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ハイスクールD×D イッセーと小猫のグルメサバイバル

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第53話 アイスヘルへの航路は命がけ!?新たな仲間と激戦の予感!

 
前書き
 朱乃が使った『雷神の裁き』は元ネタとなったワンピースの原作では『神の裁き』ですが悪魔の朱乃が神という言葉を使うのはどうかな?と思い『雷神』に変更しました。後船に落ちてきた棚氷は原作よりも大きい物に変更しましたのでお願いします。 

 
side:イッセー


 センチュリースープの情報を持つ男……その人物はこの世界でもトップクラスの大富豪であるカーネル・モッコイ氏だった。俺達は彼の依頼を受けて現在グルメタウンの港に来ていた。


「こ、これは……?」
「船……でしょうか?」
「ふわぁ……大きな船です!」


 リアスさんと朱乃さんは豪華客船並みの大きさを誇る船を見て絶句し、アーシアはこのクラスの船を始めてみるのか目を輝かせていた。


「これは砕氷船か?それも最大クラスのものだ」
「砕氷船って北極海や南極海で使われているあの?」
「ああ、こんなものを用意できるとは流石カーネル氏だな」


 俺達の前に現れたのは巨大な船だった、それも祐斗が言った通り南極海などで使われる分厚い氷を砕いて渡る為の砕氷船……もしかしたらセンチュリースープがあるというのはあの『大陸』なのかもしれないな。


 俺達は船に乗り込み内部へと案内される、そして美食屋全員が広いスペースに集まりミーティングが始まった。


「諸君、よくぞ集まってくれた。ますは諸君らの勇気と心意気に感謝しよう」


 カーネルが先頭の壇上に立ち挨拶をした。


「ではこれよりセンチュリースープの在りかを教える」


 天井から大きな画面が下りてきてそこに氷の大地が浮かび上がった。


「あれは『アイスヘル』か?極寒の地獄と言われる死の大陸……」


 俺の言葉を聞いた美食屋達は一斉にどよめき始めた。無理もないな、あそこは危険区に指定された人間界でも屈指の場所だ。


「イッセー、アイスヘルって?」
「年間の平均気温が-50℃とされている極寒地獄、猛獣の強さよりもその気候で危険区に指定されている氷の大陸です」
「-50℃……悪魔でも耐えられないわね」


 リアスさんにアイスヘルについて説明し、その後もカーネルの説明は続いていく。


「その大陸はまだ冷凍補損や品種改良などの技術がなかった大昔のグルメ家達が己のフルコースを保存するために持ち寄ったと言われる伝説の大陸……それがアイスヘル!別名『美食の冷蔵庫』と呼ばれている」
「美食の冷蔵庫……ということはアイスヘルには沢山の食材が眠っているって事でしょうか?」
「今では滅んでしまった食材もあるという噂だが、実際にそれを確かめようとして帰ってこなかった奴は後を絶たない」
「ゴクッ……今回の旅も過酷なものになりそうです」


 小猫ちゃんの言葉にオカルト研究部や教会組が唾を飲んだ。これまでジャングルや火山といった危険な場所に行った俺達だが、アイスヘルは間違いなくトップクラスに過酷な旅になるな。


「そのアイスヘルなんだが、実は氷が解け始めているという情報が先日我々の耳の入った。その原因は『メタンハイドレード』の大量発生」
「メタンハイドレート……?イッセー、それは一体何なんだ?」
「海洋エネルギー鉱物資源水分子の格子状の結晶の中にメタンガスを含んだ氷状の物質だ」
「……???」
「分かりやすく言うと燃える氷だって事だ」


 ゼノヴィアにメタンハイドレードについて説明したが、どうやら難しかったようで頭の上に?が見えるほど困惑していた。俺はゼノヴィアに簡単に解釈して説明した。


「場所は大陸の中心部にそびえる巨大な氷山、その地中からメタンハイドレードが引き出して付近の氷を溶かしているらしい」
「氷山……もしかしてそこにセンチュリースープが?」
「うむ、その氷山には先程話した大昔のグルメ家達が己のフルコースを冷凍保存した場所……豪華で煌びやかな食材が眠る氷はまるで先人達が己の力量を誇示するかの如く美しい輝きを放つと言われている。別名『グルメショーウインドー』……」
「そうか、メタンハイドレードによって溶けたグルメショーウインドー……その液体こそがセンチュリースープの正体なのか!」
「その通りだ、美食屋イッセー」


 なるほどな、嘗ての先人達のフルコースが冷凍保存された氷……それが解凍されて染み出た液体がセンチュリースープって訳か。


「グルメショーウインドーにてメタンハイドレードが発生するのは100年に一度。だからこそセンチュリースープと言われている……何としても探し出せ!一世紀に一度の伝説のスープを……!」


 カーネルは画面に映った氷の大陸を見ながら年寄りとは思えない重い声でそう話した。




――――――――――

――――――

―――


「こちらが貴方方の部屋になります」


 ミーティングが終わった美食屋達はそれぞれあてられた部屋に案内されていった。ここからアイスヘルに着くまでは自由に過ごしていいらしく、船内にはレストランや娯楽施設もあるらしい。まあ猛獣に襲われたりしたら俺達が迎撃するんだけどな。


 俺らもグルメSPの一人に案内され、ついた場所は結構豪華な部屋だった。


「どうして俺達はこんな豪華な部屋なんだ?他の奴らは小さな部屋だったじゃないか」
「貴方はあの四天王の一人……スープを手に入れられる可能性が最も高いお方です。故にコンデションを最高潮にして頂きたくカーネル氏が案内せよとの事です」
「ふーん、まあそこまで期待されているのなら有難く使わせてもらうぜ」


 俺達は部屋の中に入ると疲れからかベットに座り込んだ。翌々考えたらコカビエルの戦いの後、夜中グルメ界に入って親父のところに行ってそれからグルメタウン、そして現在に至るのだが全然寝てなかった。


「ふあぁぁぁ……流石に丸一日寝てないと俺も辛いな……」
「そうね、アイスヘルに着くまで休息を取っておきましょうか」
「じゃあもう寝ましょうか。俺も限界ですし……」


 俺達はベットに横になると全員直ぐに夢の中に旅立っていった。それから4時間ぐらいが経過して俺が目を覚ますと……


「ふみゅ……イッセー先輩……」
「すぅ……すぅ……」
「んんっ…イッセー君とようやく結ばれましたわ……」
「あん……イッセー君のエッチ……♡」
「師匠……私もっと…強く……」
「ガジガジ……」


 俺の上で小猫ちゃんとアーシアが仲良く眠っており、その横で朱乃さんとイリナが大きな胸に俺の手を挟み込んで寝ていた。そして俺の足を枕にしているルフェイが腕を突き上げて俺の股間を殴りゼノヴィアが足を噛んでいた……痛いんだけど。
 というか俺は祐斗と一緒に壁側に寝ていたのにどうして真ん中に移動しているんだ?


「うふふ…やっと見つけたわ……私の王子様……」
「やった…凄いスクープよ……これで局長の鼻を明かせる……」
「ううっ……苦しい…リナリー…トスカ……助けて……」


 祐斗の方に視線を移すと、寝ぼけたリアスさんとティナに抱き枕にされ胸に顔を沈めた祐斗が苦しそうにうめき声を出していた。


「はあ……少し外の空気でも吸ってくるか……」


 俺は皆を起こさないようにズラしてベットから起き上がる。そして予め異空間から出しておいた駒王学園の制服を着て部屋から出ると甲板に向かった。


「もうすぐ日の出か……長い一日だったな」


 ボーッとしながら日の出を見ていると背後から誰かに抱き着かれた。


「えへへ、おはようイッセー君」
「おはようイリナ、お前も起きたのか?」
「うん、イッセー君が外に行こうとしているときに目が覚めたから付いてきちゃった。それよりもこの服はどう?似合ってる?」
「ああ、よく似合ってるよ」


 イリナはリアスさんに渡された駒王学園の女子用の制服を着ていた。流石に教会で用意されたというあのピチピチスーツだと目に嬉しい……じゃなくて目のやりどころに困るのでリアスさんに用意してもらったんだ。
 しかしイリナがスカートを穿いているのって何だか新鮮な感じだな。昔は短パンだったから余計にそう思ってしまうのかもしれない。


「それにしてもいい景色だね」
「ああ、絶景だな」


 俺の隣に立ったイリナと一緒に日の出を見ていると、イリナは何かを思いついたように両手を合わせた。


「そうだ!ねえイッセー君。二人で空の上に行こうよ!」
「空の上に?」
「うん!ここからでもあんなに綺麗な景色が見れるんだよ、上ならもっと凄い景色が見れるはずだよ」


 ピョンピョンと楽しそうに跳ねながらそう言うイリナ、船から離れて置いていかれないか心配したがまあ少しくらいなら大丈夫か。
 それにこんなに楽しそうにはしゃぐイリナのお願いを無碍にするのは嫌だしな。


「よし、じゃあ行ってみるか」
「うん、行こう行こう!」


 俺は赤龍帝の鎧を展開して翼を出し、イリナは黒い(ダークブーツ)を出して空高く舞い上がった。船が小さく見えるほどの高度まで上がった俺は鎧の顔の部分を展開して下を見てみると……


「うわぁ……凄い凄い!」
「空から見る景色がこんなにも綺麗だとはな……」


 空から見下ろす景色はまさに広大な絵画のようで、海全体に朝日の光が反射してため息が出てしまうくらい綺麗だった。


「空の上から見る景色も良いものでしょ?」
「本当に良いものだよ。飛行機やヘリから見下ろす景色とは比べ物にならないな」
「でしょでしょ?黒い靴を履いて空の上に上がるととっても気持ちいいんだよ。景色も綺麗だしこうやって風を感じながら見下ろす景色はまさに格別でしょ?」
「そうだな、空を飛ぶっていうにも悪くないものだな」


 空から見下ろす景色に感動する俺にイリナがそっと寄り添ってきた。


「私、幸せだよ。こんな景色、もうイッセー君とは見れないって思ってたから……」
「イリナ……」
「私もイッセー君は生きてるって信じてたけど、でも時々くじけちゃいそうになっちゃったんだ。ゼノヴィアやパパ達がいたから立ち直れたけどでもすっごく苦しかった」
「……今更だが本当にごめん、イリナ。そんなにも俺を想っていてくれたっていうのに俺は長い間イリナを苦しませてしまった」


 俺はイリナの為と言いながら結局はイリナを苦しませてしまった、本当に最低な男だ。


「んっ……」
「んんっ!?」


 罪悪感を感じていた俺に、イリナがキスをしてきた。


「そんな顔しないでよ、イッセー君。イッセー君だって悪意を持って話さなかった訳じゃないんでしょ?寧ろ私のことを心配してあえてそうしてくれたんだって分かってるから」
「イリナ……ありがとう。こんな俺を好きになってくれて……もう絶対にどこにも行かないよ、イリナを絶対に離さないから……」
「うん、絶対に離しちゃ駄目だからね」


 俺はその言葉に頷いて彼女を抱きしめる。イリナも俺の頬に幸せそうに頬ずりをしながら首に両手を回してきた。


「イッセー君、愛しています……」
「俺もだ、イリナ……」


 再び唇を重ね合う俺とイリナ、お互いに離さないと気持ちを表すように深く密着して唇を重ねていく。


「イッセー君……もっとぉ……」


 啄むように何度も唇を重ねていくと、不意にイリナが俺の口を舌でこじ開けて中に入れてきた。俺はちょっと驚きながらも自分の舌をイリナの舌と絡ましていく。


「んっ……ぷはぁ……」


 息が続かなくなってきたので俺達は一旦唇を離した。顔を赤くしながら俺の顔を見つめてくるイリナ、朝日の光も重なった彼女はとても綺麗だった。


「私の顔をジッと見たりしてどうしたの、イッセー君?」
「いや、こうして改めて見るとイリナって本当に可愛くなったよなって思ったんだ」


 俺がそうつぶやくと、イリナは顔を真っ赤にしながらちょっと恥ずかしそうに目を逸らした。


「も、もうイッセー君てばストレートだよ……でもイッセー君にそう言ってもらえると嬉しいなぁ。どこが変わったと思う?」
「見た目が大きく変わったな。子供の頃は男みたいな格好していたけど今は凄く女の子らしい」
「まあ昔は男の子みたいな恰好が好きだったからね。それで他には?」
「そ、それは……」


 イリナは意地悪な笑みを浮かべるとその豊満な胸を形が変わるくらいの力で押し付けてきた。くそっ、何で鎧越しなのにこんなにも感触がダイレクトに伝わってくるんだ?


『俺がサービスで感触をお前に伝えているのだ。どうだ、美少女となった幼馴染の胸の感触は?』
「最高です……って余計なことをするなよ、ドライグ!」
『ガッハッハ!大人ぶっていてもお前も17歳のガキよ!いっそのことガバッと襲ってしまえば良かろう』
「こんな空の上で出来るか!どんな変態プレイだよ!」


 ドライグの奴、最近出番が薄いからって俺をからかいやがって……


「ねぇねぇイッセー君……早く教えてよぉ……」
「ぐぐっ……か、身体が女の子に成長しているな……」
「具体的には?」
「胸とか……」
「もー!イッセー君のエッチー♡」


 俺の言葉を聞いたイリナは、俺の手を掴むと自身の胸へと引っ張って押し当てた。


「お、おお……」
「私のおっぱい凄いでしょ?流石に朱乃さんには勝てないけどそれなりには自信があるの。ねぇ、もっと触って……♡」
「……」


 イリナのおねだりを聞いた俺は、無意識にコクンと頷き彼女の胸を揉んだ。鎧越しなので痛くないように力を調整しているが、イリナ的にはそれが返って気持ちいいようで息を荒くしながらビクビクッと体を震わせていた。


「やぁん♡イッセー君の手、とってもヤラしいよぉ♡」
「イリナ……イリナ……」


 極度の興奮状態で意識がイリナにのみ集中した俺は、両手で彼女の胸を揉んでいく。凄い感触だ、それに何故か体が熱いぞ……!


「イリナ……んっ」
「んんっ……♡」


 居ても立ってもいられなくなった俺はイリナにキスをした。ヤバイな、止めないといけないって思っても体が勝手に動いてしまう。俺の手は胸から下に降りて行きイリナの……


『おいお二人さん、俺が煽っておいて済まないがそれ以上は流石に拙いだろう。それに船が大分遠くに行ってしまったぞ』
「な、なんだって!?」


 ドライグに声をかけられて慌てて船の方を見てみる。ドライグの言った通り船ははるか遠くに行ってしまっていた。


「拙いぞ!このままじゃ置いていかれてしまう!」
「大丈夫だよ、イッセー君。あたしと黒い靴ならあっという間にあそこまで戻れるよ。ほら、手を繋いで」
「こうか?」


 俺とイリナは指を絡ませるという所謂『恋人つなぎ』で手を繋いだ。そしてイリナはダークブーツで何かを蹴るような動作を取るとすさまじい速度で船に向かっていった。


「こ、これは風を切る音によって生まれた『空気の振動』を地盤にして高速で動いているのか……!」
「うん、そうだよ。音響の踏技『音枷』っていう高速移動用の技なんだ」


 イリナの出す速度は凄まじく、僅か数分で離れていた船に戻ることが出来た。


「ふぅ……何とか無事に戻ってこれたな」
「ごめんねイッセー君、私が我儘を言ったからこんなことに……」
「別にいいさ。イリナのお蔭で戻ってこれたんだし俺も楽しかったよ」
「んんっ……イッセー君のナデナデ気持ちいいね……」


 落ち込むイリナの頭を優しく撫でると、彼女は嬉しそうに微笑んだ。その後俺達は皆が寝ている部屋に戻ってもう一度寝ることにしたのだが……


「なあイリナ、抱っこはさっきもしたし離れないか?」
「えー、こうしていたっていいじゃん」


 イリナは俺に抱っこされて寝たいと言い出した。皆が起きたら間違いなく追及されるぞ、特に小猫ちゃんには……


「流石にここでくっついて寝るっていうのはちょっと……」
「どうしても駄目?」
「ぐっ、ううぅ……分かったよ」


 上目づかいでおねだりされると俺は何も言えなくなってしまい承諾してしまった。


「ありがとうイッセー君、大好きだよ♪」
「むぐっ」


 感極まったのかイリナは嬉しそうに俺に抱きつくとキスをする。結局俺はイリナを抱きしめて寝てしまったので昼頃に起きると小猫ちゃん達に尋問されてしまった。


「まったく!先輩は浮気者です!そんな素敵なイベントを私とではなくイリナさんと過ごすなんて!」


 船内にある食堂に移動した俺達は小猫ちゃんに説教されていた。彼女はぷんすかと怒りながら『金色イクラ』の『醤油バッタ』漬けを『プラチナ米』にかけて食べる、するとぷんすかと怒っていた小猫ちゃんは満面の笑みを浮かべた。


「美味しいか?小猫ちゃん」
「はい、とっても美味しいです……ってそんなことでは誤魔化されませんよ!」


 機嫌を直してくれたかと思ったがそう甘い話ではなかったようだ。さてどうしようか……


「まあまあ小猫、イリナだって10年以上も待っていた想い人に出会えたんだしそんなに目くじら立てなくてもいいじゃない」
「リアス部長……」
「それに僕たちは悪魔だから朝日を浴びたら体調を崩しちゃうよ?」
「祐斗先輩まで……まあそれはその通りなんですけど……」


 リアスさんと祐斗がフォローしてくれたおかげで、小猫ちゃんに何とか許してもらう事が出来た。


「まあ私は正妻ですしこれくらいは許してあげますか。じゃあ先輩、次は私と……」
「ふふっ、許可ももらえたしもっとイチャイチャしましょう。イッセー君、あーん♡」
「わたくしからもどうぞイッセー君♡」
「イッセーさん、今度は私にあーんしてください」
「……って目を離した隙に何をしているんですか――――ッ!!」


 イリナ、朱乃さんにあーんをしてもらい俺の膝上に座るアーシアにあーんをしてあげた。それを見た小猫ちゃんがまた怒りだしてしまったので、食後の後部屋に戻って10分くらい抱っこしながら耳元で好きだと囁き続けたらあっさりと許してくれた。
 因みにこの方法を教えてくれたのは朱乃さんだ。何でも彼氏にしてほしい事ベスト10の3位を選んだらしい。


「小猫ちゃんにはイチコロだったようですわね。今度はわたくしにもしてほしいですわ」
「あはは……まあ後ほどに」
 

 その後俺達は食後の運動もかねて甲板を歩いていた。ふう、潮風が気持ちいいな。


「それにしてもこの服、とっても温かいわね」


 リアスさんは自身が着ているスーツの感想を話した。この服はさっき渡されたもので防寒服の一種だ。


「ええ、それは『ライタースーツ』といって耐寒性の高いゴム状の素材が幾重にも重なって出来たスーツで、重なった素材が摺り合って生まれる摩擦熱がスーツ全体を高温に保ってくれるんです。その保温性は永久凍土に生息する『ブリザードベアー』の毛皮にも匹敵します。因みにお値段は一着700万円くらいです」
「ああ、そう……」


 流石に金額に対しては慣れたのか素っ気ないリアクションを取るリアスさん、彼女の実家はお金持ちらしいがお金は親に管理されて彼女自身はそこまで大きな金額は使えないらしい。というかどこか庶民的な一面もあるよな、リアスさんって。


「それでも馬用のものはなかったそうなので残念です」
「えっ……う、馬―――――ッ!?」


 背後から声をかけられたので振り返ってみると、昨日見かけたターバンを被った青年が馬に乗って俺達に話しかけていた。しかしリアスさんのリアクションは面白い、やっぱり彼女はこうでないとな。


「初めましてイッセーさん、ボクは『グルメ騎士(ナイト)』のメンバーの滝丸と言います」
「グルメ騎士……アイの所のか。随分と若いな」


 声をかけてきた青年は滝丸というそうで、俺の友人であるアイが率いているグルメ騎士のメンバーの一人だった。


「イッセー君、グルメ騎士とは一体何なんだい?」
「グルメ騎士というのは食の幸福『グルメ教』の教えを忠実に守る美食屋集団で、人数は少ないが全員が強く崇高な精神をもっているのがグルメ騎士さ」
「イッセーはそこの誰かと知り合いなのか?」
「ああ、そのグルメ騎士を率いているアイって人は俺の友人なんだ。まだ美食屋になりたてだった時に助けてもらったことがあってな、それ以来友人として付き合いを重ねているんだ」


 俺は祐斗とゼノヴィアにグルメ騎士、そしてアイについて話した。アイ……本名『愛丸』は俺よりも年上だが長い付き合いの中で友情を育んで今ではタメ口で話せるほど親しくなった。十夢も同じようなものだからどちらも俺にとってかけがえのない友人なんだ。


「それにしても奇遇だな。まさかこんな所でグルメ騎士に会えるとは思っていなかったぜ。最近アイに会っていないが元気にしているか?」
「……!え、えぇリーダーは元気にしていますよ。イッセーさんの事も聞いていました、こうしてお会いすることが出来て光栄に思います」
「そんな光栄に思われる程大した人物じゃないさ、俺は。かなり若く見えるがいくつなんだ?」
「18歳です」
「俺と一つしか違わないじゃないか!予想以上に若いな……組織の中じゃ一番若いんじゃないのか?」
「いえ、数年前に入った女性がボクよりも年下なのでその子が一番下ですね」
「それでも二番目に若いんだろう?あのグルメ騎士にその若さで所属できるとは大したもんだよ」
「いえそんな……ボクなんてまだまだですよ」


 滝丸か……アイがグルメ騎士に入団するのを認めたって事はかなりの才能を持っていそうだな。


『ヴーッ!ヴーッ!ヴーッ!』
「な、なんですか!?」


 突然船につけてあった警報機がけたたましい音を出して、その音でアーシアが驚いた。遠くを見ると何かの生物がこちら側に向かって泳いできているのが目に映る。


「皆、気をつけろ!どうやら猛獣が出る海域に入ったようだぜ!」


 海の中から鮫に手足が生えたような猛獣『グレイトレッグ』が甲板に跳び上がってきた。


「鮫の化け物か!?」
「グレイトレッグか、こいつは刺身が美味いんだよな」


 一体のグレイトレッグが俺に飛び掛かってきたので、おれは体を逸らして噛みつきをかわしグレイトレッグの体に指を突き刺した。


「ノッキングだ」
「流石です、先輩」


 2体のグレイトレッグを殴り飛ばした小猫ちゃんに褒められた。他のオカルト研究部や教会組も難なくグレイトレッグに対応できているようだ。


「うおぉおおっ!」
「このヤローが!」


 他の美食屋達も武器を持ってグレイトレッグの大群に向かっていく。甲板の上は美食屋とグレイトレッグの大群でいっぱいになっていた。


「うわぁぁぁぁ!ゾンゲ様――――ッ!?」


 あいつはゾンゲの仲間の一人か?このままじゃ食べられてしまうな。


「喰らえ!ゾンゲスマーッシュ!!」


 ゾンゲの投げた斧がグレイトレッグに当たるが、大したダメージはなかったようでグレイトレッグがゾンゲに襲い掛かった。


「ぬわぁぁぁ!?」
「ふんっ!」


 俺はゾンゲに襲い掛かろうとしていたグレイトレッグを海に目掛けて蹴り飛ばした。


「だいじょうぶか、ゾンゲ」
「あ、ああ……助かったぜイッセー……」


 他の美食屋達もグレイトレッグにかなわないものがいて捕食されかかっていたが俺の仲間が助けに入った。今もそこにいた美食屋が食べられそうになっていたが、祐斗が現れて聖魔刀を一閃してグレイトレッグを真っ二つにした。


「大丈夫ですか!」
「す、すまねえ。助かったよ兄ちゃん」
「ほう、いい太刀筋だな小僧」
「えっ、あなたは……?」


 祐斗の背後に刀を持った傷だらけの男が現れた。あの人も昨日ヘビーロッジで見かけた人だな。


「ふ、副組長!?」
「騒がしいから何事かと思ったら……お前ら、こんな雑魚に手間取っているんじゃねぇよ」
「申し訳ありません!」


 部下らしき人達に説教をする傷の男性、副組長って呼ばれていたな。見た目もカタギというよりはそっち系にしか見えないしもしかして『グルメヤクザ』の関係者なのかもしれないな。


「ガァアアアッ!!」


 そこにグレイトレッグが現れて傷の男性に襲い掛かった。


「危ない!」
「ん?」


 祐斗が傷の男性を助けようとするが、彼は刀に手をかけると祐斗と同じくらいの速度でグレイトレッグの背後に回っていた。


「居合『三枚下ろし』」


 その瞬間、グレイトレッグの身体は綺麗に三枚に分かれてしまった。


「凄い、全然力を入れていなかったのにあんな速度を出せるなんて……」


 祐斗は剣士としてあの男性の力量に感銘を受けたようだ。しかしあの男性、かなりの腕前だな。


「俺は疲れたからもうひと眠りする、後は掃除しておけ」
「はっ!」


 男性は部下にそう言うと船内に戻っていった。


「すぅぅ……はぁぁぁ……」


 滝丸は深く息を吸い込むと何かの動作をする、そして集中力を極限まで高めると一斉に襲い掛かってきたグレイトレッグ達の胴体に攻撃を仕掛けた。


「『栓抜きショット』!!」


 攻撃を受けたグレイトレッグ達に外傷はなかった、だがグレイトレッグ達は体を痙攣させて動けなくなっている。


「今のはグレイトレッグ達の骨や関節を外したんですか?あんな数を相手にして全部の技を成功させるなんて……」
「ああ、大した集中力だ」


 同じように体恤で戦う小猫ちゃんが、滝丸の技量を見て信じられないといった表情を浮かべていた。才能はあると思っていたが予想以上だったな。


「イッセー、甲板の上滅茶苦茶になってるけどこれ大丈夫なの!?」


 グレイトレッグをビクトリールインソードで切り裂いたリアスさんが悲鳴を上げる。


「これぐらい慣れっこでしょう?ほら、まだまだ来ますよ!」


 海中から新たな猛獣が現れて俺達に襲いかかってきた。


「こんなの慣れる訳ないでしょう――――――ッ!!」


 リアスさんは悲鳴を上げながらも率先して猛獣に向かっていった。俺も負けていられないな!


「行くぜ、釘パンチ!」



―――――――――

――――――

―――


 猛獣達との戦いもようやくひと段落して俺達は甲板に座り込んでいた。


「はい、これで大丈夫ですよ」
「ありがとうな、お嬢ちゃん。もしよかったらこの旅が終わったら俺とデートでも…痛てぇ!?」
「はい、次の方どーぞ」


 怪我人も結構出たがそこはアーシアが力を発揮する、可愛らしいアーシアに癒された美食屋達は皆アーシアにメロメロになっていた。だからといってアーシアを口説こうとするんじゃねえよ。


「皆!あれを見て!」


 リアスさんが何かを見つけたらしくそちらに視線を移してみると、遠くにうっすらと大きな何かが見えてきた。


「等々来たか、アイスヘル……!」


 船が近づくに連れて大陸も大きくなっていき、すぐ近くまで来るとその大きさは圧巻の物だった。前に見たリーガルウォール並みの迫力だな!
 

「これがアイスヘルか、なんて荘厳な……」
「こ、これを登っていくのか!?」


 他の美食屋達もあまりの大きさに声を失っていた。ここを登るのはかなりきつそうだな……


「皆!上を見てくれ!」


 滝丸が何かを見つけたようで上を見上げてみる、すると棚氷の一部が崩れてこの船目掛けて落ちてきた。だがそのサイズは尋常の物ではなくこの船よりも遥かに大きい物だった。
 船の砲台で攻撃したがまったく効いていないようだ。


「ダメだぁ!ビクともしねぇ――――!?」
「逃げろ――――ッ!!」


 巨大な氷を見て美食屋達は逃げ出そうとした。だがここは海の上だ、逃げ場なんかどこにもない。ならば俺達がとる行動は一つだ!


「あの氷をぶっ壊す!祐斗!ゼノヴィア!」
「うん、任せて!」
「行くぞイッセー、祐斗!」


 俺の合図とともに祐斗、ゼノヴィアの三人で親父に使った飛ぶ斬撃の合体技を放った。それが氷に当たり大きな切れ込みを入れる。


「小猫ちゃん!イリナ!」
「先輩の期待に応えます!」
「張り切っていっくよ―――っ!」


 俺は次に小猫ちゃんとイリナを呼ぶと三人で跳び上がってパンチとキックのラッシュを放つ。


「オラオラオラオラオラオラァァッ!!」
「ニャニャニャニャニャニャァァッ!!」
「ホラホラホラホラホラホラァッ!!」


 俺達の攻撃によって氷は真っ二つに分かれて落ちていく。だがこのままでは片方の破片が船に当たってしまうな。


「リアスさん、朱乃さん!」
「準備はバッチリよ、イッセー!」
「うふふ、わたくしも大丈夫ですわ」


 俺は船の上に降り立ち二人の間に立つ。そして息を大きく吸い込み炎を吐き出して腕に纏わせた。


「フライング・レッドホット・フォーク!」
「滅びの魔力!」
「雷神の裁き(エル・トール)!』


 炎の形がフォークに変わり、リアスさんの放った滅びの魔力と朱乃さんが放った雷のエネルギーと纏まって巨大なフォークになり棚氷の破片を消し去った。


「アイスヘル……いきなり熱い歓迎だったな。だが所詮唯の氷だ、俺達の敵じゃない」


 俺は皆とハイタッチすると眼前の氷の崖を見あげた。


「必ずゲットしてやるぜ、センチュリースープ!」


 
 

 
後書き
 ゼノヴィアだ。いきなりのピンチだったが私達にかかればなんてことはなかったな。今回は私も初めてのグルメ界の冒険だから気合を入れていかないといけないな。
 次回第54話『極寒地獄の番人、ツンドラドラゴンとの戦い!』で会おう。 
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