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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第二百二十八話 スズキだけれどその一

               第二百二十八話  スズキだけれど
 スズキは蝶々さんの侍女だ、アメリカの総領事シャープレスと一緒に蝶々さんを支えるキャラクターだ。
 そしてそのスズキに井上さんがなるけれどだ。
「緊張していますよね」
「している」
 また偶然スズキさんと出会った、文化祭の準備の合間に。それで僕が舞台について緊張しているかと聞くとだ。井上さんはきっぱりと答えた。
「かなりな」
「そうですよね、やっぱり」
「脇役だが」
 それでもというのだ。
「出番も多いしな」
「いつも蝶々さんの横にいますしね」
「特に第二幕はな」
「だからですね」
「あの役に決まった時点でな」
 まさにというのだ。
「緊張したしな」
「今もですね」
「そう見えないかも知れないが」
 表情には出ていない、僕から見ても。
「しかしな」
「緊張されていますか」
「かなりな、こうした時はだ」
「どうされるんですか?」
「絵を観る様にしている」
「絵ですか」
「そうだ、絵だ」
 それをとだ、僕にこう話してくれた。
「学園の美術室、若しくはな」
「学園の美術館にですね」
「行ってな」
 そうしてというのだ。
「絵を観てな」
「そうしてですか」
「気を静める様にしている」
「それが井上さんの緊張の和らげ方ですか」
「どちらも行けない時はスマホでな」
 それを使ってというのだ。
「有名な画家の絵を観てな」
「よくありますからね、ネットだと」
 世界の名画が見放題と言っていい、ダ=ヴィンチもミケランジェロも誰でもだ。
「本当に」
「そうした絵を観てな」
「スマホでもですね」
「そうして気を落ち着かせている」
「緊張していてもですか」
「私はそうしている、そしてだ」
 井上さんは僕にさらに話してくれた。
「今はボッティチェリの絵が好きだ」
「ああ、ルネサンスの時の」
 ヴィーナスの誕生で有名な画家だ、残念ながらその絵の多くは燃やされて現存していないものも多いという。
「あの人の絵ですか」
「そしてポスターもだ」
 こちらもというのだ。
「よく観ている、だがな」
「だがといいますと」
「肝心の蝶々さんのポスターはな」
 あの作品のそれはというと。
「あまり好きでない」
「絵柄がですか」
「どうもな、プッチーニの作品のポスターはどれもな」
「お好きでないですか」
「うちの大学の美術館にもあるがな」
 八条学園の中の美術館にはポスターのコーナーもある、そしてそこにプッチーニの作品のそれもあるというのだ。
「しかしだ」
「それでもですか」
「好みではない、ヴェルディのものは好きだが」
「椿姫とかですか」
「そちらはな、だが」
 どうしてもという口調でだ、井上さんはまた話してくれた。
「プッチーニのものはな」
「お好きでないですか」
「そしてだ」
 井上さんはさらに話してくれた。 
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