのことに関してはてめえの自業自得だろうがよ!てめえがシグマウィルスを仕込んだコロニーを落下させようとしたり、てめえが地上にシグマウィルスをばら撒いた結果だろうがよ!!」

「逆恨みするような奴が世界の覇者?裸の王様もいいところだね…今すぐ殺してあげるよ…!!」

ゾッとする声と笑みと共にバレットからショットが放たれた。

「甘いわ!!」

シグマは跳躍してかわし、ライフルを構えるとアクセル達に向けて反射するショットを放ち、かわし損ねたアクセルが呻く。

「アクセル!!くそ、プラズマサイクロン!!」

取り敢えずアクセルとシグマを引き離そうとプラズマサイクロンHを放つルナ。

流石のシグマもウェントスの電磁竜巻を受けるつもりはないのか、すぐに回避のためにアクセルから距離を取った。

「ふん、どうした小僧、小娘。ワシを倒すのではなかったか?」

「くっ…言われなくてもやってやるよ!!」

「くそ、話には聞いていたが実物は想像以上にムカつく野郎だ…だけど落ち着けアクセル。怒りに我を忘れればシグマの思う壷だ。攻撃を見極めて隙を叩くぞ。今は俺達しかいないんだ。エックス達がいないんだから俺達だけの力で確実にシグマを倒すぞ」

そう言うとルナはウェントスからイグニスに変身するとナックルバスターを構えた。

イグニスのエディットバスターならショットの軌道を変えることが出来るので、シグマにも当てられるはずだ。

それにショットの単発の威力もそれなりに高い。

「…分かったよ…ありがとうルナ、頭が冷えたよ…」

落ち着きを取り戻すために深呼吸をすると相手の攻撃を見切れと、自分自身に命じた。

「(奴の出方を読むんだ。空中に飛んだら連射攻撃、地上ではバウンドショットを3発放つ。そして…)」

シグマには聞こえないように本来ならば個人的なことにしか使われない秘密通信を駆使し、ルナの声がアクセルの電子頭脳に響く。

シグマが部屋の隅に身を置いた時、紫色のレーザーが放たれた。

「(でかいのが来たよ!!)」

「(落ち着けアクセル、レーザーは屈めば当たらない。基本的に攻撃は俺はエディットバスター…アクセルは射程が長いレイガンが良いかな?バズーカ系の武器は動きにくくなるから機動力もそこそこ高いシグマ相手にはあいつが止まってる時以外は禁止な?)」

「(分かった、それじゃあ行くよ!!)」

秘密通信を切ると、アクセルはシグマの体勢を崩す為にガイアボムを構えてシグマの足元に放つ。

「ぬう!!?」

爆風を受けて体勢を崩したシグマを見て、ルナはナックルバスターを構えた。

「喰らえ、エディットバスター!!」

ナックルバスターから放たれたショットがシグマに的確に命中し、シグマのボディにダメージを蓄積させていく。

「ぬうう!ワシが奴らに与えた四天王の力か…」

「何が与えただよ。ルインからパクっただけだろうが!!メガトンクラッシュ!!」

「当たれ、レーザーホイール!!」

爆弾と光輪がシグマに炸裂する。

当然シグマも、このまま攻撃の的になるようなことはなく、バーニアを噴かして上空に逃げるとショットを放ってきた。

「うわっ!?」

「アクセル、大丈夫か!?」

「大丈夫だよ、これくらいならかわせる!!」

最初はショットの反射に戸惑うが、アクセルもルナも歴戦の戦士であるためにアクセルはローリングやホバー、ダッシュを…ルナはウェントスに変身してエアダッシュ、ホバーを駆使して回避していく。

「己、小癪な!!(これが新世代型レプリロイドの力か。奴らはプロトタイプ故に不完全だがこれ程厄介とは……完全型の新世代型レプリロイドを計画に使うことを視野に入れるべきかもしれんな)」

「ウィンドブーメラン!!」

「ウィンドカッター!!」

アクセルとカラスティングに変身したルナは風属性のブーメランと光刃をシグマに向けて放つ。

「ふん、そのような遅い攻撃がワシに当たると思うな!!」

ブーメランと光刃をシグマは嘲笑いながらかわす。

「残念!当たるんだよなこれが!!」

「?ぬうっ!?」

ルナの言葉の意味が分からずに訝しむシグマだったが、ブーメランと光刃は軌道を変えて背後からシグマを襲撃した。

ダメージは大したものではないが、シグマの体勢を崩すことに成功した。

「ハッ!どうだ?役立たずと蔑んでた奴らの力に吹っ飛ばされた気分は!?」

「次はこれだ!レイガン!!」

体勢を崩したシグマに今度はデボニオンの力を参考にした特殊武器であるレイガンを発射。

シグマの頑強なはずのボディに次々に小さな風穴を開けていく。

「これで終わりと思うなーっ!!」

このままではボディが保たないと判断したのか、ショットを放ちながらレーザー砲を構えてレーザーを発射してきた。

「まずいな、奴の攻撃が激しすぎて反撃の隙がねえ」

「ねえ、ルナ。前に使っていたステルスみたいなの。僕でも使えるかな?」

「ん?まあ、コピー能力の応用だからな。お前も出来るはずだけど?」

アクセルの問いの意味が分からずに首を傾げるルナだが、アクセルの意味深な笑みを見て合点がいったのか、彼女もニヤリと笑って見せた。

そしてシグマのレーザーが迫る。

「「行くぞ!!」」

ギリギリのタイミングでコピー能力の応用であるステルスを発動させるアクセルとルナ。

シグマからすればレーザーによって完全に消滅したように見えたのか、笑みを浮かべていた。

「ふん、新世代型と言えど所詮は小僧と小娘。覇王たるワシに勝てるは…ず…が…?」

腹部辺りに衝撃と痛みが走り、シグマが腹部を見ると風穴が開いていた。

「な…ん…だと?」

「ギガクラッシュ!!」

バレットを高速回転させ、強力な広範囲攻撃を仕掛けるルナ。

このコピー能力の応用であるステルスは姿と能力を固定するためのエネルギーを攻撃力に回すことが出来るために全ての攻撃がステルス発動前の倍の威力となっており、素の攻撃力が低いアクセルとルナには心強い技である。

「ス、ステルスだと…まさかそんなことまで…」

全身をレーザーで貫かれたシグマはよろめき、それを見たアクセルがバーストランチャーを構えて突撃した。

「バーストランチャー!!」

アクセルの持つ特殊武器の中でも最高の破壊力を誇るバーストランチャーのエネルギー波がシグマを飲み込んだ。

当然これもステルスの余剰エネルギーによる強化の恩恵を受けており、シグマのボロボロのボディが耐えきれるものではない。

「お…己…!…このワシがエックス達以外に…こんな小僧と小娘に…だが…まだだ…まだ終わらんよ…!!」

その言葉を訝しる間もなく、部屋の外が光り出す。

それは内部にも入ってきて、アクセルとルナは目を開けていられず両腕で顔を覆った。

シグマの笑い声と共に、覚えのある感覚が2人の体を包んだ。

「ここは宇宙…?」

「嘘!?どうして宇宙に!!?」

「エックス達から聞いた話だとシグマは1回倒されると巨大化して現れるんだと。多分、シグマが真の姿を現すにはあの空間では狭いんだろうさ。だから宇宙に俺達ごと転送した。」

時間切れでステルスが解除されたルナがそう呟くと少し間を置き、シグマがその巨体をさらけ出した。

その巨体は10mはあろうか。

見上げれば首が攣りそうな体躯に頑強な拳を持ち、腹部にはレーザーの砲台がある。

ルナは周りを見渡すと足場はそこまで広くない岩ばかりで、シグマの周囲を螺旋階段に近い形で浮かんでおり、相手は恐らく、自在に動けるのだろう。

圧倒的不利に、思わず舌打ちが零れる。

「アクセル、気をつけろ。落ちたら死ぬぞ…少し離れた場所に移動するなら必ずホバーを使え」

「分かってるよ。心配しないで」

心配性のルナに苦笑しながらアクセルはシグマの巨体を見上げた。

ステルスはしばらく使えないので、ここからは自分とルナの力だけでこのシグマに勝たなくてはならない。

「ハーハハハハッ!!小僧!小娘!!ここからが本番だ!!」

耳障りな高笑いと共に紅い光弾がアクセルとルナに向かって放たれた。

「でかい!かわせアクセル!!」

「分かってるよ!!」

ルナはウェントスに変身してエアダッシュでかわし、アクセルはローリングで潜り抜けると、アクアガトリングを放った。

すると水弾が当たる寸前でシグマの姿が消えた。

「え!!?」

一瞬我が目を疑ったが、無論違う。

シグマは闇を飛び出し、拳を前に急接近する。

「うわっ!!?」

咄嗟にアクセルは跳躍して隣の足場を移る。

「くそったれ!汚えのにも程があるぞ!!アクセル、その足場は脆い。早く次の足場に移らないと崩れ落ちるぞ!!」

「分かってるよ!!」

エアダッシュとホバーで次の足場に移るルナの言葉に口を尖らせながらもアクセルはホバーを駆使して安全に 次の足場に移る。

「(アクセル、聞こえるか?)」

ルナは秘密通信で再びアクセルと繋げるとアクセルの電子頭脳に彼女の声が響く。

「(ウェントスのエネミーアナライジングで調べて見たんだけどよ。どうやらレーザーはホバーでかわせそうだ…追尾式の弾は…ガイアボムの超硬度岩石の弾で跳ね返せそうだ。あいつが撃ってきたら即座にガイアボムで反撃するんだ。)」

「(よく分かるね?)」

的確なルナのアドバイスにアクセルは脱帽の思いだ。

「(一度見た攻撃は覚えているし…後はウェントスの敵解析能力のエネミーアナライジングの能力の高さによるものが大きいな。やっぱりあいつらはルインがオリジナルなだけあって個々の能力も凄え。ルインはミッションステージの攻略と言うことに関してはエックス以上に万能だからな)」

「(成る程ね)」

それを聞いてアクセルは納得した。

実際に彼女と一緒に任務に向かったアクセルは、彼女の臨機応変さに驚いていた。

取り敢えずガイアボムで追尾弾を跳ね返しながらシグマにダメージを与え、ルナもアリクイックに変身してホーミングミサイルのスナイプミサイルを発射してシグマにダメージを蓄積させていく。

「小癪な奴らめ…」

ダメージを受けたシグマが呻いた。

ルナのアドバイス通りに戦い、シグマに確実にダメージを与えていく。

「シグマ、僕はあんたを許さない。レッドを…レッドアラートのみんなを利用したことを…DNAデータを使ってパワーアップするだけのために!!」

アクセルは気付いていた。

シグマのエネルギー反応がレッドアラートで見たときよりも遥かに増大していたことに。

エックス達の予想通り、シグマはDNAデータによる自己強化のためにレッドアラートを利用していたのだ。

「正直よお、俺もてめえのしつこさにはうんざりだ。エックス達が辟易する気持ちが良ーく分かるぜ…俺もてめえのことを許すつもりなんかねえ。てめえに利用されたレッドとレッドアラートの連中や、てめえの野望のために死んだホタルニクスの爺さんに地獄で詫びてきな!!行くぜアクセル!!」

「OK!!」

ルナの端正な顔が怒りで染まり、そしてルナとアクセルのバレットが共鳴するように輝いた。

「馬鹿な…お前達の力は…ワシの想像を超えている!!何故だ!?これが新世代型レプリロイドの力だと言うのか!?」

「「これで終わりだ!!ダブルアタックッ!!!!」」

バレットから何百発も放たれる閃光がシグマを撃ち貫き、シグマのボディは爆発に飲まれてアクセルとルナは再び、地上に…クリムゾンパレスに転送されたのだった。

そしてシグマを倒して宇宙から地上のクリムゾンパレスに戻ったアクセルとルナは周囲を見回すと見慣れない場所にいた。

まるで旧世紀の教会を思わせるような壮麗なステンドグラスが斜陽を通し、淡い紅や黄色が無機質な床に映っていた。

「ここ…クリムゾンパレス…だよな?」

「多分ね、レッドアラートのメンバーの誰かの趣味じゃないかな?シグマがこんなことするとは思えないし」

不思議そうに辺りを見回しながら呟くルナにアクセルが言葉を返すとシグマが倒れた影響なのかクリムゾンパレスが崩壊を開始した。

「「うわっ!?」」

突然のことにバランスを崩したアクセルとルナの上から、天井の破片がパラパラと落ち始める。

「な、何…?いきなり建物が崩壊し始めるなんて…。」

「大方、シグマの野郎が倒れたらクリムゾンパレスもぶっ壊れる仕組みだったんだろうぜ!!早くエックス達と合流して脱出だ!!」

「そうだね」

ルナの言葉に頷くとアクセルは周りを見渡し、出入口らしき大きな穴に駆け寄ると様子を窺う。

「こっち行けそうだよルナ!早くこっちに来て!!」

「おう!!…あっ!!」

ルナに呼びかけたアクセルに振り返ったルナが思わず声を上げて目を見開いた。

そんなルナの様子に疑問に思う間もなく、アクセルの身体全体をすっぽりと覆って差した影に振り向くと、常葉色の瞳を大きく見開いた。

ボロボロのマントを纏い、回路も露わな腕を伸ばしながら近づいて来るシグマ。

まるでゾンビを思わせる恐ろしい姿であった。

「うわあああああっ!!」

目の前の怪物のあまりの恐ろしさにアクセルは初めて恐怖した。

必死にバレットを乱射するが、痛覚を失っているのかシグマはバレットの攻撃などものともせず、笑いながらその大きな腕を振り上げた。

「フハハハハハッ!!」

「うわああああっ!!」

シグマに殴られたアクセルの体は容易く吹き飛ばされ、壁を突き破り見えなくなった。

「アクセルー!!」

それを見たルナの悲痛なアクセルを呼ぶ叫びが部屋全体に響き渡った。

「痛…っ、ルナ…このままじゃ、ルナがあいつに……」

起き上がるアクセルだが、大量の瓦礫に生き埋めとなっている状態のために軽量の射撃型のアクセルでは身動きがとれない。

「どうすれば…」

このままではルナがシグマにやられてしまうかもしれないが、しかしだからと言って特殊武器では自分も巻き込んでしまうし、自力で抜け出すのも不可能。

「どうすればいいんだ……こんな時…レッドだったら……」

レッドならばきっとこれくらいの瓦礫など吹き飛ばして死にかけのシグマなど倒せただろうに。

『アクセル、諦めるな。』

「え…?」

電子頭脳に響いた声に思わずアクセルは息を飲んだ。

『お前ならきっと奴を倒せる…』

もしかしたらダメージによる幻聴かもしれないが、しかしレッドの声が聞こえたことが今のアクセルにとって重要なのだ。

『突き進めよ…!!』

不敵な笑みを浮かべたレッドの幻が浮かび、そして消えていく。

思い出した…自分にはレッドの…彼が遺してくれた希望の光があることを。

ならばアクセルがすることはただ1つだ。

「(使わせてもらうよ。レッドの力を…)」

アクセルの体が光に包まれていく。

光が消えた時にはアクセルの姿はなく、レッドへと姿を変えていた。

そして瓦礫から脱出し、シグマと対峙しているルナに向けて衝撃波を放った。

「こ、これは…」

「見つけたぞ…ルナ!!」

大鎌を手にしたレッドの姿に驚きで声を失くしたルナの前に、レッドは降り立つ。

バレットを抜く暇さえ与えずにルナを蹴り飛ばし、そのまま守るようにシグマの前に立つと、レッドの後ろでシグマは勝ち誇ったように笑った。

「フハハッ!いいぞレッド!!お前の力をよこせ……あの小娘を始末した後は奴らに復讐だ!!」

シグマの体から先端がギラギラと光るコネクターが伸び、レッドを包む。

「(かかった!!)」

コネクターはレッドの体に次々と接続されていく。

「や、止めろおおおおっ!!」

それを見たルナが悲痛の叫びを上げるが、そんな時に前触れなくレッドが呟いた。

「これなら……」

持ち上げた手に、握られているのはレッドが愛用している大鎌ではなく。

「………っ!!?」

「……どうかな?」

レッドの低い声に混じった、少年特有の…聞き覚えのある高い声。

同時にシグマの顎に突き付けられるバレットの銃口からショットが放たれ、零距離で放たれたショットらシグマの顎から頭にかけて貫いた。

「ぐおおああああっ!!!」

再び苦悶の叫びを上げたシグマは、壁を突き破って外に…高い空中へと放り出された。

レッドは体を捻ってコネクターを引き千切り、壁に背中を打ち付ける。

そのままずるずると崩れ落ちると、全身から光を放ってそれが収まれば、彼は本来の…アクセルの姿に戻っていた。

「ア、アクセル!!大丈夫かアクセル!?起きろ、起きろよ!!なあっ!?」

あまりにも色々のことが起きたために呆然としていたルナだったが、ピクリとも動かないアクセルに慌てて駆け寄って揺さぶって声をかける。

「(また…死ぬ…?嫌だ…嫌だ!!)」

何度声をかけても揺さぶっても反応しないアクセルにルナの目に涙の幕が出来て視界が滲む。

その時、アクセルは少しだけ痛みに顔を顰めた後に、微かに笑い声を零した。

「…へへ…我ながら名演技だったよ…上手くいったでしょ?ルナ…蹴り飛ばしちゃってごめ……ルナ…?」

悪戯っぽいアクセルの声にルナは必死に堪えていた激情が発露した。

「……っ!!」

最悪の結果にならなかったことへの安堵と、無茶をしたことへの怒りで涙を止めることが出来なくなったルナにアクセルは困惑した。

ルナの目から大粒の涙がいくつも床に落ちていく。

「ご、ごめん!そ、そんなに痛かった…?」

「ち…がう…」

立つことさえ出来なくなったのか、ルナは床に座り込んでしまう。

「馬鹿……どうしてあんな無茶するんだよ…下手したらあいつに…シグマに取り込まれてしまうかもしれなかったのに…!!」

ルナの脳裏に無茶をして死んでしまったホタルニクス達や傷付いたエックス達の姿が過ぎり、ますます涙を零していく。

「…………ルナ」

「もしかしたら…死んでたかも…しれない…のに…!!」

「………」

必死に言葉を紡ぐ彼女の姿に確かに無茶だったと思い、罪悪感を感じるアクセル。

「嫌なんだよ…俺は…私は……友、達がいなくなるのは…もう、嫌だ…っ!!」

「…ごめん、もうこんな無茶はしないよ。これっきりだから…約束するよ」

泣きじゃくる彼女の頭に手を置きながら、もう無茶はしないと誓うアクセル。

「…うん」

泣き止むまでアクセルはルナの背を擦りながら、自分に力を貸してくれたレッドに感謝した。

「(助けてくれて…ありがとうレッド…そしてさようなら…だね)」

感謝と共に今まで育ててくれたことに対しての万感の思いを込めて胸中で呟くアクセル。

そして一方、エックス達は戦いの場を変え、まるで墓場を思わせるような場所で四天王を抑えていたが、震動が強くなっていくことに焦燥を覚えた。

「まずいな、多分アクセル達がシグマを倒したからなんだろうが、ここはもう長く保ちそうにない。早くここから脱出しなければ…」

「うん、分かってるよ。彼らは今のうちに倒しておきたいけど」

「まずはアクセル達と合流しなければな…」

「…まあ、合流以前に彼らが私達を見逃してくれそうにないんだけどね……」

エックス達がウェントス達に背を向けた瞬間、攻撃されるのは目に見えている。

「(仕方がない…俺が何とかするから目を閉じてくれ2人共)」

「(…分かった)」

「(頼んだぞ)」

「…ギガクラッシュ!!」

ギガクラッシュによるエネルギー波の光が空間を支配し、ウェントス達の視界を塞ぐ。

「スナイプミサイル!!」

チャージスナイプミサイルを発射し、視界が塞がれているウェントス達に直撃させて吹き飛ばすと、エックス達はこの場から離脱した。

「チッ!!」

「逃したか…」

「このまま、ここにいるのはまずい。我々も脱出するぞ」

「OK」

これ以上はここに留まるのもまずいと判断し、ウェントス達もクリムゾンパレスから脱出したのであった。

そしてアクセル達を捜すエックス達だが、向こうからアクセルとルナが駆け寄ってくる。

「エックス!みんな!!」

「アクセル、ルナ。無事だったんだな」

「シグマは?」

念のために確認するゼロだが、アクセルは笑みを浮かべて親指を立てた。

「バッチリ!!」

「倒したよ。あいつは最後までしつこかったけどな」

「ああ、やっぱり?とにかくここはヤバそうだから…早くここから脱出しよう!!」

「うん!!」

エックス達も急いでクリムゾンパレスから脱出し、転送によってハンターベースに帰還したのであった。 
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