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【完結】猫娘と化した緑谷出久

作者:炎の剣製
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猫娘と回想、I・アイランド編
  NO.109 回想《14》 終息

 
前書き
更新します。 

 




出久はなんとか鉄柱を破壊して、だがしかしかなりの体力消耗でその場で崩れ落ちる。
しかし、まだ目は諦めていなかった。

「(動け! こんなところで躓いているわけにはいかないだろ!?)」

幸い、身体の傷は自動再生(オートヒール)で治ってきてはいるが、それに反してドレスはもう見るに堪えないほどにボロボロであった。
それでも今はそんな些細なことに等気を回していられるほどに出久は心穏やかではなかった。
見れば血の跡が点々と続いていて、恐らくだがデヴィットが連れ出られてしまった事が状況から伺える。
見れば置いてかれたのかサムは血を流しながら気絶をしていた。
ヴィランに組したといえども、捨て置けないと思い、出久はサムの傷を癒した後に、すぐに後を追っていった。

そして到着した場所は屋上であった。
そこでは手配していたのかヘリが一機すでに起動していて今にも飛び立ちそうであった。
このままでは逃がしてしまう。
でも、ここで出久は自分に有意なアドバンテージを得た。
タワー内部では気にかけないといけない事が沢山あったので使えなかったが、ここでなら使える。

「デヴィット博士、必ず助けます! 猫又、解放!!」

そして出久は5メートルはある巨大な猫の姿へと変化してヘリへと襲い掛かった。


「なっ!? なんだこの化け物は!!」

中からウォルフラムのそんな声が聞こえてくるが現状で10分間という時間制限もあるために出久は構わずにその巨大な手でヘリのプロペラを握りつぶし、怪力でドアをこじ開けて恐怖で顔を引き攣らせているウォルフラム達をよそに中からすぐさまにデヴィット博士の体を握ってすぐさまにその場を離脱した。
ウォルフラム達を倒してからの方が確実性が上がるだろうが、大量出血しているデヴィットの治療が優先としたためである。
巨大な猫の姿で手に握られているデヴィットは、それでも事前にオールマイトから出久の情報を聞いていたために恐怖心はそれほどなかった。

「ありがとう……ミドリヤさん」
「ニャウ!」

今は人語が喋れないために猫の声で返事をした出久であった。
すると屋上の扉からメリッサが遅れてやってきたのを見計らって、出久はすぐにそこに向かう。

「えっ!? この巨大な猫ちゃんは……まさかデクちゃん!?」

メリッサは驚きながらも、デヴィットを地面に下ろした出久はすぐに猫又を解除してもとのドレス姿に戻る。

「やっぱりデクちゃんだったんだね!」
「うん! それより早くデヴィット博士の治療を!」

それで出久はデヴィットの治療を開始したが、ウォルフラムもただでは黙っていない。
デヴィットは奪還されてしまったが、それでも今この手の中にはデヴィットの研究成果が握られている。

「使わせてもらうぜ!!」

すぐさまに取り出して頭へと装着して起動させたウォルフラム。
そしてすぐに異変が起こり出した。
屋上のあらゆる鉄という鉄がウォルフラムの周囲へと集まっていき、次第に巨大な禍々しいなにかへと変貌していく鉄の塊。
そしてウォルフラム自身もその異形物の中へと取り込まれていて上半身だけが顔を出していた。

「はははははは!!!! こいつはいいわ!! 力が、個性が漲ってくるぜぇ!!」
「そんな……ッ!!」

デヴィットの治療を終えた出久はその脅威に顔を青くする。
ウォルフラムはもう逃げられないと悟ったのかすべてを破壊するという手段に移ってしまったのだ。

「どうすれば!!」
「こういう時こそ笑え、緑谷ガール!!」

そんな、頼もしい声が響いてくると同時に下の階層からまるでロケットのようにオールマイトが飛び出してきて、あいさつ代わりにウォルフラムへと拳を構えて、

「スマーッシュ!!」

渾身の拳を浴びせた。
出久達は「やった!」と思った事だろう、しかしその拳は分厚い鉄の壁で防がれていた。

「こんなものか……?」
「なん……だと……?」
「こんなものかぁ、オールマイトォ!!」

まるで笑っているかの如くそう叫ぶウォルフラム。
彼はもう個性を増幅する装置によって半狂乱状態となっており、オールマイトすらも凌ぐパワーを持っている自身に酔いしれていた。
その勢いのままオールマイトの傷がある脇腹へと手を伸ばして一気に握る。

「ガッ!?」
「ここが弱点なんだよなぁ……聞いてるぜ?」
「な、なぜそれを!? まさか!!」
「お? 察したか。そうさ、今回の作戦であのオール・フォー・ワンが手を貸してくれるとは思っていなかったんだぜ?」

そう言いながらもオールマイトの首に手を伸ばしていって、身体をピンク色に変色させていきながらも力を強める。

「グッ……まさか、筋力強化か!」
「ご明察だ。いやぁ……こうしてあんたの苦しむ様を見れるのはいいもんだぜ」

力に酔っているウォルフラムはニヤニヤしながらもどんどんといたぶる様に力を強めていく。

「オールマイトぉ!!」
「トシ!!」
「おじさま!!」

三人がそう叫ぶ。
そんな時だった。

「おらぁ!!」
「ッ!?」

突然の爆破がウォルフラムへと命中する。

「おい、オールマイト!! なにやられてんだよ!!」
「爆豪少年! それに、みんなも……!」

屋上の入り口にはタワー内部で戦っていた1-Aのクラスメイト達が勢ぞろいしていた。

「おいデクゥ!! そこで観戦してないでさっさとオールマイト助けっぞ!!」
「かっちゃん! うん!!」
「緑谷くんと爆豪くんの道は俺達がどうにかしよう! 轟くん、いいな?」
「分かってる。適材適所だ」

ウォルフラムはすぐさまに爆豪達に鉄柱を何度も打ち込むが、それは轟の氷壁で防がれる。
その間を辿って出久と爆豪が駆けていく。
想いは一つ。
オールマイトの救出だ。

「そうかよ……そんなにオールマイトが大事か。なら、くれてやるよ」

なにを思ったのかウォルフラムはオールマイトを空中に投げた。

「なにを!? うぉっ!?」

次の瞬間にはオールマイトを鉄の塊で覆いつくして逃げ場を無くし、そこに特大の鉄柱をぶつけて貫いてしまった。

「トシ!!」
「おじさま!!」

デヴィットとメリッサが叫ぶが、そこで終わるほどヒーロー科……特に出久と爆豪は弱くない。

「デク、いくぞ!!」
「うん、かっちゃん!!」

爆豪は最大級の爆破を、出久は大きく息を吸い込んでハウリングインパクトを放ってそれらはすぐにオールマイトを包んでいた鉄の塊を破壊した。
その中からなんとか無傷のオールマイトの姿が出てくる。

「ゴホゴホ……助かったよ二人とも」
「おらっ立てよオールマイト」
「そうですよ。まだ僕たちは負けていません!」
「そうだな。二人とも、一緒にくれくれるかい?」
「おう!!」
「はい!!」

そして三人はウォルフラムを見据える。

「…………イラつく目をしてるな、てめぇら!! 殺してやるよ!!」
「させない!! 猫又、解放!!」

まだ制限に余裕があった出久はまたしても巨大な猫の姿になる。
そして二人に「乗って!」と首を振る。
オールマイトと爆豪は出久の背中に乗って一気にウォルフラムへと駆けていく。
襲ってくる鉄柱の群れに対しては爆豪の爆破で迎撃して、避けられないものは出久の素早い動きで何度も避けていく。
オールマイトの最大の攻撃は最後まで取っておく算段でもって。

その光景を見ていたクラスメイト達は、

「いっけぇ!!」

お茶子が叫ぶ。

「「オールマイト!!」」

八百万と耳郎が続く。

「「「緑谷(くん)爆豪(くん)!!」」」

飯田、上鳴、峰田が叫ぶ。

「ぶちかませ!!」

最後にいつも冷静だが今回だけは過激にそう叫ぶ轟。
そしてついにウォルフラムの懐まで迫った三人は一気に上空へと跳びあがり、最初に爆豪がつゆ払いとでもいう感じに爆破をかます。

「ぐはっ!!」

動きが鈍ったのを見計らって、

「さらに!」
「にゃぁ(向こうへ)!!」
「「プルスウルトラ!!(にゃあああああ!!)」」

オールマイトはその拳をもって一点突破の一撃を、出久は何倍にもなった大猫の拳をもって100%の高速連打の猛撃を、ウォルフラムへと叩き込んでいく。
さしものウォルフラムも最後の抵抗とばかりに鉄の壁を展開していたが、それをも凌ぐ猛攻を受けて、ついに装置も限界を超えてしまったのかひび割れてウォルフラムは打ち砕かれてしまった。













…………それからすでに時刻は朝になったのか朝日が照らす中で、ウォルフラムはまるでオールマイトのトゥルーフォームかのように副作用なのだろうガリガリの姿となって伸びていた……。

それを見届けるようにデヴィットとオールマイトは今も騒いでいる一同を見ながら、

「トシ……ミドリヤさんに君の姿を何度も見せられたよ」
「そうか。なんせ、私の弟子だからな」

そう自慢げに語るオールマイト。
そう語っている中で、出久はというとついにただでさえボロボロだったのに負荷をかけまくったドレスが上半身が弾けてそのたわわな胸が晒されてしまい、男子勢は鼻血を垂らし、出久は羞恥から子猫姿となって女子勢に守られているという締まらない事になっていたのであった。
















それから翌日になって、I・アイランドは急遽今回企画したI・エキスポは中止と相成ったが、それでも出久達はBBQパーティーを開いていた。
皆が騒いでいる中で、オールマイトと出久は近くで話し合っていた。
デヴィットの罪やらが多くを占めているが、

「僕が、もっとしっかりとしていれば……」
「緑谷ガール……そんな事を考えていても、時は戻らない。それにヒーローを続けていけば、こんな哀しい事件はいくらでもある。私も身を切られるような思いをしたことも何度もあったものだよ」
「…………」
「もし、そういう思いをしたくないというのなら、ヒーロー辞めちゃうか? 辞めちゃうのか……?」


そんなオールマイトの意地悪な問いに、

「やめません!! 僕はなるんです。オールマイトのような笑顔で人を助けられるような最高のヒーローに」
「後悔はないんだな?」
「ありません!」
「それならこの悲しみを乗り越えて進め」
「オールマイト……」
「進み続けるんだ。悲しみを乗り越えて」
「さらに向こうへ!」
「その通りだ。私達はその言葉の意味を知っている」

そして二人は息を合わせるように、

「「さらに向こうへ! プルスウルトラ!!」」

そう叫んだのであった。












出久はそんな回想を終えて、それでも塞ぎこむように身を丸めて、

「(オールマイト……これが身を切られるような思いなんですね……僕にとっては特大すぎます。オールマイトは平気だって言っていたけど、それでも僕は……まだ……)」

それで一滴涙を流す出久。



場所は変わって、一人の少年が出久の家へと走っていた。
この少年の行動が出久が立ち直れるきっかけになれればよいのだが……。

 
 

 
後書き
ようやくI・アイランド編の終了です。
次回から一気にラストスパートを駆けていきたいと思います。 
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