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ある晴れた日に

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158部分:共に生きその八


共に生きその八

「だからね。ここは絶対にね」
「しっかりした音楽担当が必要だってことだよな」
「そういうこと」
 彼の言いたいことはそれであった。
「それだけれど」
「それって一人しかいねえだろ」
 野茂がここでこう言った。
「やっぱりな」
「ああ、そうだよな」
 彼のその言葉に坂上が頷く。
「やっぱりな。これもな」
「一人しかな」
 またしても皆の視線が一つの席に集中する。その席にいるのは。
「俺かよ」
「そういうこと」
「あんたよ、あんた」
「わかってんだな、自分でもな」
 正道であった。皆今度は正道を見ているのであった。未晴と完全に同じパターンである。
「それじゃあ頼める?音楽担当」
「よかったら」
「断われる雰囲気じゃないのはわかるな」
 まずは皆にこう述べる正道だった。
「それはな」
「じゃあいいわよね」
「それで」
「それはいいけれどね」
 一応受けはした。
「それでもな」
「それでも?」
「俺日本の音楽は知らないぜ」
 こう言うのである。
「ああした和楽器とかはまた全然知らないんだけれどな」
「ああ、それはね」
 その彼に竹山が言ってきた。
「安心していいよ」
「いいのかよ」
「僕がちゃんとビデオ持ってるから」
 彼に言う言葉はこれであった。
「それで勉強しようよ」
「ビデオでか」
「曲もちゃんとあるし」
「徹底してるな」
「アレンジとかもしていいから。だからね」
「まずはビデオを観てか」
「そういうこと」
 にこりと笑って正道に述べる。意外と笑顔は爽やかで屈託のないものである。
「それでいいよね」
「まああるんならな」
 受けることは決めているので意外とあっさりと頷いた正道であった。自分自身でも予想しない程に。
「それでな」
「有り難う。じゃあ全部決まりだね」
「音楽担当はっと」
 加山がすぐに黒板に書いていく。
「音橋君でっと」
「それじゃあ皆」
 千佳が教壇から皆に対して言う。
「準備御願いね。今日からね」
「ああ、わかったぜ」
「それじゃあね」
 こうして劇が実際に動き出した。正道はまずは竹山の家に向かった。彼と一緒に帰りながらそうして彼の家に向かうのである。
「で、その助六だけれどよ」
「うん」
 電車の中で話をする。二人並んで七人用の席に座っている。
「長いのか?それで」
「あまり長くはないね」
 すぐに答える竹山だった。
「上演時間はね。劇としてはね」
「そうなのか」
「ただ。それでも学校の劇でやるには」
「長いんだな」
「そういうこと」
 竹山は既にそこまで考えていた。正道は内心そのことに驚いていたがそれは顔には出さなかった。
 
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