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十三妹

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第一章

                十三妹
 何玉鳳は役人の娘である。背が高くすらりとした身体をしており凛々しい顔立ちである。
 中性的な美貌だがそれでもだ。
 利発でもあり親にも可愛がられている、それで彼女が武芸に興味を持ってもだった。
「世の中何があるかわからない」
「何かと物騒だから」
「武芸も学ぶといい」
「それでいざという時は自分の身を守るといいわ」
 こう言って玉鳳に学問だけでなく武芸も学ばせたが。
 すると武芸の腕をメキメキと上げて彼女の師匠もこう言った。
「見事だ、今のそなたならな」
「はい、腿術にですね」
 足技、それの武芸だ。
「弾弓、拳法、倭刀を学んでいますが」
「どれも見事だ」
 師は今は倭刀を持っている、日本刀のことだ。
「だから今のそなたならな」
「大抵の男にはですか」
「何人いてもだ」
 それでもというのだ。
「勝てる」
「左様ですか」
「うむ、それだけの武芸を修めた」
 それが今の弾鳳だというのだ。
「だから何があってもな」
「安心していいですか」
「油断はならないがな」
 それでもというのだ。
「武芸の腕には絶対の自信を以ていい」
「わかりました」
 弾鳳も頷いた、それで実際に彼女は己の武芸に自信を持ったうえでさらに鍛錬を積んでいった。しかし。
 ある日玉鳳の屋敷に旅人が来た、父は旅人を見て驚いて言った。
「君が来たのか」
「ああ、今は旅をしていてな」
 それでとだ、品のある顔立ちの男で年齢は父と同じ位だ。
「ここに来たか」
「そうだったのか」
「あの、父上」
 玉鳳は旅人を見て父に尋ねた。
「こちらの方は」
「うむ、私の同郷の者でな」
「そうだったのですか」
「名を李卓悟という」
「李卓悟殿ですか」
「そうだ、私は科挙を受けて文の道に進んだが」
「私は武を選んだのだ」
 その李の言葉だ。
「それで武官なのだが」
「今は旅をしておられると言われましたが」
「そうだ、職を休んでな」
「そうしてですか」
「今は気ままな一人旅をしている」
「そうなのですか」
「それで君の父上のことを聞いてな」
 それでというのだ。
「この地に立ち寄ったついでにだ」
「屋敷に来られたのですか」
「そうだ、君の父上も元気そうで何よりだ」
 まさにという返事だった。
「そして立派な娘御だな」
「うむ、特に武芸が素晴らしい」
 父は李に玉鳳のことをさらに話した。 
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