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大地の指輪

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第三章

「そやな」
「そのつもりでした」
 神官長はハウオファに項垂れた声で答えた。
「そうでしたが」
「それでもやな」
「盗まれたのは事実です」
「いや、厳重なのは事実や」
 自信を喪失している神官長にだ、ハウオファは言葉を返した。
「そのことはな」
「そうでしょうか」
「おらが見てもそれはわかる」
 この神殿の警護が厳重であることはというのだ。
「僧兵が要所を固めてて結界も何重や」
「そのつもりでしたが」
「それは紛れもない事実や、そんな中を簡単に入ってこの神殿の宝を盗んで見付からんうちに去るとかな」
 それはというのだ。
「相当な手練れや、この辺りでそこまでの盗賊は」
「それは」
「一人おるやろ」
「まさか」
「そや、大盗賊マタオイや」
 この者だというのだ。
「星の者に匹敵する位の大盗賊や」
「彼ですが、ですが」
「マタオイは盗賊は盗賊やけどな」
「悪党からしか盗まない」
「言うなら義賊や」
「その義賊がどうして」
 神官長はハウオファに訳がわからないといった顔で述べた。
「この神殿に入ったのでしょうか」
「それはわからん、けどな」
「この神殿に入られるまでになると」
「そや」
 まさにというのだ。
「あの男しかおらん、ほなな」
「マタオイを探してですか」
「あいつに聞く、しかも盗みを働いているのは事実やしな」
 法は法だ、盗み即ち窃盗は許されないことだというのだ。それでハウオファはこうも言ったのである。
「マタオイ探してな」
「彼からですか」
「指輪取り戻すわ」
「そうしてくれますか」
「絶対にな」
 こう言ってだ、そしてだった。
 ハウオファはバイテと共にすぐにマタオイを探した、そしてだった。
 トンガとその周辺を自分達だけでなく警察も軍隊も海洋警察も使った、陸だけでなく空も海も総動員してだ。都にいて全体の政を行っている太宰の協力も得てだった。
 遂にマタオイの居場所を見付け出した、何と灯台下暗しでだった。
 トンガの中心都市であるヌクアロファの下町に潜んでいた、二人は下町のアパートの一室に住んでいる初老の表向きは屋台でラーメンを作って売っている亀人の男のところに来て言った。
「マタオイやな」
「違うって言っても利かないよな」
「大盗賊はこうした時嘘を言うか?」
「大盗賊になると誇りがあるからな」
 男はハウオファに不敵に笑って返した。
「実際にな」
「それやったらほんまのこと言うな」
「ああ、わしは盗みはするが他のことはしないさ」
 一切という返事だった。
「殺しだのはな」
「盗みはすれどか」
「非道はせずってな」
 こう言い切った。
「それを破ったことは一度もないさ」
「それで悪党から以外はやな」
「盗まないのがわしだよ」
「ほな何であの神殿から大地の指輪を盗んだんや」
「あのことか」
 盗賊は自分から言ってきた。 
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