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石像の街

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第一章

               石像の街
 郁秀才と王守義は今は郁の神託で中国山西省の太原近郊の街に来ていた、郁は街に入ってすぐに異変に驚いた。
「これは大変でし」
「全くやな」
 共にいる王も驚きを隠せない顔だった、その街を見て。
「石になってる人が多いわ」
「石化の力を持つモンスターが徘徊しているでしか」
 郁はこうも考えた。
「それならもうすぐにでしよ」
「モンスターを倒してな」
「石化の元凶を絶ってでし」
 蟹の甲殻人の顔にある小さな目をしきりに動かしつつ語るのだった、見れば普段は鋏になっている手も今は人間のものになっている。甲殻人は手の形を挟や五本指の手に変えることも出来るし逆の場合もあるのだ。
「そうしてからでし」
「石化されてる人を助けような」
「そうするでしよ」
「ほな今からやな」
 王は郁にあらためて言った。
「ギルドか役所行こうか」
「ここは役所でしな」 
 郁は腕を組んで考えてから王に答えた。
「その方がいいでし」
「何で役所や」
「ギルドは仕事の依頼でしが」
「役所はかいな」
「政でし、この場合政から話を聞く方が詳しく広いことを聞けるでし」
「そやからやな」
「今は役所に行くでし」
 こう言ってだった、郁は王と共に今は街の役所に向かった。そしてすぐに市長である魚人、草魚のそれである戴九仁から話を聞いた。
 すると彼は市長室で二人に話した。
「今日急になんですよ」
「石化している人が出たでしか」
「それも急に、朝の出勤時間に」
「僕ちん達が街に来た少し前でしな」
 二人は鉄道でこの街に来た、駅から出て街に入ってすぐに異変に気付いたのだ。
「その時にでしか」
「はい、急にです」
「街の人達が石化していったでしか」
「どういう訳か」
「これはどういうことや」
 市長の話を聞いてだ、王は首を傾げさせた。彼は郁と共に横長のソファーに座っていてテーブルを挟んで向かい合っている市長に言った。
「一体」
「わからないですよね」
「というか中国って人を石にさせるモンスターはな」
「あまりいないでし」
 郁が言ってきた、学者という職業からモンスターの分布にも詳しいのだ。
「この世界の中国は多くの種類のモンスターがいるでしが」
「それでもやな」
「そうでし」
 こう王に答えた。
「人や生きものを石に変える生きものはでし」
「少ないな」
「特にこの山西省はでし」
 起きた世界では郁の故郷でありこの世界でも彼が最初に出てきて治めていた地域である。
「人を石に変えるモンスターはでし」
「少ないか」
「いても山奥でしよ」
「街にはやな」
「かなり遠くでし、それで街中に彷徨い入るのも」
「まずないな」
「おかしな奴が持ち込んでもでし」
 闇の闘技場で出したり密売の品として売り出したりだ、こうしたことを行う輩はこの世界でも存在するのだ。
「数が少ないでしから」
「こんなにやな」
「石化している人が多く出ないでし、ましてや朝に急に大勢の人がでし」
「急に石化するとかな」
「まずないでしよ」
「そやな」
「これは普通のモンスターの仕業ではないでし」
 郁はこう看破した、市長の話を聞いて。 
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