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狡猾な魔王

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本編
  幕引き

 
前書き
〆(・ω・。) 

 
《オールマイト(AM)》の本来の姿であるトゥルーフォーム《八木俊典(やぎとしのり)》は骸骨のように痩せ細った体を引き()って【雄英高校】に辿り着く。

其処で見たのは無惨に破壊された校舎。


「な、何だこれは……」


俊典はあまりのことに呆然自失となってその場で膝を着き、へたりこんでしまう。



「やあ。遅かったね」


突然掛けられた声に衝撃を受けた俊典は雄英の状況を後回しにして振り返る。


「……貴様なのか。またしても貴様の仕業だったのか……。一体何度私の大切なものを奪うつもりだオール・フォー・ワンッッ!!!」


睨み付ける先には宿敵、【ヴィラン連合】のボス《オール・フォー・ワン(AFO)》が《死柄木弔(しがらきとむら)》を(ともな)い立っていた。

弔の腕にはオールマイトから、個性【ワン・フォー・オール(OFA)】を受け継いだ《緑谷出久(みどりやいずく)》が抱えられている。


「緑谷少年ッ!!」


既に一日の内でマッスルフォームが使える限界に達した俊典だが、無理をしてAMの姿となりAFOと弔に立ち向かっていく。しかし直ぐに解除されて血を吐き倒れ込んでしまった。


「ハハッ、不様だなぁ。【平和の象徴】、居るだけでヴィランの犯罪を抑止する不動のランキング1位。世界的なヒーローのオールマイトがこんな醜態を(さら)してるなんて傑作だ」


弔は実に楽しそうに、愉快に笑っているが、そんなことはどうでも良い。オールマイトが思わず凝視したのはオール・フォー・ワンの目だ。

とても見覚えが有るそれは───


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「ぐっ……AFO、その赤い目はまさか……!」


《オールマイト(AM)》は雄英高校の同僚で合理性がモットーのプロヒーローを想起する。


「フフ、流石に気付いたかい? そう、君のOFAを止めたのは《イレイザーヘッド》の【抹消】だよ。他にも色々と個性を貰っておいたんだけど、今の君に全てを見せることは無さそうだ」


AFOは雄英高校で【ヴィラン連合】にリストアップされた生徒や講師をしているプロヒーローから【個性】を奪い、満足そうな顔をしていた。

守れなかったことを悔やむオールマイトの苦痛な表情を前に喜びが倍増する。

しかしまだ終わりではない。最後の仕上げが残っているのだ。AMではなく《八木俊典(やぎとしのり)》を悲劇の主人公とする為に。


「弔。御待ちかねの時間だ」


AFOの言葉に《死柄木弔(しがらきとむら)》が歩みでる。


「オールマイト。俺はアンタが嫌いだ。大っ嫌いだ。だから嫌がらせなんてものじゃあ済まさない。殺してもやらない。死ぬより辛い目に()え。俺が世にも綺麗な地平線を作るのを見てろ。お前があのジジイ、《グラントリノ》の所へ行くのはそれからだ」


弔の告知に俊典の心が(えぐ)られた。


(まさか、あのグラントリノとも在ろう方が殺されたというのか……!? もう長いことお会いしていなかったが御健壮(ごけんそう)だとばかり……)


何も知らなかった自分に苛立ち歯軋(はぎし)りする。


「オールマイト。アンタの【ワン・フォー・オール(OFA)】はこのガキが持ってるらしいな。つーことはコイツを殺せば先生とOFAの因縁も無くなるわけだ。今から楽にしてやるよ。アンタも、このガキもな」


弔が《緑谷出久》の首に触れると首から下が音も無く崩れ去り、風に流れる(ちり)となった。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「お疲れ弔。もう良いよ。後は僕がやろう」


AFOが(ねぎら)うと《死柄木弔》はすっきり晴れ晴れした顔で、上機嫌に《黒霧》の【ワープゲート】へと消えていった。


「気分はどうだい?」


出久の頭を手に持つ《八木俊典》の目は虚ろになり焦点が合っていなかった。


「予想以上に効いたようだね。せっかく見付けた後継者をあっさりと(うしな)うのは。でもまだなんだよ。君が本当の意味でヒーローとして立ち上がれなくなるのはここからだ」


俊典は思っていた。

まだ有るのか。もう止めてくれ。

この悪夢から解放してくれと。


《マンダレイ》から奪った【テレパス】で俊典の思考を読んだAFOは小躍りしそうだった。

かつて自分を追い詰めたかつての最強のヒーローが見る影も無くなり弱りきった状態から自分に(ゆる)しを()い、救いを求める。


嗚呼(ああ)……(たま)らないね。ゾクゾクするよ。やはり君は最高だオールマイト! 君の(なげ)きが僕の体を、心を、魂を癒してくれる……)


自分でも、何故こんなにオールマイト(AM)へ執着してしまうのか解らないが、兎に角この宿敵に感謝をしなければならないだろう。


「さっきまで此処に居た死柄木弔はね。子供の頃に僕が救けたんだ。ヒーローは誰も来てくれなかったみたいで絶望していたよ。いやはや偶然っていうのは恐ろしい。まさかあんな形で出逢うとは思っていなかったんだ。君が助けて救い上げていたら大きく違っていた」

「……何が言いたいんだ、AFO」


もう何も聞きたくないと憔悴(しょうすい)しきってしまっていた俊典は力無く尋ねた。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「あのねオールマイト。《死柄木弔》は本当の名前を《志村転弧(しむらてんこ)》って言うんだ。気付いたかもしれないけど、僕が殺した君の師で、君の先代【ワン・フォー・オール(OFA)】継承者だった《志村菜奈(しむらなな)》の実の孫だよ」


俊典はAFOの言葉に青冷めて血の気が引く。


「お師匠の孫……。あの青年が……?」


彼は緑谷出久を手に掛けた。

嘘や出鱈目ということは簡単だ。

しかしAFOなら自分の、オールマイトの嫌がることを全力でやってくることを知っている。

咀嚼(そしゃく)するように噛み砕いてゆっくりと理解した俊典は、自身のヒーローとして張り詰めていた最後の一線がプツリと切れたことを感じた。

続くは声にならない絶叫。

そして涙腺の崩壊。


(お師匠が殺されてしまった夫のようにならないよう、せめて平穏にと自ら手放したお子さん。その血縁がよりによってヴィランに。しかもオール・フォー・ワンの元で成長しているとは……!!!)


ヒーローと言えど人間。

平和の象徴とまで言われているオールマイトでも救えなかった人達は沢山いる。

だがしかし、よりにもよって絶対に取り(こぼ)してはならない相手のことを見逃していたなどとは信じたくなかった。


(折れたね。心を支えていた柱が。既にこの世からOFAも消えた今、君を恐れることは無い)

「これから僕達が創造する世界を見ていると良い。君も存在することを許そう。まあ今の君だと世界が完成する前に死んでしまいそうだけど」


この直後、オールマイトは引退を発表。

雄英高校も壊滅したことが報道され、日本社会は混乱の一途を辿ることとなった。

海外からもヴィランが流入し、犯罪が横行し、プロヒーローが次々と命を落とす。


「新しい異能解放軍も潰したことだし、そろそろアジアを()りに行こうか。最終目標はヴィランとヒーローの本場アメリカだがね」
 
 

 
後書き
本編は一応ここで完結。

この話も次で終わる予定です。

何時もの私みたいに内容は雑でしょうが。 
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