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東方英雄戦線録

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仮初の英雄

青い空、白い雲…
そして、見渡す限りの青い海!
私は魔導師学校を卒業し、新たな特異点を調査する通称秩序を調律する者(フェイト・チュリンダー・オーダーズ)として、とある島を目指していた。
なんでも、数年前に突如として現れ、陽の光を一切通さない赤い霧や、天に浮く逆さ城が観測されるなど、異常な現象が起きている場所のようだ。
私はまだサーヴァントを持ってないが、大丈夫なのだろうか…

「すみません。やはり、私もサーヴァントを召喚した方が良いのでは?」

私は恐る恐る上官である男性に声をかける。

「んや、今は特にやめておけ。あの島に何があるかわかんねぇからな。」
「失礼ながら、私もアレス…じゃなくて、マスターのおっしゃる通り、雪風(ユキカ)が今サーヴァントを召喚するのはおすすめしません。海の上は不安定ですし…」

アレスと呼ばれた男性のサーヴァントのセイバーが黄金の髪を揺らしながら言う。

「むぅ…て言うか、貴方が私のサーヴァントになれば良いんじゃない?」
「ダメですよ。私はマスターと契約してサーヴァントとして現界しているのですから…」
「ちぇっ…つまんないなぁ…」

そんな呑気な会話をしていると目の前から黒い物体がふよふよと漂って来てるのを発見し、戦闘態勢をとる。
黒い物体は私たちの船の上にゆっくりと落ちていく。
私はその物体を確かめようと近寄る。

「それ以上近寄っちゃダメっ!」

少女の声が聞こえたかと思えば、黒い物体は闇を晴らして襲いかかって来た。
私は咄嗟のことで目を瞑り、魔障壁を精製した。

「がはっ!」

私の体が軽く吹っ飛ぶ。
闇から現れた金髪の少女が言う。

「オマエ…食ベル…私ノ…血トナリ…肉トナレッ!」
「させないわ!キャッチアンドローズ!」

ズガガガガと凄まじい音と衝撃が発生し、青い薔薇が金髪の少女を突き飛ばす。

「君、私と契約してくれない?どうも、私一人だとこの身体が消えちゃうみたいなの!」

緑色の髪の少女が私に切羽詰まった様に言う。
私は彼女の問いに疑問を感じて言う。

「契約…?貴方はサーヴァントなのですか?」
「サーヴァントが何かはわからないけど、多分それで正解よ。とある所の英雄さんがあいつらと戦う力をくれたからね。仮初の英雄(アリス・サーヴァント)?とか言う力をくれたのよ。」
「仮初の英雄だって?!そんなの俺たちの知る限り成功例は無いんだけど?!」

先程、少女が突き飛ばした金髪の少女が闇を纏いながらものすごい速さでこちらに向かってくる。

「そんな事はどうでもいい!早く、私のマスターになって!私の魔力に貴方の魔力を結合するだけで良いわ!」

消えそうな身体で少女が薔薇の短剣を構える。
私は少女の肩に左手を置いて言う。

「ならば、私が貴方のマスターとして指示を出します。貴方の力…存分に奮ってください!」

私は置いた左手から魔力を流し、魔力を結びつける。
左手に令呪が浮かび上がる。
そして、少女はしっかりとした身体で言う。

「了解!サーヴァント、バーサーカー!敵を倒すね!」

そう言うと先程よりも格段にパワーアップした者である脚力で宙を舞うかのように私たちの船に近寄る闇を切る。
闇はその一撃で晴れたが、金髪の少女にはダメージはないようだった。
金髪の少女が敵と認識したバーサーカーを目掛けて一直線に突撃する。
船の一歩先、海上で凄まじい戦いが繰り広げられていた。

「くらえ!スーパーエゴ!」
「ガアアア!」

バーサーカーのハートの弾丸の様な攻撃で金髪の少女が苦しそうに藻掻く。

「効カヌ…邪符…ムーンライトレイ!」

金髪の少女が極太のレーザーの様な攻撃を放つ。
バーサーカーは避ける素振りも見せずに力を貯めていた。

「有するもの、我に力を貸せ!我が本能のままに全てを無に返せ!宝具発動!全てを焼き焦がす炎龍の神炎を纏いて時よ(アポカリプスシール)!」

バーサーカーの燃え盛る炎の宝具によって少女の攻撃が完全に焼き消される。
そして、バーサーカーはそのまま一気に少女に突撃する!

「ガアアアアアア!」

少女が焼け付く炎に焼かれて海に落ちる。
バーサーカーは落ちた少女を追って、海へと消える。
私は船の先で身を乗り出す。

「バーサーカー!」

私の声が虚しく海上に響く。
しばらくの沈黙の後、黒い何かが空へと消えていった。
直後に先程の少女を抱えてバーサーカーが船の上に降り立つ。

「良かった…ちゃんと生きてたのね…」
「あはは!私があの程度で死ぬわけないじゃん!仮初の英雄とは言え、サーヴァントなんだからさ。」

上官である男性…アレスが少女の前に傅いて言う。

「先程は我々をお救いいただきありがとうございます。私は時空管理局:ルナフォルテのアレス・ストレアと申します。」
「私はアレスのサーヴァントのセイバーです。」

少女は楽しそうに笑いながら言う。

「うん!よろしく!さっきも言ったけど、私はバーサーカーだよ!ところでマスターは名前で呼ばれるのと関係で呼ばれるのどっちが好きなの?」
「私はどちらでもいいですが…」
「じゃあ、雪ちゃんって呼ぶね!よろしく雪ちゃん!」
「は、はい!よろしくお願いします!」

そんな少女達を置いて、世界が静かに狂い始めてる事に誰も気づかないでいた…



〜地点XX〜

私は静かに空を見上げて呟くように言う。

「今日は珍しく来客が多いわね…」
「GOAAAAAAAAAA!」

私は振り向き、お祓い棒を構える。
傍に見慣れない弓を持った男が現れる。

「そういう訳だから、アーチャーも手伝いなさいよね。」
「あぁ…バーサーカー相手だが、やるだけやってやるさ。」
「GAOOOOOOOOOOOOOO!」

凄まじい雄叫びとともに全力で振り下ろされる大剣を避ける。

「封魔針!はあっ!」
「ふん!」

私の針とアーチャーの弓は雄叫びをあげるあいつには効いてないようだった。

「これは一筋縄じゃいかないわね…」

私は霊力の量を少し増やす。

「これならどうかしら?」

少女たちの戦いが始まりを告げる。 
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