| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

悲しい瞳

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第四章

「ギルドの依頼を通じてな」
「ヒポグリフですか」
「そや」
「そんなモンスターこの山にいるかな」
 グレイカスはあらためて言った。
「僕が見た限りだとね」
「いないですね」
「そこが気になるけれど」
「それは私が生み出したモンスターです」 
 女の幽霊はグレイカスに答えた。
「私が死ねばです」
「娘さんがだね」
「どうなるか心配で仕方なく」
「それじゃああのヒポグリフは」
「はい、娘を護り育てる為の」 
 まさにその為のというのだ。
「私の想いが生んだ存在です」
「そうだったんやね」
「はい、娘は村長も村の人達も怨んでいます」
 母と自分を忌み捨てた彼等をというのだ。
「このままではモンスターの力を借りて村に降りて」
「だから村長は冒険者の僕達に依頼を出してだね」
「厄介ごとを消そうとしているのでしょう、どうか娘を止めて下さい」
 女の幽霊はグレイカス達に切実な声で頼んだ。
「宜しくお願いします」
「そんな理由だったんだね」
「まあ胡散臭いと思ってたけど」
 グレイカスもアユも幽霊の言葉を聞いて言った。
「そういうことやな」
「あの村長の考えそうなことだね」
「ほんまにな」
 二人でこうした話をしてだ、幽霊に彼女の娘のことを約束した。すると女の幽霊は一言言って姿を消した。
「お願いします」
「わかったよ」
 グレイカスが応えた、彼はアユと共に洞窟を後にしてその娘を探そうとした。だが二人のその前にだ。
 村の部族の女の服を着たオークの少女がいた、その横には青い羽毛と緑の毛を持つヒポグリフがいた。その羽毛と毛の色からサンダーヒポグリフとわかる。
 少女の目もモンスターの目の幽霊の目と同じだった、グレイカスもアユもその目を見て心を痛めつつ言った。
「これからは僕達に任せてくれるかな」
「そうしてええか?」
「お母さんのお話を聞いたの」
「うん」
 その通りだとだ、グレイカスは少女に答えた。
「そうだよ」
「お母さんは苦しんで死んで私もずっと」
「村長と村の人達のせいでだね」
「だから私はこれから」
「僕でもそうするかもね」 
 少女と同じ立場ならとだ、グレイカスは答えた。
「やっぱり、けれどね」
「したら駄目なの」
「しないかも知れない、そして君は」
「したら駄目なの」
「お母さんが止めたからね、それよりもずっといい方法があるよ」
「復讐よりも」
「それはこれからわかるよ」
 こう少女に言うのだった。
「今からね」
「どうするの」
「一緒に山を降りよう」
「ここは任せてええんやな」
 アユは少女に話すグレイカスに顔を向けて彼に問うた。
「あんたに」
「僕がしたいことをわかってるね」
「ああ、何となくてもな」
 それでもとだ、アユはグレイカスに答えた。
「わかるで」
「じゃあね」
「ここは任せるさかい」
 こう言ってだった、そのうえで。
 グレイカスはアユと共に少女とモンスターを連れて山を降りた、その間他のモンスター達は出なかったが。
 そのことについてだ、グレイカスは少女に言った。
「そのヒポグリフがいたら」
「そうなの、誰も襲って来ないの」
「ヒポグリフも強いからね」
 ドラゴンやグリフォン程ではないが強力な種類のモンスターである。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧