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ある晴れた日に

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149部分:妙なる調和その二十一


妙なる調和その二十一

「それはね」
「全くよお。ベイスターズが負けた時のスタープラチナに行くのは冒険だな」
「冒険ってのがいいんだけれどな」
 何故か冒険という言葉が好きな春華だった。
「けれどよ。幾ら何でもお酒にお汁粉は我が目を疑ったぜ」
「その日はたまたまそれだったのよ」
「じゃあ他には何があるの?」
「本当にその時の気分次第だけれど」
 つまり不機嫌なままに何かを作るのである。話を聞く限りではあまり美味しくはなさそうである。
「それはね」
「じゃああれか?」
 正道はスパゲティを食べつつ述べた。
「善哉だったり羊羹だったりするのかよ」
「多分」
「多分ってよ。やっぱり和菓子は酒には合わないぜ」
「和菓子じゃない場合もあるし」
「他には何があるんだよ」
「まあ適当に。おうどんだったりお蕎麦だったり」
「そういうのだといいけれどな」
 うどんや蕎麦ならまだいいと思った正道だった。
「酒には合うよな」
「横浜の負けが込んでる時限定よ」
「じゃあしょっちゅうだな」
 正道も容赦がない。
「どうせあれだろ?シーズンオフにだって何かあったらそうなるんだろ?」
「多分ね」 
「多分かよ」
 やはり正道の予想通りだった。
「マジで危険な店だな、おい」
「その代わり勝ちが込んだら凄いサービスがあるから」
「そんなの滅多にねえだろうが」
 身も蓋もない言葉が続く。
「百敗に手が届きそうになったの何回あったよ」
「ほんの一回じゃない」
「今シーズンだってやばいだろ。もう自力優勝消えたんだろ?」
「ここから大逆転よ」
 何気に暗黒時代の阪神ファンとそっくりになっている明日夢だった。
「奇跡のね」
「そう思いたければ思えよ。それでそのお汁粉の味はどうだったんだ?」
「美味しいことは美味しいわよ」
「ねえ」
 凛達はそれは認めた。
「少年料理は上手いから」
「だから」
「だったらまだ救われるな」
 とりあえずそれを聞いて安心はした正道だった。
「日本酒にオムレツなんてのも論外だけれどな」
「論外も何も何だよ、それ」
 佐々も話を聞いていて顔を顰めさせていた。
「無茶苦茶じゃねえかよっていうかそれ出したことあんのか?」
「一回ね」
 その本人の言葉である。
「やったことはあるわ」
「どんな我慢大会なんだよ」
 うんざりとした顔になってコメントする佐々だった。
「それってよ」
「流石に皆食べなかったわ」
「当たり前だ」
 今度は速攻で突っ込みを入れたのだった。
「そんなのな。何考えてんだよ」
「ちょっとね。その時色々あって」
「色々!?またベイスターズなんだろ?」
「ちょっとクルーンのことで」
 巨人に強奪された剛速球を投げる外人ストッパーである。
「頭にきててね」
「まあ気持ちはわかるがな」
「皆日本酒止めてワインに変えたわ」
「当たり前だよ。どう考えても日本酒にオムレツは合わないからな」
 それで飲むというのはやはり無理があることであった。
 
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