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艦隊これくしょん~男艦娘 木曾~

作者:V・B
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第七十六話

 
前書き
どうも、あ、ありのまま今起こったことを話すぜ!弟の「ロアちゃん聞きやがれー」という言葉を聞いて「あぁ、俺もVTuberにハマったらあんな感じなのかなー」とか思いつつ、手元ではアイドル部のMAD動画を漁ってたぜ……な、何を言ってるかわからねーと思うが、アイドル部が最高だということは分かり切っている……早く見るんだ…………。

それはさておき、艦これ六周年、本当におめでとうございます。これからも、一提督として、艦これを愛していきたいと思います。 

 
 二階に戻ってきた俺は、掃除用具入れの後ろに隠れて、二階の様子を探っていた。
 如何せん、缶蹴りを放ったらかしにして阿武隈と絡んでいたから、今がどんな戦況なのか、ひとつも分からない。精々、若葉と冬華が捕まってないってことぐらいだ。
 現在、二階には目立った人影はなく、しんと静まり返っている。俺の周辺には、過去が蹴破った窓ガラスの破片が散らばっていて、中々危ない(軍刀持ってる俺が言うのもなんだが)。

「……誰が残ってんだ?」

 少なくとも、誰も捕まっていない、なんてことは考えられない。俺と冬華と若葉を抜いた五人対、実働五人と指揮官二人が対等なわけない。
 もっとも、誰かが統率力を発揮してれば話は別なのだが……どうにも、マトモな訓練を受けていないみたいだし、そこは期待しない方がいい。最悪、全員捕まっていることも考えておこう。
 
「…………」

 腰に帯刀している軍刀を右手でそっと撫でる。缶蹴りをするという事だったから、いつもの愛刀ではなく、訓練用に持ってきていた、刃を潰してある、ただの鉄の棒のような軍刀だ。
 こいつを使ったら一瞬でカタがつく。これをチラつかせて、怯えてこなかったらそのまま進み、向かってきたら切り捨てればいい。

「……なんて、あんな阿武隈見たら、使う訳にもいかねぇわな」

 俺は軍刀を腰から外し、掃除用具入れにそっと立てかけてる。
 これを身につけて向かってこられたら、どう考えても怖がられる。
 今までは癖で帯刀していたけど、これからは出来るだけ外すようにしておこうと、心に誓った。
 それはさておき、これからどうするかを考えなければならない。

「一人で特攻……するとしても、奇襲みたいに一撃で仕留めないと負けだよなぁ……」

 向こうには、トンデモレーダーの春雨がいる。どれだけ策を練っても、動いただけで看破される。
 相手の処理速度以上の速さで遂行しようとしても、俺は冬華ほどの身体能力はない。
 
「……仲間探そ」

 兎にも角にも、人が居なければ打てる手もない。誰かが生き残っていることを祈ろう。

「…………さ……………き…………さん!」

 すると、どこかで会話をしているような声が聞こえてきた。

「木曾さん!無事だったんですね!」

 見ると、不知火が部屋の一室から出てきて、こちらに小走りでやってきた。

「ああ。お前も無事で何よりだ。ところで不知火、そっちはどうだった?」

 ホッと息を吐いて安堵したところで、不知火に状況を聞く。

「えっと……私が確認した限りですと、山城さん、瑞鳳さんは捕まってしまいました……先程までは、五十鈴さんと一緒に居たのですが、はぐれてしまいまして……」
「……やっぱり、捕まってるやつも出てるよな」

 しかし、一人で戦うことを考えていた俺としては、まだ不知火と五十鈴がいるというだけで、かなり心強い。
 まぁ、不利ってことは変わりないのだが。

「こっちは、若葉と夕立は確認した……が、なんか二人で追いかけっこしてたから戦力外だ」
「……夕立さんならやりかねませんね」

 冷静に考えたら、味方同士で追いかけっこなんて馬鹿な話だが、冬華が居るってだけで説得力が倍増する。出会って一日の不知火ですらこの言い様だ。

「まぁ、それはさておき……取り敢えず、五十鈴や弥生と合流──」
『弥生ちゃん確保ー!残りは、夕立ちゃん、五十鈴ちゃん、不知火ちゃん、若葉ちゃん、そして、木曾さんの五人です!早く捕まえて、木曾さんの手料理食べましょう!!』

 これからの行動指針を話そうとしたら、そんな放送が流れてきて、思わずスピーカーを凝視した。

「……なんだ今の放送」
「え?確保された人を知らせる放送ですよ。聞きませんでしたか?」
「……ああ。一階には流れてなかった」

 どうやら、一階には放送は流されなかったらしい。拓海や春雨の配慮だろう。
 ……まぁ、俺があの場面に集中しすぎていたというのもあるだろうが。

「それはさておき……弥生が捕まったか……早いとこ五十鈴と合流して、その間に作戦考えとこ……」

 できる限り、俺じゃなくて、不知火や五十鈴が主役の作戦にしないとな……と、不知火の顔を見ながら考えていた。




─執務室─



「千尋さんも動き始めました!」
「…………お、やっとか」

 阿武隈と千尋、そして若葉が一堂に会していた状況から、若葉が窓から出ていき二階へ、そのあとを追うようにして、どこからかやってきた冬華も窓から二階へ。そして、千尋が阿武隈に背を向けるようにしてその場を離れていった。

「なんか話し込んでたみたいですけど……何話してたんでしょうか……?」
「……まぁ、僕にとってはあまりよろしくない話だろうなぁ…………」

 僕や千尋に対して敵意丸出しだった若葉だ。千尋に罵詈雑言を吐いていてもおかしくない。
「……あの、拓海さん」
「ん?どうしたの?」

 春雨が地図上の駒を動かしながら、おずおずと僕に声を掛けてきた。

「えっと…………何となくですよ?何となくですけど……若葉ちゃん、似てませんか?」
「誰に?」
「……木曾さんに」

 春雨が木曾の名前を出した時、若干だが、物悲しそうな顔をしていた。

「うん……そうだね。あれは、『魔神』と同類の人間だ。自分の全てを捨てて、他人を護れる人間だ」

 護ることのできる人間なら、腐るほどいる。ただ、その「護る」には、自分も含まれていることが大半だ。
 だが、木曾や若葉、千尋なんかは、自分を捨てきることができる。できてしまう。

「周りからしてみたら、たまったもんじゃないよ。ねぇ?」

 それこそ、大輝さんなんかは、胃の痛くなる思いだっただろう……当然、春雨も。

「……それは、確かにそうです。でも、私は、そんなあの人たちを見て、共感してしまうんです」
「…………?」

 春雨の口から思いもよらないセリフが出てきて、思わず春雨の顔を凝視する。
 そんな春雨の表情は──どこか、羨むようだった。








「あんなふうになれたらなーって、つい思っちゃうんですよ」










 そう言って微笑んだ春雨を見て、ぼくは、背筋に悪寒が走った。
 
 

 
後書き
読んでくれてありがとうございます。さて、今回が平成最後の小説投稿となります。なんだかんだで、この小説もあと二週間ほどで二周年です。途中で色々なことがありましたが、完結までどうぞ、お付き合い下さい。

それでは、また令和。
 
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