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ある晴れた日に

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207部分:思いも寄らぬこの喜びその七


思いも寄らぬこの喜びその七

「柳本さん達が竹林さんをとても大切に思ってることもね」
「竹林いなかったら大変なことになるかもな」
 正道は咲の顔を見ながら述べた。
「おたく等五人はな」
「正直言ってそういうの考えたことなかったわ」
 実はそうなのだった。
「未晴がいなかったらっていうのは」
「考えたことねえのかよ」
「だって。いつもずっと一緒だったし」
 幼稚園の頃からだ。十年以上の付き合いである。
「何かあったらフォローしてもらったりで。だから」
「それでいないことは考えられないってわけか」
「ええ。咲達の中じゃね」
 やはりそれだけ未晴を頼りにしているということだった。そこにあるのは親友以上のものであった。正道も桐生も言葉には出さないがそれもわかった。
「そうよ」
「いい関係だね」
 桐生はそれを聞いて述べた。
「そういうのって」
「そう思う?」
「うん。あっ」
 桐生はここで教室の前の扉の方を見て声をあげた。
「戻って来たよ」
「あれ、早いわね」
 咲は三人が戻って来たのを見て少し驚いた声をあげた。
「もうって」
「けれどリラックスはしてるみたいだな」
 正道は三人、とりわけ明日夢と凛の顔を見つつ述べた。
「特に中森な。何があったんだ?」
「ああ、成程ね」
 咲は何かがわかったようである。
「あれね。凛あれ大好きだからね」
「大好き!?」
「何が!?」
 しかしそれは正道と桐生にはわからないことだった。二人はいぶかしむ顔になって彼女に対して問うたのであった。この時凛が手に持っているものには気付いていない。
「ほら、あれ」
「あれってよ」
「何かな」
 二人は咲に言われるまま彼女が指差したその凛が手に持っているものに目をやった。するとそれは。
「飴だよな」
「そうだね」
 よくコンビニやスーパーで売られているその飴だった。黒蜜の和風の飴の袋である。この学校の売店でも売られていて生徒達の中では結構人気の商品だ。
「あれがどうかしたのかよ」
「凛ね、飴大好きなのよ」
 咲はこう二人に話した。
「それで。飴にしたのね」
「そうか。あいつ飴好きなのか」
「そういえば中森さん飴結構舐めてるよね」
 桐生は咲の言葉からこのことを思い出した。
「入学した時からね」
「飴舐めてると機嫌が凄いよくなるのよ」
 凛の秘密だった。
「未晴それ渡したんだ。やっぱりわかってるじゃない」
「中森はそれで」
「北乃さんは?」
 見れば明日夢も飴を舐めている。口の中で何かをもごもごさせているからわかる。凛と二人でそうしながら明るい顔をしていた。
「あいつもかよ」
「飴舐めてるね」
「少年も飴好きだったの」
 咲は今度は意外といった顔と声になっていた。
「へえ、そうだったの」
「俺もそれ知らなかったぞ」
「僕も」
 明日夢の好みまではマークしていなかった。しかし明日夢の手にあったのは。星型の様々な色のフルーツキャンデーであった。それであった。
「ああ、そうか」
「それでだね」
 二人はそのキャンデーが星型であるということから全てを察したのだった。
「少年ベイスターズ命だからね」
「だからだね、成程」
「けれど星食べたら駄目なんじゃないの?」
 だが咲は少し真剣な顔で述べるのだった。
 
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