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車とバイク

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第五章

「軽四何台も買えるじゃない」
「らしい例えだね」
「それも気のせいよ、とにかく無茶苦茶高いわね」
「これでもかなり安くなったそうだよ」
「四百万で」
「ハーレーなんかもっと高いから」
「六百万とか一千万よね」
 清里愛は調べた値段をそのまま言った。
「凄いわね」
「趣味だからね」
「趣味にしても凄いわね」
 清里愛は腕を組んでしみじみとして述べた。
「いや、人間趣味には没頭するけれど」
「車だともっと高いじゃない」
「スポーツカーとかね」
 やはり車に例えて言う清里愛だった。
「フェラーリとか凄いけれどね、私はディーノが好きよ」
「イタリア派なんだ」
「第一は国産よ。八条自動車のエイトシリーズ」
 この企業が誇るスポーツカーのシリーズだ、スーパーカーといっていい。
「お値段も良心的、世界のスポーツカーの覇者よ」
「本当に一見さんに見えないよ」
「気のせいよ、とにかく四百万ね」
 サングラスもマスクもそのままだ。
「いや、オートバイって怖いわね」
「怖いかな」
「ええ、ロマンにはお金が必要なのね」
「スポーツカーと一緒でね」
「サーキットの狼なんかそうだしね」
「古い漫画出すね」
「そうかしら、とにかく新型のオートバイは見させてもらったし」 
 清里愛は腕を組んで大地に言った。
「次はサイドカー見せて」
「それだね」
「どれなの?」
「これだけれど」
 別の雛壇のところに飾られていた、銀色にカラーリングされていてかなり重厚な印象を与えるシルエットだ。
「これは六百万だよ」
「やっぱり高いわね」
「だからこれでも良心的な値段だから」
「性能の割には」
「うん、どっちもお空を飛んだり変形したり自動操縦はないけれど」
 特撮の様にというのだ。
「けれどね」
「かなりの高性能なのね」
「日本はバイクも世界一だからね」
「車だけじゃなくて」
「そう、確かに昔よりずっと売れなくなったけれど」
 大地もこのことは否定しない。
「けれどね」
「それでもなのね」
「うん、高性能で」
 それでというのだ。
「値段もこれでもね」
「良心的なのね」
「そうだよ、それでどうかな」
「どっちもいいわね」 
 清里愛は素直に感想を述べた。
「来店した介があったわ」
「じゃあもうお家に戻るんだね」
「明日も学校だしご飯食べてお風呂入って予習しないといけないし」
 何気に学園生活は真面目な清里愛だったりする。
「今日はこれでね」
「これで僕もお店閉めるから」
「明日学校でね」
「そこでそう言ったら本当に一見さんじゃないよ」
 わかっているが合わせる大地だった。
「それでも言うんだね」
「五月蠅いわね、私は只の一見さんよ」
「閉店間際の時間に来た」
「そう、それでわかったわね」
「学校で何て挨拶すればいいのかな」
「私は一見さんよ」
 あくまで片山清里愛ではないというのだ。 
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