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人徳?いいえモフ徳です。

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四十四匹目

 
前書き
チート物のおやくそくを書きたかった。
反省も後悔もしていない。 

 
学校二日目。

「では今日は皆さんがどれくらい魔法が使えるか見てみたいと思いまーす。
魔法訓練場に向かってくださーい」

というレイ先生の指示でぞろぞろと訓練場へ向かう。

「ぬいちゃん、我儘姫」

「狐君、姫様」

「「自重」」

くーちゃんとめをあわせる。

「「善処する」」

side out



「シラヌイ、私達と比べてしょぼくない? っていうか一発でヘロヘロじゃない」

「そう言わないの。僕らほど科学知識を知らない上で魔力でゴリ押ししてるんだからあたりまえだよ」

「というか詠唱長すぎよ」

「一応言っとくと無詠唱呪文って高等技術だからね?」

「見なさいよアレ、あんなファイアストーム手で払うだけで消えるわよ?」

「たしかにそうだけども…」

「時々玉藻様がやってるキセルにつけるくらい?」

「いや料理くらいには……ってあの継続時間じゃ無理か」

「そもそも標的まで届いてないじゃない。やる気あるのあの子達?」

「いやこれたぶん魔導師試験基準だよ。ほら、術者と標的の岩の距離見てよ」

「ふーん……。ねぇシラヌイ、あの岩を粉々にすればいいのかしら?」

「綺麗に等分してテクニックを見せつけるのはどう?」

「それならむしろ岩を壊さないで周りだけ抉るのはどうかしら?」

「シンデレラハイヒールで作った硝子像にやらせるっていうのも面白いかも」

「貴方はエアリアルカノン使えばいいじゃない」

「えー…あれ地味じゃん」

「そんな事言ったら私なんてどうすればいいのよ? 見映えのいい魔法なんて持ってないわよ」

「サンダーランスは?」

「反れたら危ないじゃない」

「心配しすぎじゃない?」

他の一年生が魔法を撃ってる様子を見ながら物騒な話を続けるシラヌイとクーコ。

二人の肩をシャクティとメリーが叩く。

「「自重自重」」

真面目な顔で言われ、クーコが不満げに返す。

「だってここで見せつけとけば面倒な輩が減るじゃない」

「むしろ近づいてくるのでは…」

「その時の為に貴女がいるんじゃないメリー」

「人使いの荒い主だ…」

やれやれ、とメリーがジェスチャーをする。

「それに、見せつけるのであれば私があれを風刃抜刀で切ればいいだけではないか」

シャクティがカタナをポンと叩く。

学園には武器の持ち込みが許される。

大抵は杖などの魔法の補助具等だが、剣を持ち込む者も少なくない。

「それじゃぁつまらないじゃない」

どうしても全力を出して遊びたいクーコに臣下二人がげんなりする。

「あとで怒られるの参謀のわたしなんだけど」

「大丈夫よ。シラヌイが怒られてくれるわ」

「うきゅっ!?」

「それもそうか」

そうしていよいよクーコ一味の番が回ってくる。

というかドルスの采配で最後だ。

「とりあえず…一番しょぼいわたしから」

メリーが所定の位置に着く。

「………ぬいちゃん。なにすればいい?」

「クアッドエレメンツバーストは?」

「それでいいや……」

メリーが岩を正面に捉える。

右手を上にかかげ、指を鳴らす。

右、左、下と計四回鳴らした。

一回鳴らす度、魔方陣が現れる。

「ばーすと」

胸の前で五度目を鳴らした。

炎が、雹が、石礫が、風刃が、岩を襲う。

四属性魔法。

それも水ではなく氷。

明らかに上級魔法だ。

だが威力はさほどでもなく、岩に傷はつかなかった。

「ぶい」

無表情でピースサインをするメリー。

「では次は私だな」

シャクティが揚々として位置につく。

「シャクティ・アーグロ、参る」

スッと居合いの構えを取る。

カタナに魔力を流す。

「魔剣技、風刃抜刀!」

振り抜かれた無色透明のディアマンタイトのカタナ。

斬撃の延長線上の地面が裂けた。

その不可視の一撃は岩に深い傷をつけた。

「さて、身分的には次は狐君だが、さきに姫様がやった方がいいな」

「そうね、標的を壊されたら堪らないもの」

「それは僕も言いたいんだけど?」

クーコが嬉々として位置に着く。

「さて、私の実力を見せる時ね!」

クーコがチラリとマーガレットを見る。

「集え水よ我が手の中に! 形を表し敵を撃ち抜け!」

クーコの手に集められた水が凍りつき、シラヌイが教えた銃弾の形を取った。

その銃弾が高速で打ち出された後。

「第二の刃が放たれる」

クーコがドヤ顔でパチンと指を鳴らすと同時。

目も眩むような閃光と轟音が響いた。

「ら………雷撃魔法……?」

ドルスが腰を抜かし、へたり込んでいた。

「やったわシラヌイ! 岩が真っ二つよ!」

「僕このあとどうすんのさ」

やれやれ、と言いながらシラヌイが位置に立った。

「出でよ! 土塊より生まれし煌めきの巨人よ! クリエイト・ジャイアント!」

シラヌイが右手を地面に叩きつける。

次の瞬間。

地面から巨人が現れた。

太陽光をキラキラ反射し透過する身の丈五メートルのガラスの巨人。

その姿や関節は、シラヌイが前世で作っていた美少女プラモデルを参考にした物で、フローティアのゴーレムとは全く別のものだった。

「鉄槌を下せ!」

女性型の巨人が、岩に拳を叩きつけた。

ガッシャァンッッッ!!!という大音量。

巨人は、その腕を粉々に砕きながら、停止していた。

シラヌイが振り向くと………。

「「「自重しろ!」」」

と、三人の怒鳴り声が響くのだった。
 
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