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おかしくなった自然

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第四章

「それを今言われても」
「仕方ないか」
「これから気をつけるということで」 
 大事なことはというのだ。
「ですから」
「ここはか」
「はい、気を取り直して」 
 そのうえでというのだ。
「本来のお仕事に戻りましょう」
「開封の土地神のそれにな」
「そうしましょう」
「ではな」
 土地神も頷いた、そしてだった。
 彼は早速己の仕事に戻った、すると街の異変はすぐに収まり動物も植物も元の大きさに戻った。そのうえでだった。
 塔はすぐに修復作業に入ることになり土地神を祀る廟も設けられた。神が入る廟は郭の提案で一階に設けられて万が一の落雷にも安心出来る様になった。
 こうして全ては終わった、郭はこのことを祝って魯と共に広州の中でもとりわけ有名な飯店に入り。
 大きな海水魚の刺身に揚げもの、そして麺類に蒸し餃子や餅、焼売といった点心を頼み銀の瓶に入れ銀の杯で飲む酒を楽しんだ。
 その中で郭の手にあるものが宿った、それは何かというと。
「凄いものが手に入ったよ」
「杖やな」
「東方朔の杖だよ」
 その一見古ぼけた杖はそうしたものだというのだ。
「史記にも出て来るね」
「神仙伝にも出てたか」
「あの仙人さんの杖で」
「武器になるな」
「これで攻撃すると敵に毒や麻痺や石化を与えられるし」 
 心の中に言ってくる声を聞きつつだ、郭は魯に話した。
「凄い杖だよ」
「そうしたものか」
「東方朔さんは面白い人だったけれど」
 史記では滑稽列伝に名を残す、これは頓智という意味だがそこに東方朔がどういった人物か出ていると言えよう。
「その人のものに相応しくね」
「面白い杖やな」
「うん、それで僕自身も」
 郭は今度は自分自身のことを話した。
「神託を乗り越えてね」
「それでやな」
「その分強くなったよ、全体的に一回りね」
「それは何よりやな」
「よかったよ」
 海水魚の刺身、中華風に香味の強い野菜やナッツ類と混ぜられたそれを食べつつ言った言葉だ。それと共に酒も飲む。
「本当にね」
「そやな、ほなな」
「うん、次はね」
「この世界を救う為にな」
「さらにね」
 まさにと言うのだった。
「次の場所に向かおうね」
「そうしよな」
「このお魚もお酒も全部食べて飲んだら」
 それからとだ、郭は魯に言ってだった。
 また酒を飲んだ、だが既にその心は一歩踏み出していた。次に向かうべきその場所に対して。


おかしくなった自然   完


                    2019・4・21 
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