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人徳?いいえモフ徳です。

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四十匹目

王宮の温室に円卓が置かれている。

「なかなかの抱き心地…。クーが気に入るのもわかるな」

「くゅーん」

サロンに招待(というかほぼ強制さんか)された俺はツェツィーリア様…女王様の膝の上に置かれた。

集まったのはツェツィーリア様、クリスティナ様、トレーネ様、お婆様、お母様、ボーデン、センマリカさん、あと公爵家の婦人が三人だ。

要するに、この国における女性権力者達だ。

いったいどんな企みをするんだと言いたくなる。

「今日は色々話す予定だったが、可愛い子狐が居ることだし全力で愛でようじゃないか」

それでいいんですかツェツィーリア様!?

話す予定の内容ってかなり重要な事なんじゃないの!?

つか愛でるって何!?

きゅーきゅーと抗議したが、ツェツィーリア様には伝わらなかった。

なのでお母様達に言ってみるがニコニコ顔で無視された。

ボーデンなんて肩を震わせて笑っている。

酷い奴だ!

「くゅーん…」

仕方無いので大人しくしておく。

で、お茶会なのだが、マジで雑談だった。

どこのお茶が美味しいだとかどこのアクセサリーが綺麗だとか。

「そういえば、狐さんは先程宝石の花をつくってらしたけど、アクセサリーも作れるのかしら?」

そういったのは公爵三家のうち最大の勢力を持つピスト家の婦人だ。

「きゅー!」

もちろんできるとも。

円卓に片手を乗せ、アイテムボックスから出したディアマンタイトと亜鉛と鉄を円卓の上に置く。

まず事前に作例として作っておいたアストラルポーチに入れたボールチェーンを複製する。

その周りに細工を施したカラーディアマンタイトの数珠玉(直径2センチ)を錬成。

完成だ。

毎晩ディアマンタイト製の物を作っているので物凄く効率化されている。

アストラルポーチの効果も大きい。

「きゅー!」

その腕輪をツェツィーリア様に捧げる。

「ほう。見事な出来だな。アルフレッドが絶賛する訳だ」

ツェツィーリア様が腕輪を魔力灯の明かりにかざす。

「この紋様も素晴らしい。簡易的な術式補助具になっている。
これだけで三等地に豪邸が建つな」

え?マジで?

三等地つったら平民が買える土地の最上位だよ?

「玉藻。少しは孫に常識を教えたらどうだ?」

「学園にやれば勝手に覚えるじゃろ」

「こんなものをポンポン作られてたまるか。クー達が持っているナイフや腕輪もそうだ」

「きゅー……」

まずかったのかな?

もしかして賄賂とか思われてたり…?

ちょっとヤバいかも…。

「ツェツィーリア。それに関しては今度シラヌイに教えておくわ」

「頼むぞシェルム」

それはそれとして。公爵三家の人が物欲しそうにしてるんだよなー…。

でもここでツェツィーリア様と同じものを渡すのはまずい。

「うきゅ」

ツェツィーリア様の膝から降りる。

獣化を解除して人型になる。

「ピスト様、アンタレス様、ベテルギウス様」

「あら、どうしました狐さん?」

お三方の席の後ろへ回る。

まず硝子製のトレイを錬成。

トレイの上に先と同じものを、材質をカラーディアマンタイトからルビー、サファイア、エメラルドの三色に変えて錬成する。

色にも意味があるので本当はトパーズとかも使いたかったけど、四大宝石のうち三つを選んだ。

全て色の順列、数珠の大きさは均一だ。

「材質はルビー、サファイア、エメラルドです」

ひざまずき、トレイを捧げる。

「いいの?」

「綺麗ですね」

「ドワーフ製にも劣りませんね…」

お三方が数珠を手に取ったのでトレイをアイテムボックスに収納する。

「お近づきの印です」

礼をして獣化し、ツェツィーリア様の元へ行こうとしたら、隣のクリスティナ様に捕まってしまった。

そのまま膝の上に乗せられた。

「癒されますねぇ…」

「シラヌイ君はぁ~クーのお気に入りですからぁ~」

さらにその隣のトレーネ様も手を伸ばして僕をもふる。

「こゃぁ~ん……」

お腹に手を回されてもふもふされる。

「シラヌイの弱点は耳じゃぞー」

お婆様!?

「エルフの血が流れていますからシラヌイの耳は敏感ですよ」

お母様まで!?

「それはいいことを聞きましたわ」

「ですねぇ~」

ヤバい!

クリスティナ様の膝から飛び降り、ツェツィーリア様の椅子の下を駆けてお婆様の膝に乗る。

「きゅー! きゅー!」

前足で叩いて抗議する。

「おお、すまんすまん」

最後の一押しにエナジードレインを仕掛ける。

が、効果無し。

まぁわかってはいたよ…。

僕とお婆様じゃ太陽と地球ほど力の差があるってさ…。

side out











「お? 寝とるのかシラヌイ?」

「くぅ……」

「もう夜中ですからね」

シェルムがタマモの膝の上のシラヌイをそっと撫でた。

「あら、独り占めはよくありませんわよシェルム様、タマモ様」

アンタレス家の婦人が不満そうに言った。

「それもそうじゃの」

タマモが丸くなって眠るシラヌイを円卓に乗せた。

冬毛でもふもふのシラヌイが円卓の上でスライムのようにぐでぇっとなる。

くぅくぅと寝息を立てて体を上下させる。

暫く眺めた後、タマモがボーデンを呼んだ。

「ボーデン、シラヌイをクーコの所へ連れていってやれ。そのまま帰ってよいぞ」

「いいのですかタマモ様?」

「よい」

ボーデンが至極嬉しそうにシラヌイを抱き上げ、退室した。

「では本題に入ろう」

ツェツィーリアが切り出す。

「話の内容は、さっきまでそこに居た子狐の事だ」

ツェツィーリアが腕輪を掲げる。

「ドワーフにも劣らぬ…否、ドワーフを凌駕する宝石の加工技術だけを取っても彼の者の価値がわかるだろう」

その数珠の魔法陣はひとつひとつの『内部』に『多層的に』描かれている。

「これだけの事ができる奴を私は他に知らぬ」

公爵三家の婦人が有色透明の数珠を見る。

「故に言っておく、シラヌイ・シュリッセルに手を出すな」

「シラヌイはクーコちゃんのお友達ですものね。
氷の女王ツェツィーリアも婆バカですね」

「茶化すなシェルム。お前の息子の事を言っているのだぞ」

「大丈夫ですよ。私は息子を信じてますから」

ツェツィーリアが額に手を当てる。

「これだからシュリッセルは……」

「なんじゃ。儂に文句か?」

「言いたい事は山のように有るが…。手を出すというのは物理的な物だけではない。
ピスト、アンタレス、ベテルギウス。シラヌイを陥れよう等と考えるなと、夫達に伝えておけ」

公爵婦人達が首を縦に振る。

「質問宜しいですか女王陛下」

「どうしたベテルギウス」

「正当な報酬を以て宝石細工を依頼する分には構いませんね?」

「そうだな……ではそれを話し合うとするか」













「遅いわよボーデン!」

「無茶言うなよ姫様」

ボーデンがシラヌイを連れていったのはクーコの私室だった。

「姫様だってサロンの事はしってるだろう?」

「むぅ……そもそもサロンは男性禁制よ」

「それを言ったらここだってそうだろう。いくら子供とはいえ王族の、それ以前に女の私室に男を通すなんてどう取られるかわかってるだろ?」

「ごちゃごちゃうるさいわねー…。さっさとシラヌイを渡しなさい」

「えー……」

「さっきまでシラヌイと居たんでしょ? 今日は私の誕生日なんだから私にシラヌイを独占させなさい」

「しょーがねぇなぁ…」

ボーデンが胸に抱くシラヌイをクーコに渡した。

「じゃぁアタシは帰るぜ」

「泊まって行ってもいいのよ?」

「首が飛ぶっつーの…。シラヌイはシュリッセルだから許されるのであって只の錬金術師にはそんな権利ねーよ」

ひらひらと手を振りながら、ボーデンが出ていった。

その晩クーコはシラヌイを抱き枕にして眠るのだった。 
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