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ロックマンX~Vermilion Warrior~

作者:setuna
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第108話:Jungle Maze

レプリフォースの極秘施設に辿り着いたルインは辺りを見回した。

「ここが、オービターエンジンのあるレプリフォースの極秘施設…何か前に本で見たジャングルみたい……」

シグマウィルスにより気象管理ユニットが暴走し、植物が機械を覆い隠すほどに成長している。

現在では全く自然の環境など存在せず、自然を未来に残すために造られた半分機械の人工植物しか今の地球にはない。

「この極秘施設の何処かにいる正体不明のレプリロイド…ローズレッド…か……」

薔薇を1本抜き、その美しさと香りに顔を綻ばせた。

ルインはZXセイバーを抜き放つとチャージし、そしてルインに向かって来るイレギュラーに対して振り下ろした。

「はああああっ!!」

チャージセイバーによる衝撃波に飲まれ、イレギュラーは爆散した。

オーバードライブを駆使し、エネルギーを全開にしつつジャングルの中を突き進む。

これまで数多くの犠牲を乗り越えながらルインはここまで生きてきた。

戦いの犠牲者達が眠る場所…敵味方を含め数多くの犠牲の果てに守り続けてきたこの世界。

シグマの姦計などで滅ぼしてしまっては、彼らに合わせる顔もないのだ。

そんなルインの行く手を阻むのは例によってシグマウィルスに感染したことでイレギュラー化したレプリロイドやメカニロイド。

中にはあの戦いで滅んだはずのレプリフォース兵士達の姿もあった。

そんな彼らを斬り伏せながら進むのはやはり辛いものがあったがルインは耐えに耐えつつ先へ進む。

『ルイン…』

「え…?」

聞き覚えがある声に足を止めるとライト博士のカプセルがあった。

「ライト博士…」

『急いでいるところを申し訳ない。エックスに渡して欲しい物があるのじゃ。』

「エックスに?」

『うむ、ファルコンアーマーと対を為すアーマー、ガイアアーマーのアーマープログラムじゃ。ルイン、これからもエックスと共に戦って欲しい。あの子を支えてほしいのじゃ…』

そう言ってライト博士はルインに向かって深々と頭を下げる。

そんな彼を真っ直ぐに見据えルインは力強く答えた。

「はい、ライト博士…博士に言われなくても…私はエックスを支え続けます…えっと…その…大切な人だから……」

赤面しながら言うルインに満足そうに頷くライト博士がルインに手渡すのはガイアアーマーのフットパーツプログラムである。

『このカプセルで与えるのはフットパーツじゃ。ガイアアーマーのフットパーツは今までのアーマーのように機動力の向上こそ無いが、脚部の耐久力を極限まで上げる事で如何なる悪路をも突き進む事の出来る特性を持つ。そう…例えばあのトゲの床などな…空中ての機動力に特化したファルコンアーマーと使い分ける事でいかなる地形にも適応可能となるはずじゃ。この力を以ってこの未曾有の危機から何としても世界を救ってくれるよう、エックスに伝えて欲しい』

「あ、はい…」

『ルイン……』

「何ですか、ライト博士?」

『あ……いや、何でもない…気にしないで欲しい』

そう言い残すとライト博士は例によってパーツファイルをルインに渡すと姿を消す。

ルインは首を傾げながらもパーツファイルをハンターベースに転送すると再び、ジャングルを駆け抜ける。

一方でライト博士はサイバースペースを経由して、シグマウィルスを避けながらエックスのいる火山地帯を目指す。

しかし、火山地帯に向かうライト博士の表情はあまり良いとは言えない。

『何じゃろうな…この不安は…ルインは何時も通りだった…女神殿もルインの電子頭脳は人間時代と同じだと言っていた。つまり、悩み続けることが出来るエックスと同じようにイレギュラー化することはないはず…それなのに…この不安は一体…?』

得体の知れない不安がライト博士の胸中に巣食うが、今はエックスの元に向かうべきだと急いで火災地帯に向かうのだった。

一番奥の部屋に入ると薔薇の花びらが舞う。

「うわあ…」

華麗な花びらの舞に思わずルインは見惚れてしまう。

「誰…?」

「え?」

奥から聞こえてきた声に反応すると、薔薇型のレプリロイドが立っていた。

「えっと…君がスパイク・ローズレッドなの?」

「そうだよ。あ、あんたもしかしてルインって人?」

屈託なく微笑みながら歩み寄ってくるローズレッドに話が通じそうだと安堵したが、少し疑問が生じた。

「君はシグマウィルスの影響を受けないの?」

シグマウィルスが蔓延するこの施設内にいてもローズレッドは正常そのものだ。

「それは僕がこの施設のコントロールユニットとシグマウィルスが融合して誕生したレプリロイドだからさ、つまり僕は生まれながらにシグマウィルスの抗体を持っている」

「…そうなの?ローズレッド、悪いことは言わないからオービターエンジンの場所を教えて早くここから出た方がいいよ。ここはイレギュラーの巣窟と化してるんだから」

「心配してくれてるの?」

「当たり前でしょ?生まれはどうあれ、君自身はイレギュラー認定されるようなことを何もしてないし」

「イレギュラー認定ね……そのイレギュラーって判断は勝手すぎない?」

「え?」

「だって、本来同志であったレプリフォースさえも些細な誤解からイレギュラー認定してしまったんだろ?この辺り一帯のウィルスが教えてくれたよ」

ローズレッドの人格は歴史がない。

シグマウィルスが世界中に蔓延したあの直後にこの世に生を受けた。

しかし、シグマウィルスによってこの世界で起きたことを知識として得ているのだ。

「ち、違うよ!!あの時はイレギュラー認定が早過ぎて……レプリフォースの軍人達は誇り高い人達ばかりだったから…」

「……イレギュラーハンターは怖い奴らばっかりだよ。知識通りに抵抗したら殺されそうだしね」

「そ、そんな…私達は」

最近イレギュラーハンターに対する目が厳しい。

最強のイレギュラーハンター・シグマが反乱を起こしたのもあるのだろうが、元々イレギュラー=処分の鉄則を掲げるイレギュラーハンターは無害なレプリロイドからも恐れられていた。

横暴なハンターの取り締まりに不満を持つ者だって決して少なくはない。

「僕はここを出ていくつもりはない。ここは僕が生まれた場所、僕の家だ。どうしてもここから退かしたいなら僕を処分すれば?」

「え…?」

他人事のように言うローズレッドの表情には恐怖も憎しみもなく、声も淡々としていた。

「さっさと撃ったら?今までもそうしてきたんでしょ?でも、僕も一方的に殺されるつもりはないけどね。あんた達イレギュラーハンターは知るべきだよ。世界が滅ぶまでに知らずに済ませようなんて許されるはずがない。逆に僕が教えてあげるよ。イレギュラーとして理不尽に処分される側の気持ちをね!!喰らえ、スパイクロープ!!」

球体状に丸められた鋭い棘を持つ蔦の塊がルインに炸裂する。

「あう!?」

「どうかな?痛いだろう?けど…言っておくけどね、こんなの理不尽に処分されたイレギュラー達の悲痛な叫びに比べれば掠り傷分の痛みにもならないんだよ!!ローズウィップ!!」

ローズレッドの腕から茨の鞭が唸りを上げて飛び、強かにルインを打ち据える。

「ぐっ!!」

「だあああ!!」

生まれて間もない存在とは思えない程にローズレッドは鞭を巧みに使ってルインを追い詰める。

そしてルインの体を絡め取り、そのまま締め付ける。

「くっ…うわあああ!!」

このままでは絞め殺されると判断したのかOXアーマーを解放してローズレッドの鞭を吹き飛ばす。

「お!?」

「ごめん!!私達もここで滅ぼされるわけにはいかない!!」

「滅びたくないのはこちらも同じさ!!あんたらイレギュラーハンターは僅かなりとも知るべきなんだ。イレギュラーとして処分された奴らの悲哀を…絶望をね!!」

鞭を再生し、再び鞭を振るうローズレッド。

それをOXアーマーの専用装備、“究極”の名を冠するアルティメットセイバーで弾くと、拳にエネルギーを収束させる。

「確かに君の言う通りだよ、私達はシグマに踊らされてレプリフォースを壊滅寸前まで追い詰めた。でも私はそれから逃げるつもりはない!!しばらく気絶してろ!!アースクラッシュ!!」

「うわああああ!!?」

「(手応えあり!!)」

アースクラッシュを叩き込んでローズレッドを吹き飛ばすルインだが。

「本物はこっちさ!!ローズカッターを喰らえ!!」

「なっ!?」

ルインが殴り飛ばしたローズレッドは偽者だったらしく、偽者はすぐに崩れて消え、花弁のカッターがルインの体に傷をつけていく。

「くっ…」

まともに喰らって倒れた瞬間、シグマウィルスがルインに迫ってきた。

「どうやらあんたを狙ってるようだね。シグマウィルスを受けてイレギュラーになったらあんたもイレギュラーの気持ちが……ん!?」

「な、何これ…」

ローズレッドはルインの体内に入っていくウィルスを見て、ルインはイレギュラー化すると踏んでいたが、それどころかウィルスがルインの体内に入る度にエネルギーが回復し、損傷箇所が修復され、パワー出力が上がっていくことに目を見開いた。

「……シグマウィルスを吸収してそのエネルギーを回復と自己強化に回す…こんな芸当が出来るのは突然変異の僕くらいかと思ったけど、まさかあんたまで出来るなんて…不思議なものだね、イレギュラーハンターにイレギュラーが紛れ込んでたなんて」

「ち、違う!!」

ローズレッドの言葉にルインは叫び、彼女の叫び声にローズレッドは思わず目を見開いた。

「わ、私はこんなの知らなかった!!このアーマーを纏うまではこんなことは起きなかった!!」

「ふーん、つまりそのアーマーは僕のような異質なイレギュラーの力を持っているわけだ。確かにこんなウィルスまみれの現状では強力なアーマーかもね、そのアーマーを纏っている限り、あんたはウィルスによって無限の再生と回復を繰り返し、際限なくパワーアップする…その姿を見て他のハンター達はあんたをどう見るかな?」

「…………イレギュラー」

「正解、シグマウィルスによってあらゆるレプリロイドがイレギュラー化するのにあんたはそれを吸収して際限なく強くなり、不死身に等しい状態となっている。ある意味シグマ以上に恐ろしい存在に見られるだろうね」

「………」

ローズレッドの言葉にルインは沈黙する。

今のルインを見て脅威を感じないのは余程の馬鹿でないと無理だ。

ただでさえエックス達と並ぶ実力を持つ彼女にこのようなことが起こったらイレギュラー認定は間違いなく、イレギュラーハンターは自分に武器を向けるだろう。

沈黙するルインにローズレッドが口を開いた。

「逃げれば?」

「え?」

「イレギュラー認定が怖いならコロニー落下まで逃げればいい。IDを偽装したり、エネルギー反応を別に変えれば逃げることも不可能じゃないはずだ。コロニーが落下してもあんたなら僕同様生き残れる可能性があるしね。大体レプリロイド…イレギュラーハンターだからって地球のために体を張る理由なんかないだろ?これが地球の運命なんだと受け入れればいい。違うかい?」

今のルインはローズレッドにとって同胞に近い。

だからルインにイレギュラーハンターから逃げることを勧めた。

「……ありがとう、でも私は…コロニー落下は防ぎたい…地球を終わりになんかしたくない。エックスやみんなと会わせてくれたこの世界が好きだから」

「………そう、あんたってさ…イレギュラーハンターにしてはお人好し過ぎるよね。正直あんた…絶対に貧乏くじを引くことが多いでしょ?」

「うん、エックス程じゃないけどね。」

2人の会話が続き、いくばくかの沈黙が流れ…ローズレッドはある物をルインに渡す。

「これ…DNAデータとカードキー?」

「僕のDNAデータとこの奥にある扉を開けるためのカードキー。部屋にはオービターエンジンだけじゃなく、パワーアップパーツを造るためのラボもあって、この施設のレプリフォース兵士用のパワーアップパーツがあるんだ。いくつかは大戦の影響で壊れちゃったけど使えるのもいくつかはあるはずだ。」

「いいの…?」

「ああ、あんたみたいなお人好しがハンターとしているなら、イレギュラーハンターも捨てたものじゃないらしい…言い忘れてたけど、ここのイレギュラーはシグマウィルスと融合して生まれた僕を敵とは認識しないんだ。だから攻撃される心配はないし、ウィルスに感染することもないから大丈夫だよ。しばらくはここで穏やかに暮らしていくさ…じゃあまたね、あんただったら遊びに来てもいいよ」

ローズレッドは微笑し、手を振りながらジャングルの奥へと消えた。

「ありが…とう…」

ローズレッドの後ろ姿を見ながらルインは感謝の言葉を囁いた。

そしてローズレッドから貰ったカードキーを使い、ラボに入ると、オービターエンジンを回収して他にもローズレッドが言っていたように大量のパワーアップパーツがあった。

しかしそれらは大戦の影響で壊れており、使えそうなパーツは少ししかなかった。

自分達でも扱えるようにルナに改良してもらわなければとパーツを持って施設を後にする。 
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