| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ある晴れた日に

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

2部分:序曲その二


序曲その二

「恵美、茜ちゃん」
「んっ!?」
「呼んだ少年」
 今の明日夢の呼び声を聞いてそれまで部屋の端で話をしていた二人の女の子が明日夢の方を見てきた。一人は黒いストレートのロングヘアに大人びたしっかりとした顔立ちの少女で青いブラウスにやはり二人と同じスカートだ。ネクタイやカーディガンの類は着けていない。
 もう一人は黒いポニーテールの女の子で背は普通位だ。にこにこと笑った少し細い顔をしている。明るい感じだ。白いブラウスにネクタイ、それにスカートに似た赤い色のベストだ。二人共明日夢達と同じくスカートの丈はかなり短い。どうやらこの学校の制服のデザインらしい。
「呼んだよ、こっち来て」
「その娘達に挨拶かしら」
 背の高い女の子が明日夢に声をかけてきた。
「そうよ。同じクラスみたい」
「みたいじゃなくてそうだよ」
 春華が明日夢に言う。
「同じクラスじゃねえか。だからここにいるんだろ?」
「それもそうか」
「そうだよ。しかしあんた」
 ここで春華は明日夢に言う。
「仇名少年なんだな」
「そうよ。顔がそんな感じって言われてね」 
 少し面白くなさそうな顔になる明日夢だった。
「塾の先生に名付けられたのよ」
「そうだったのかよ」
「あ、それでね」
 明日夢は自分の横に来たその二人の女の子を手で指し示して語る。まずは背の高い女のを指し示していた。
「安橋恵美ちゃんよ。喫茶店マジシャンレッドの娘さん」
「ああ、あの喫茶店ね」
「時々入るわよね」
「そうそう」
「そういえばあんた達見る顔ね」
 その恵美が春華達を見て明日夢と同じようなことを述べた。
「うちのお店で」
「そういうあんたも」
「何か顔見知りばかり」
「それでね」
 明日夢の説明が続く。
「こっちが高山茜」
「宜しくね」
 ポニーテールの女の子が右手を振って六人に挨拶をする。
「まさか西と東でこんなに固まるなんて思わなかったけれど」
「そうだな。じゃあこっちはな」
「竹森未晴」
 黒い髪をロングにしているが恵美のそれとは違い波だっている。顔は穏やかで物静かな印象を与える。二重の多少切れ長の目は少し垂れ気味で黒く少し細い眉がそれに重なっている。唇は小さく赤い。鼻は高くそれが彼女の顔立ちをさらに印象付けていた。白い顔にそれと同じ白いブラウス、紺のベストに同じ色のリボンである。背もあまり高くなく六人の中では比較的地味な印象を受けるような女の子だった。
「宜しくね」
「ふうん、未晴ね」
「ええ、何かぱっとしない名前だけれど」
「別にそうは思わないよね」
「ええ」
 明日夢と恵美が顔を見合わせて言い合う。
「いい名前じゃないの?」
「私もそう思うわ」
 今度は明日夢と茜が言う。少なくとも三人は彼女の名前にこれといって悪い印象は受けてはいないのであった。紹介はさらに続く。
「柳本咲よ」
 茶色の長い髪をウェーブにさせたあまり背の高くない女の子だった。顎が少し出ているが目や口元ははっきりしていてそれをあまり気にさせない。奇麗というよりは可愛いという感じだ。ブラウスはピンクでリボンもピンクのストライブだ。白いカーディガンを腰で巻いている。
「橋口奈々瀬」
 その咲よりはまだ少し背の高いが顔はずっと幼い感じの女の子だった。眉が薄いのが印象的で髪型は黒髪をボブにしている。白いベストにピンクのブラウスとリボンだ。他のメンバーに比べておどおどとした気弱な印象を与える女の子だった。足がかなり細い。
「遠藤静華っていうの」
 春華と同じ位の背で頬が大きめの童顔の少女だ。エンジのリボンにピンクのブラウスの上から着ている白いカーディガンの上からも胸がはっきりとわかる。髪はおかっぱに近いショートにしていてそれが彼女の童顔をさらに印象強いものにしている。六人の中では太めと言っていい。
「中森凛」
 最後は六人の中で一番背の高い茶髪の少女であった。アーモンド型の目は少し垂れていて口元がいつも笑っている。すらりとした身体をしていてエンジのストライブのリボンにピンクのブラウスを着ていて腰に紺色のカーディガンを巻いている。この六人であった。
「まっ、八条西から来たんだよ。宜しくな」
「ええ、こちらこそ」
 それぞれ東西を代表して春華と明日夢が挨拶を交える。
「宜しくね」
「早速明日スタープラチナ行くからね」
 咲が笑って明日夢に言う。
「宜しくね」
「ええ、楽しみにしてるわよ」
 明日夢もにこりと笑って応える。この辺りは流石に商売人の娘だった。
 女の子達がそれぞれ自己紹介をしている同じ教室で。一人の少年がギターを持っていた。短く揃えた茶髪を立たせている。ブレザーの着こなしはだらしなさを装いいい加減に締められたネクタイからは白地の派手なキャラクターティーシャツが見える。紺色のズボンもかなり下げている。その格好で椅子に座りギターを両手に持っていた。
「御前もうギター持って来てるのかよ」
「ああ」
 黒髪の少年と茶髪の少年の言葉に応える。
「この学校にも軽音楽部あるからな。だからな」
「そうか。じゃあもう今日早速か」
「入部かよ」
「願書は書くぜ」
 それぞれ左右にいる二人に対して述べる。
「っていうかもう書いた」
「また随分と気が早いな」
「あの連中よりもな」
 二人は苦笑いを浮かべつつ教室の真ん中で話を続けている女の子達を見て言うのだった。彼女達は相変わらず明日夢と春華を中心に話をしている。
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧