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ロックマンX~Vermilion Warrior~

作者:setuna
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第113話:OMEGA RUIN

モニターの前で立ち尽くすエックス達。

ルインのイレギュラー化は彼らに凄まじい精神的ショックを与えた。

「お、おい…あれが…ルイン…なのか?し、信じられねえ…あいつがあんな冷たい目をするなんて…」

ダグラスの知るルインは明るく優しく面倒見が良いレプリロイドだ。

だからこそ先輩は彼女を可愛がり、後輩は彼女を慕う。

そんな彼女があんな無機質な冷たい目を向けてくるとは思わなかった。

「あいつ、本当に…本当にイレギュラー化しちまったのかよ!?」

「おい、オッサン!!エックス達のことを考えろよ。この馬鹿野郎!!」

「あ…す、すまん」

ルナに怒られてダグラスも謝罪しながら慌ててエックス達を見遣ると、ルインのイレギュラー化にショックを受けている姿があった。

ダグラスよりもずっと彼女との付き合いが長い彼らの前でそんなことを言ってしまったのは確実に失敗だった。

「あいつは確かポイント11F5646に来いと言っていたな…一体あそこに何があると言うんだ…?」

苦々しそうな表情でイレギュラー化したルインが言っていたポイント11F5646について首を傾げた。

「あそこには何もないよ。何もない荒野が広がっているだけさ…強いて言うなら…君達がいたと言う禁断の地に近い場所だが…ただ、あの彼女が何の意味もなく場所を指定するとは考えられないけどね」

流石のゲイトもポイント11F5646をルインが戦いの場に指定した意味が分からず首を傾げるしかない。

「ふむ…確か彼女は地球に向かう前にこう言っていたな。エックスとゼロと戦う前に目障りな屑を片付けると…彼女がエックス達と戦う際に最も目障りになりそうな存在は……」

「…………シグマ!!」

脳裏を過ぎった存在の名前を口にするエイリア。

「なるほどな、確かにルインとエックス達の仲間同士の戦いはシグマの糞ハゲからすれば願ったり叶ったりだ。3人が戦いで弱ったところを攻撃してくることも考えられるしな」

「つまり…ルインは…シグマと!?」

そう言うと、エックスは司令室を飛び出した。

「待てエックス!!」

「シグナス、俺も出撃する!!イレギュラー化した今のルインの実力がどれだけのものかは分からないが、シグマと真っ向から戦ったらいくらあいつでもただでは済まん!!」

ゼロもエックス同様に司令室を飛び出し、ルインが指定したポイント11F5646に向かうのだった。

そしてポイント11F5646には宇宙から戻ってきたルインが周囲を殺気を撒き散らしながら見渡し、ある一点を見据えるとバスターショットを構えてショットを放った。

ショットは途中で何かに阻まれたように掻き消され、そして空間が歪み、そこからシグマが姿を現した。

「ククク、良くぞ気付いたなルイン…まさかお前がゼロと同じ現象を起こして覚醒するとは思わなかったが…」

「現れたなシグマ。エックスとゼロと戦う前のウォーミングアップの相手になってもらうぞ。まだ…この体には慣れてないんでな」

肩を鳴らしながらホルスターからアルティメットセイバーを抜き放ち、禍々しい紫の輝きを放つ光刃を発現させる。

「この私をエックスとゼロの前座扱いか…ふふふ…調子に乗らんことだな小娘」

暗にエックスとゼロの前座扱いをされたシグマも全身からエネルギーを迸らせる。

「ふん、たかが出来損ないのエックスの劣化コピー風情が。まあいい、格の違いという物を思い知らせてやろうシグマよ。私の全てを破壊する力を以て今一度お前の恐怖の悲鳴と言う極上の調べを聞かせてもらうとしようか」

そして次の瞬間、弾かれたように飛び出したルインとシグマは、電光石火で互いにセイバーとウィルスを纏わせた拳を振り下ろし激しくぶつかり合ったのである。

「ふん、セイバーでは少し分かり辛いな」

ルインはそう言うと、セイバーをホルスターに戻すと拳を構えた。

「この私に素手で挑むか!?思い上がるのも大概にするのだな!!」

「その素手に劣勢になったのは貴様だろう?」

嘲笑しながらシグマの拳に自身の拳をぶつけるルイン。
やはり体格の差か、ルインは勢い良く吹き飛ばされてしまう。

「ふん、力の差を弁えぬ愚か者が」

「ほう、ハンター時代よりは多少はマシになったな。立派な武器を持ちながら鉄パイプに劣勢になった時に比べればだが」

体の汚れを払い、乱れた髪を手で整えながらシグマを嘲笑しつつ言い放った。

「貴様…ゼロから私の話を聞いたのかどうかは知らんが、調子に乗っていられるのも今のうちだ。この私の究極の力の真骨頂を今こそ見よ!!」

歯噛みしながらシグマは更にエネルギーを解放し、より高密度のウィルスを拳に纏わせながらルインに殴り掛かる。

同時にルインと笑みを浮かべたままアースクラッシュの拳をシグマに繰り出し、再び拳が激突した。

今度は力負けせず拮抗する。

「……むっ!?」

「どうしたシグマ?この程度ではつまらんぞ?」

微笑を浮かべるルインにシグマは忌々しげに睨むと空いている片手を翳した。

「ヘルスパーク!!」

「ほう?」

掌から放たれた光弾をまともに受けるがルインはダメージを物ともしない。

「はああああ…!!」

距離を取り、ヘルスパークの光弾を連続で放つシグマ。

「アースクラッシュ!!」

シグマの光弾をアースクラッシュで粉砕する。

アースクラッシュはそのままシグマに向かっていくが、シグマも易々と当たってはくれず、避けられてしまう。

そしてシグマはワープでルインの背後を取ると、ウィルスを纏わせた拳で殴り掛かるが、ルインに片手で受け止められる。

「何!?」

「ワープで背後を取るなんて小賢しい手が私に通用すると思うか?ふんっ!!」

空いている腕を動かし、ルインはシグマの顔面に強烈なチャージナックルの裏拳を叩き込む。

「ぐはあ!?」

まともに裏拳を受けたシグマは勢い良く吹き飛ばされ、瓦礫に激突した。

「シグマ。貴様に対するせめてもの慈悲だ。貴様の時代はあの時に終わりを告げたことを今こそ思い知らせてやろう」

「ぬう…ほざけ!!」

シグマがルインに凄まじい拳の乱打を繰り出すが、ルインは既にシグマの動きを見切っているのかシグマの拳を易々と回避していく。

「どうしたシグマ?下手な鉄砲より酷いのではないのか?」

「な、何故当たらんのだ!?」

フェイントまで組み合わせて拳を繰り出しているのに、ルインには当たらない。

「貴様はあの時、何に恐れた?」

「な、何?」

「貴様はあの時、驚異的な学習機能を最も脅威に感じたはずだ。戦いの時間が長引く度に徐々に攻撃が洗練されていき、徐々に追い詰められていくことにな。」

「だ、黙れ!知ったような口を!!」

ルインを黙らせようと至近距離での衝撃波を放つ技、ヘルブレイドを放とうとするが、ルインは一気に加速し、シグマの左腕を吹き飛ばした。

「が…ぐ…ああ…!!」

傷口を押さえるシグマ。

自己再生能力で腕を戻そうとするが何も起こらない。

「ふん、これで吹き飛ばした腕がサーベルを握っていれば当時の完全再現だったなシグマ?」

「ぬうう…な、何故再生が…」

「貴様の体内のシグマウィルスは私が支配権を奪ってコントロールした。だから再生が出来ない…まあ当然のことだな。貴様のシグマウィルスなど所詮は私のロボット破壊プログラムの派生種。エックスの劣化コピーの体内で作り出された劣化ウィルスがオリジナルに勝てると思うのか?」

「き、貴様のプログラム…だと?何をふざけたことを…貴様もロボット破壊プログラムを持っているのは驚いた…私のシグマウィルスは確かにロボット破壊プログラムが原型だ…だが、私が受けたのは貴様ではなくゼロからだ!!」

「まだ分からないのか?私もまたゼロだ。」

「何…?」

「いや、紅いイレギュラー時代のゼロと言った方が分かりやすいか…これだけ当時と同じ状況を作り出してやっているのに気付かないとは…所詮は劣化コピーだな。いや、それとも当時の恐怖を思い出したくないだけか?」

「な……」

シグマはルインを凝視した。

エネルギー反応だけでなくルインの放つ気配は確かに…イレギュラー時代のゼロそのものだった。

「さて、シグマウィルスの再生能力を失った貴様はどれだけ保つのかな…?あの時はプログラムが誤作動を起こしたことで半端に終わったが…今度は最後まで楽しませてもらうぞ?」

「う…ああ…」

当時の恐怖が完全に蘇り、シグマは身動き1つ取れずにルインの圧倒的な力に飲まれようとしていた。

一方エックスとゼロもルインに指定されたポイントに到着し、ルインを捜していた。

万が一に備えてエックスはフォースアーマーを身に纏いながら周囲を見渡す。

「ゼロ、見つけたか?」

「いや…シグマウィルスはルインが全て吸収したことで殆ど無くなっている。動きやすくはなったが、こういう時に不便になるな…」

あまり使いたくはないが、シグマウィルスを使って感覚機能を強化すればもっと容易くルインを捜せるのだが。

「どうして…こんなことに…」

悲痛な表情を浮かべるエックスに今回ばかりは何も言えないゼロ。

流石の彼も今回のルインのイレギュラー化は相当堪えているようだ。

「ぐあああああああっっ!!!!」

「「シグ…マ!?」」

聞いたことがない恐怖が入り雑じったシグマの悲鳴に嫌な予感を覚えたエックスとゼロは急いで悲鳴が聞こえた方角を駆ける。

「ぐああっ!!がはあっ!!」

「ふふふ、良いぞ…良いぞシグマ…お前の悲鳴はとても心地の良い極上の調べだ。もっと私に聞かせてくれ」

恍惚の表情を浮かべてシグマを一方的に殴り、蹴りつけて痛め付けるルイン。

その気になればシグマを何時でも殺せるはずなのにわざわざ痛め付ける選択をした。

「あ、悪魔め……」

殴り飛ばされたうつ伏せに倒れるシグマが息を切らしながらルインに言い放った。

「ふふふ、そろそろとどめを刺してやろうか…」

拳に凄まじいエネルギーを収束させてシグマに狙いを定めるルインに対してシグマは屈辱に顔を歪めながらルインを睨むことしか出来なかった。

「裂光…」

「ルイン!!」

「ん?」

声に反応して向こうを見遣ると信じられない表情でルインと倒れ伏しているシグマを見つめるエックスとゼロの姿があった。

エックスは目の前のあまりにも信じられない光景に目を見開く。

ルインは全くダメージを受けていないにも関わらず、シグマは息絶え絶えでいつ機能停止してもおかしくない状態である。

OXアーマーを纏ったルインの性能の凄まじさは知っているが、しかしシグマは常に強大な力を誇り、アルティメットアーマーを以てしても苦戦は免れない相手だ。

実際にレプリフォース大戦の時もアルティメットアーマー、ブラックゼロ、OXアーマーのエックス達を相手に互角以上の戦いを演じたシグマはいくらあれから訓練と実戦を積んでレベルアップしてきたルインでも簡単に勝てる相手ではない。

「来たか、エックス。そしてゼロ」

モニターで見た時よりもいくらか感情が感じられる表情と声だが、しかし今の彼女は自分達の知るルインとは違い過ぎた。

「君は…君はルイン…だよな…?」

僅かな可能性に縋る思いでエックスはルインに尋ねる。

「………ルインか…この体の本来の持ち主がルインならそう呼べるかもしれないな。エックス、私のエネルギー反応と気配を感じてみろ。お前の知るルインと同じに感じるのか?」

「………違う。君から感じるエネルギー反応も気配も俺達の知るルインとは全く別物だ。寧ろ君から感じるこの気配は……」

「俺…?だが、凄まじい邪悪を感じる…」

「正解だゼロ。私とお前は…」

「ぬ…うう…!!」

ルインが微笑みを浮かべながら答えようとした時、シグマが憤怒の形相を浮かべてルインを睨む。

「ルイン!!」

「ん?」

「死ね、ルイン!!ヘルブレイド!!」

瀕死のシグマがルインを殺そうと全身全霊の力を込めた一撃を繰り出すがルインに当たる直前で掻き消えた。

「な…!?」

「残念だったなシグマ。お前の攻撃は一切私には通用しない」

冷淡に言うとルインはシグマの顎を蹴り飛ばし、瓦礫にシグマの体を叩き付けた。

「ぐはあ…っ!!」

「いい加減に学習したらどうだ?貴様の天下は私のいた爺の研究所で私に実質的に敗北した時に終わってるんだ。」

シグマの頭を踏みつけながら蔑みながら言い放つルインを屈辱に身を震わせながら睨むシグマ。

「ぐっ…ルイン…貴様は先程、貴様もまたゼロと言っていたな……やはり貴様はゼロの兄妹型なのか…?」

協力者であるあの老人からはゼロが最後の作品だと聞いていたが、自分に教えていない可能性もあると考えたシグマは可能性が高そうな兄妹説を出してみる。

「兄妹ではない。この姿となったルインが今の私の状態になると私はゼロ…正確には使命を果たそうとしたイレギュラー時代のゼロと同一の存在になる。」

「な、何だと?あの老人からはそんな存在…」

「あの爺は私のことなど知らない。私は本来ならあり得ない存在だ。シグマウィルスやこのアーマーの特異性などが偶然が合わさって誕生したから…な。まあいい、私がゼロと同一というのは貴様もその身で充分味わったろう?あの時の殆どの再現をしてやったからな…そして貴様にまたあの恐怖も…」

「ぐっ…確かに貴様もまたゼロだと言うのは認めざるを得ないようだ…だが、調子に乗るなルイン!!確かに今の私では勝てんが…私にも切り札が…」

「切り札とはあの爺があのガンマをベースにシグマウィルスに適合させたファイナルシグマWのことか?なら止めておくことだ。シグマウィルスの支配権を私に奪われている状態でやっても何も出来ずに攻撃の的になるだけだ。試してみるか?」

「ぬうう!!その自惚れを後悔するがいい!!」

シグマが全身からシグマウィルスを解放し、体を凄まじい巨体を誇る姿に変える。

その姿にエックスとゼロは圧倒されてしまうが、ルインは涼しい表情を崩さない。

「終わりだ!!」

ファイナルシグマWとしての全武装、攻撃手段を持ってルインを消し去ろうとしたが、ルインが一睨みしただけで、ウィルスとなって掻き消えた。

「何!?馬鹿な…」

「だから言ったろう止めておけと、もう二度と蘇らないよう、貴様のシグマウィルスは消去させてもらう。はああああ!!!」

裂光覇のエネルギーを纏わせた拳をシグマの額にめり込ませ、体内のシグマウィルスを消去していく。

「ぐあああああああっっ!!!!わ、私のプログラムが…消え…」

シグマの本体となるシグマウィルスが消去されたことでファイナルシグマWは機能停止し、そのまま音を立てて崩れた。

「シグマ…が…」

何度も蘇り、世界を混沌の渦に叩き込んできた悪魔にしてはあまりにも呆気なさ過ぎる最期にエックスは信じられない気持ちで一杯になる。

「さてと、もうシグマのお陰で分かったと思うが、私はかつて紅いイレギュラーと呼ばれていたゼロと同一の存在だ。ゼロ、お前なら分かるのではないのか?仮の人格の貴様でも本能でな」

「仮の…人格…だと?」

「そうだ、貴様はシグマとの戦闘で戦闘不能にされた際に貴様自身がロボット破壊プログラムに感染したことで生み出された仮の人格。貴様の本来の人格は私と同じように破壊衝動に従い全てを破壊することを目的とするんだ。このようにな!!」

拳を地面に叩き付け、まだ原形を残した建物にアースクラッシュを叩き込み、跡形もなく粉砕した。

「止めろ!!止めてくれルイン!!」

「なら、力ずくで私を止めてみるのだな。どうだゼロ?これがお前の本性だ。私と同じな」

「…黙れ……」

「何故だ?さっきの私の行動にはお前は何の疑問も抱いていないだろう?」

「……っ」

図星を突かれてゼロは沈黙する。

「…ロボット破壊プログラムとは何なんだ?」

「ふむ、まあ…教えても良いだろう。ロボット破壊プログラムとはシグマウィルスの原型であり、今の私とゼロに搭載されている爺製のロボット…今で言うレプリロイド以外の存在の破壊衝動を暴走させ、かつそのプログラム及び組み込まれたレプリロイドの意識を半不滅的なコンピュータウィルスにするシステムだ」

「それが俺に搭載されている…だと…?俺がそれによって作られた仮の人格…シグマのイレギュラー化は…シグマウィルスが生まれた原因は…俺が…」

信じたくないのに何故かルインの言葉はゼロを納得させる力があった。

今までの自身のアイデンティティが崩壊し、ゼロの体から力が抜けようとした瞬間、エックスがゼロの肩に手を置いた。

「ゼロ!!」

「っ!!」

「しっかりするんだゼロ!!俺達にとっては君がゼロなんだ!!君が君として生きてきた時間には何の偽りもない!!」

「だが…シグマは…」

「シグマに関しては同情する必要はないと思うがな。こいつは私達を超える目的で寧ろ自らロボット破壊プログラムに身を委ねていた節すらあったからな。身の程知らずにも……それにこいつのイレギュラー化はエックス…貴様の劣化コピーである時点で逃れられない運命だ」

「シグマが…俺のコピー…!?」

「シグマだけではない。私とゼロや一部を除いたレプリロイド達はエックスの設計思想をケインの爺が流用したことで生まれたロボット達だ。システムの存在もあるとは言え、エックスがDNAデータをバスターの端子に組み込み、バスター内の予備の武器チップにインストールすることで何の負担も制約もなく特殊武器を使えるのもそれが理由だ」

「レプリロイドは…俺の設計を基に造られたのか…そう言えばシグマも最初の戦いの時にも言っていたな…」

ルインの言葉に思わず納得したエックスは腕のバスターを見つめた。

「(道理で、ケイン博士やライト博士が俺にレプリロイドの誕生に関することを教えてくれないわけだ)」

自分が特殊武器を使えるのはルインが言う通り、システムの存在だけでなく他のレプリロイド達の武器の基礎設計が同じだったからなのだ。

「かつて、100年前に悪の科学者、Dr.ワイリーと正義の科学者、Dr.ライト製の思考型ロボットによる戦いがあった。争いは永きに渡ったが幸いにして世界が崩壊する前にその幕を閉じた…。そう言う黒い歴史の存在から爺がレプリロイドを開発するまでは、思考型ロボットの開発は永く停滞していた。若い頃の爺はDr.ライトの研究所で眠っていたエックスを自身の研究所に連れて帰った。因みに現在使われているエネルゲン水晶が発見されたのも爺がエックスを発見した時だ…Dr.ライトの研究所はエネルゲン水晶の鉱脈の真上にあったから100年と言う歳月を経ても研究所のシステムは稼働していた。爺はそれを新エネルギーとして世界に発表。新時代のエネルギー創始者と言う立場と財力を手に入れ、それを利用してエックスの研究を始めた。爺の研究の過程は省かせてもらうが…いいな?エックス、ゼロ?」

「え?あ、ああ…」

「…続けてくれ」

尋ねてきたルインに、エックス達は虚を突かれながらも頷いた。

イレギュラー化して存在がゼロなのかルインなのか分からない曖昧な存在になってもこう言う妙なところでルインとしての要素を感じさせる。

「爺は17年と言う長い歳月をかけてようやくエックスの設計の約8割程度の解析に成功し、理解出来るようになった。」

「17年…!?」

あのケインが自分の設計の約8割を解析、理解するのに17年もの歳月がかかったことに目を見開く。

「爺がエックスの解析にそこまでかかったのは主に頭脳の解析のためだ。“心のプログラム”…Dr.ライトの残したデータにはエックスの頭脳プログラムの全データはあったのだが、その内容はあまりにも異常でな。どのような視点で見ようとも解読不可能な暗号状態になっていたんだ。膨大過ぎるデータ量に複雑過ぎるサブルーチン。何億、何十億と言う特殊な想定事項が基礎構造を覆い隠してしまい、これが爺の頭を悩ませることになったんだ。それでも爺は解析出来ない部分を自身が独自に開発したもので補い、人型レプリロイドのプロトタイプとなるアルファを開発した。」

「アルファが…」

「しかし、そこでエックスの頭脳プログラムの解析が不完全であったが故にある事態が発生した。人間的思考回路のバグによって発生する…お前達の良く知るイレギュラー化だ。エックスがイレギュラー化しないのはDr.ライトによって完璧な人間的思考とウィルスに対するプロテクトプログラムを得ているからだ。流石…と言うべきかな?…ここまで話せば分かるだろう?シグマは人類に対して不信感や憎悪を持っていた。例えゼロのプログラムに感染しなくとも勝手にイレギュラーになっていたろうよ」

ファイナルシグマWの残骸を踏み砕きながらルインは嘲笑うように言う。

「………」

その姿にエックスは複雑な思いで見つめていた。

もしルインの言う通り、シグマのイレギュラー化は防げなかったのだとしても、やるせなさを感じた。

ある意味シグマはこの世界に最も振り回された存在と言っても過言ではないのだから。

「さて、歴史の勉強時間は終わりだ…そろそろ始めるとしよう。ゼロが使命を果たさないと言うのならもう1人のゼロである私が使命を果たす。エックス、貴様を殺し、この世界に存在する全てを無に帰すためにな」

それを聞いたエックスとゼロが動揺する。

「止めてくれルイン!俺は…俺達は…君と戦いたくはないんだ!!」

「そうか、なら無抵抗のまま果てるんだな。甘ったれた感情を抱いたまま!!ダブルアースクラッシュ!!!」

一切の容赦もなく、ルインはエックス達に向けてダブルアースクラッシュを繰り出す。

2つの衝撃波がエックスとゼロに迫り、直撃したものの…。

「ガイアアーマーか。確かパワーと防御力に特化したアーマーだったな。なるほど、あのDr.ライトが防御を追求しただけあって大した防御力だ。」

微笑んだルインの前にはフォースアーマーからガイアアーマーに換装してゼロの前に立ち、両腕を交差してダブルアースクラッシュを凌いだエックスの姿があった。

「………単発の威力は私の技の威力で低い方とは言え、ダブルアースクラッシュを易々と防ぐとはな。なら、これならどうかな?滅閃光っ!!!」

単発の威力はアースクラッシュを上回る滅閃光をエックスに繰り出すが、エックスは歯軋りしてバスターを構えた。

「ガイアチャージショット!!」

滅閃光のエネルギー弾を簡単に消し去り、それはルインにそのまま直撃する。

「くっ……」

咄嗟に防御したが、あまりの威力に腕が痺れた。

「ルイン…もう止めてくれ…元の君に…正気に戻ってくれ……」

悲痛な表情で言うエックスにルインは無言で首を横に振る。

「無理だな、ルインの意識は私にある程度の影響を与えてはいるが。私の中で眠っている…コロニーの爆発による度重なる再生と破壊により、精神的にも深刻なダメージを負っている奴に私を押さえ込む力などない。どうしても止めたいなら私を倒すんだな……よし、大分体が温まってきた。ウォーミングアップは終わりだ。真の力の一端をお前達に見せてやる。」

エックスの視界からルインの姿が消えた。

「なっ!?消え…うわっ!?」

一瞬でエックスの真横を取り、足払いをかけてエックスを転倒させるとダブルアースクラッシュを叩き込んで瓦礫に叩き付けた。

「エックス!!」

エックスがあっという間にやられてしまったことにゼロは驚愕で目を見開いた。

「う…ぐ…」

ルイン「ガイアアーマーは歴代の強化アーマーと違って凄まじい重量を持つことから機動性を著しく損ねる。機動性に優れたファルコンアーマーとの連携を前提に造られたアーマーなら仕方ないのだがな…」

瓦礫の生き埋めになったエックスを冷たく見据えながら、ルインはアルティメットセイバーの光刃をゼロに向ける。

「さて、使命を忘れたもう1人のゼロ…私を楽しませてくれよ?」

「………くそっ」

大事な後輩と戦うと言うことに、胸の辺りに絶え間なく感じる痛みにゼロは歯軋りしながらZセイバーを構えた。 
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