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ロックマンX~Vermilion Warrior~

作者:setuna
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第100話:Oceanographic Museum

騒動が起こったのはルインがオリハルコンの入手に成功して間もなくのことである。

アイリスは3人のオペレートを行いつつ、コロニーの状況を調べ、エイリアはルインから転送されたアーマープログラムの解析。

ダグラスとルナ、ゲイトの3人はオリハルコンの加工を開始し、エニグマの砲身とエンジンの強化を図っている。

シグナスはパーツを保持する残りのパーツを保持するレプリロイドの詳細を調べさせたりし、少しでも役立つ情報を集めていた。

皆が自分に出来る精一杯をやっていた。

アイリスはコロニーの状況を調べるためにモニターを見ていたが、彼女の表情は驚愕に染まる。

「アイリス!何があった!?」

信じられない様子でモニターを凝視する彼女に気付いたシグナスが叫んだ。

「シグナス総監!謎のメッセージを受信しました!!」

モニターに砂嵐が起こり、その直後に1人のレプリロイドが映し出された。

シグナス達は知らないが、この人物こそユーラシアを占拠したレプリロイドである。

「誰だこいつは…?見たこともないぞ…」

シグナスの言葉に対し、正体不明の謎のレプリロイドが口を開いた。

人を小馬鹿にしたようなふざけた口調である。

『あー、イレギュラーハンターの皆さん。ご苦労様です…。今話題のスペースコロニー・ユーラシアを占拠し、それにウィルスをばら撒いて地球に激突させようとしている張本人でーす』

「何だと!?」

総監と言う立場もあり、滅多に動じないはずのシグナスですら、男の発言に怒りを爆発させた。

『特に皆さんに怨みはないけど、仕事なんでね…近いうちにハンターベースを襲撃させて頂きますわ』

男はシグナスの怒りに構わず、だらしのない調子で言葉を紡ぐ。

「何のためにこんなことを…ようやくレプリフォース大戦での傷が癒えようとしていたのに!!」

『んー?暇だったからかな?退屈凌ぎにね。あー、エックスさんとゼロさんとルインちゃんいますか?相手になってくださいよ。暇なモンでね…。出来れば相手は可愛いって評判のルインちゃんがいいけど…、ま、お互い力抜いて戦いましょうや。スポーツな感じでね…くくっ』

「何てことを…」

男の発言に思わずエイリアは呻いてしまう。

『あ、ダイナモっていいます。では、また後で…』

通信が途切れ、いつものモニターに戻るとシグナスは拳を震わせながら、必死に怒りを抑えていた。

「こんな時にふざけた奴だ。くそっ!!…あんな奴でも、戦わないといけないのか?」

ハンターベースが正体不明のレプリロイドのことで荒れている中、地上に蔓延するシグマウィルスは世界各地で深刻な事件を引き起こしていた。

それはハンターベース付近の海も例外ではなかった。

「なるほど、確かにこれはルインでは厳しかったかもしれないな…!!」

海に潜ったエックスは骨董品同然のデスエベンジが突如作動し、大海へと乗り出してその近辺で破壊の限りを尽くしているのを発見した。

自己進化、自己再生、自己増殖と言った凄まじき特質を備えるシグマウィルスに寄生されてしまえば、作動するはずのない骨董品が動き出したとて何の不思議もないのだから。

エックスはデスエベンジの猛攻を凌ぎながら、デスエベンジの砲門に向けてバスターを構えた。

「まずは砲門を潰す!プラズマチャージショット!!」

まずは頭部の砲門をプラズマチャージショットで潰していく。

大型潜水艦だけあり、デスエベンジの耐久力は凄まじいものがあるが、いくら劣化してもスパイラルクラッシュバスター並みの威力を誇り、着弾点にプラズマを発生させ追加ダメージを与えるプラズマチャージショットの前では形無しだ。

最初は水中と言うこともあり、水陸両用の特殊アーマーを持つルインが候補に挙がったのだが、暴走するデスエベンジを発見したエイリアによって人選が変更され、エックスが海に向かったのだが、その判断は正しかった。

LXアーマーは水中での機動力は優れているが、装備や技の関係上、デスエベンジのような大型潜水艦の破壊は不向きだ。

「もう1発!!」

更にプラズマチャージショットを放ち、他の砲門を破壊するが、デスエベンジの追跡は止まらない。

舌打ちしたい衝動に駆られたが、エックスは意識を集中させると両手に風属性のエネルギーを纏わせる。

かつてのレプリフォース大戦で得たストーム・フクロウルの特殊武器。

「喰らえ、ダブルサイクロン!!」

チャージダブルサイクロンを受けたデスエベンジは凄まじい乱流により押し戻された。

その隙に前進しようとするエックスだが、デスエベンジはシグマウィルスにより推進力が強化されているのか、チャージダブルサイクロンにより生じた乱流を抜け出して来たのだ。

「(せめてノヴァストライクさえ使えれば…)」

負担は絶大だが、ギガクラッシュのエネルギーを一点集中して繰り出す体当たり攻撃。

それを使えればデスエベンジの強固な装甲を貫いて、動力炉を破壊出来るのだが…。

「無い物ねだりしても仕方ないか!!」

Xブレードを抜き放ち、光刃を発現させると口の砲門にチャージブレードによる一撃を喰らわせる。

しかしそれだけでは決定打にはならずに口の砲門のエネルギーチャージが開始されたが、エックスは既にチャージを終えていたバスターを砲門に向ける。

「プラズマチャージショット!!」

プラズマチャージショットがデスエベンジの口の砲門に炸裂し、損傷していた上にエネルギーチャージ中にプラズマチャージショットを受けたことで砲門が爆散する。

次にデスエベンジの後方に移動するとミサイル砲台にプラズマチャージショットを繰り出す。

「たあああああっ!!」

そしてチャージブレードで残りの砲台を破壊し、とどめとばかりにプラズマチャージショットでスクリューを破壊するとコントロールを失ったデスエベンジは何処かへ消えていく。

「…やったか…よし、早くマッコイーンの元に向かわなければ…!!」

それを見届けるとエックスはマッコイーンに会うために先を急いだ。

「やはり水中では思うように動けないな…」

苦々しげに呟きながらも、出来るだけ早くマッコイーンに会うためにエアダッシュの応用でしばらく泳いでいると旧世紀の木造の大型船に辿り着き、エックスは辺りを見回して溜め息を吐いた。

ここなら水中よりまともに戦える。

急いでマッコイーンの元に向かうが、しばらく船内を走るとエックスの視界にあのカプセルが入った。

「あれは…」

ライト博士のカプセルを発見し、エックスが歩み寄るとカプセルが起動してライト博士のホログラムが現れる。

『お前達レプリロイドにとってシグマウィルスが蔓延する今の地上は正しく地獄じゃ。この地獄を打開すべくわしはお前に新たなアーマー…機動力に特化した強化アーマーである“ファルコンアーマー”を用意した。既にルインに一部を渡してある。だが今までのようにパーツを作成するには、このウィルス汚染の著しいこの場所ではリスクが大きい。よって今渡せるのはこのアーマー用プログラムを記録しておいたファイルのみじゃ。エイリアに渡してファルコンアーマーを完成させてもらって欲しい。彼女には既に話を通してある』

そう言うとライト博士はエックスの手にパーツファイルを手渡した。

『これに記録されておるのはボディパーツじゃ。セカンドアーマーのギガクラッシュやフォースアーマーのノヴァストライクと同様に敵から受けるダメージを軽減し、そのエネルギーを吸収し蓄積させる事で広範囲に渡り無数の貫通弾を発生させるギガクラッシュの派生系、スピアショットウェーブを使えるようになる。それだけではない、ルインのHXアーマーを解析したことで本来のファルコンアーマーよりも機動力の底上げに成功したのじゃ。本来のファルコンアーマーには搭載されていなかったが、ボディパーツの大型バーニアによって長距離、短距離の従来よりも小回りが利くエアダッシュがタイムラグ無しに使用可能となり、このエアダッシュにもエネルギーフィールドが発生して体当たり攻撃が可能となる。』

「…分かりました。ファルコンアーマーのパーツファイルを受け取りましょう」

『エックス…戦いとは辛く悲しい物じゃ。しかしその先にある人々の笑顔…忘れるでないぞ』

「はい…ありがとうございますライト博士。必ずやシグマの野望を阻止します」

パーツファイルを受け取ると簡易転送装置でパーツファイルを転送する。

「…急がなければ」

大型船を出ようとした瞬間、エックスに向かって大量の砲弾が飛んで来たので急いで水中に出るとデスエベンジが戻ってきた。

「チッ!!」

舌打ちしながらプラズマチャージショットをコアに向けて放つが、コアを守るバリアにより、プラズマチャージショットが阻まれてしまう。

エックスはセンサーを使い、バリア発生装置を発見するとブレードを装置に突き刺す。

するとバリアが解除され、ある特殊武器を選択すると、露出したコアと砲台に向けて繰り出す。

「フロストタワー!!」

チャージフロストタワーがコアと砲台に降り注ぎ、巨大な氷塊にコアと砲台は貫かれたことでデスエベンジは沈黙し、爆散して木っ端微塵となる。

「何とか破壊出来たか…」

骨董品すら暴走させるシグマウィルスの恐ろしさに戦慄を抱きながらも扉を潜るとマッコイーンを発見した。

「ほう…これはこれはエックス隊長…」

「ハンターベースから一番近いこの海を…使わせて欲しい…大量の水素を作るために…」

「核融合でも起こして…エニグマを使う気だな?」

「そんなところだ…こちらの目的が分かっているのなら、是非協力して欲しい。」

「エックス君…わしは海の男だ…簡単にこの海を手放すわけにはいかない…愚かなことだと分かっている。ただ、男として、君と戦いたい!!」

「分かった…だが、本当にいいのか、マッコイーン…俺は、あなたがこの海を守ることを潔く諦めようと、文句は言わない。侮蔑も侮辱も一切しない。それもまた、あなたの信念だと思って受け入れるつもりだ。それでも、あなたは戦うのか…?」

「何度も言わせないで欲しい…わしは、この海を何としてでも守る。じゃが、心配するな。君がわしを殺しても、わしは君を恨んだりはしない。誰の中にも譲れない“正義”があるのだから。」

マッコイーンは表面上は穏やかで、その実深い意味を持たせた話をする。

彼の言葉によりエックスの迷いは吹っ切れた。

「分かりました。ならばもう言葉は不要ですね。俺もあなたに最大の敬意を払って、全力で相手をします…」

エックスはエネルギーをチャージするとマッコイーンに向けて両手を翳す。

「ダブルサイクロン!!」

高い貫通力を誇るチャージダブルサイクロンがマッコイーンを襲う。

「アイスブロック!!」

前方に氷のキューブを繰り出し、チャージダブルサイクロンを防ぐ。

ガリガリと氷を削る音が聞こえたが、マッコイーンは水中での高い機動力を活かして、縦横無尽に動き回る。

「くっ…速い!!」

戦闘用レプリロイドではないと聞いていたが、マッコイーンの水中での戦闘力は特A級のそれに匹敵する。

恐らく、海を守るためにパーツを取り込んで性能の底上げをしたに違いない。

マッコイーンの強烈な体当たりを受けたエックスは体勢を崩す。

「ジェルシェイバー!!」

体勢を崩したエックスにマッコイーンは高水圧を持つ液体状の特殊ジェルを高速で発射し、エックスに数発直撃させる。

「ぐっ!!」

あまりの速度と高圧のためか、エックスのフォースアーマーに裂傷が入る。

「テイルクラッシュ!!」

横回転しながら尾による打撃をエックスに見舞うマッコイーンにエックスは勢いよく吹き飛んだが、エックスも負けてはいない。

直ぐさま体勢を整え、エアダッシュでマッコイーンに突撃した。

「喰らえ!!」

マッコイーンに渾身のチャージブレードを繰り出すエックス。

「ぬうっ…だが、この程度で!!」

斬撃はマッコイーンの頬を掠め、マッコイーンは顔を顰めたが構わず拳を振るった。

咄嗟に後ろに飛ぶことでダメージを軽減させたエックスはこのフォースアーマーでは使えないが、ノヴァストライクの要領でホバーと加速装置を全開にし、マッコイーンに突撃した。

「っ!!?」

あまりの速度に対応出来なかったマッコイーンは目を見開き、エックスはバスターに送信されたグリズリーのデータにより得た特殊武器を繰り出した。

「クレッセントショット!!」

チャージクレッセントショットは自身を衝撃波のバリアで包む技だ。

バリアであるために射程距離は極端に短いが、凄まじい威力を誇り、まともに受けたマッコイーンの身体に夥しい傷をつける。

「ぐっ…おおおお!!」

「ぐあっ!!」

それでも負けじと口から猛烈な勢いでアイスブロックを吐き出し、エックスを壁に叩きつける。

しかし、エックスはダメージで動きが鈍くなったマッコイーンに向けてプラズマチャージショットを放った。

「ぐああああああああ!!」

プラズマチャージショットによるダメージとプラズマによる追加ダメージにより体を痙攣させるマッコイーン。
強烈な痺れが、数秒間続いた。

体勢を立て直そうとした時には既にエックスは予めチャージしていたブレードを構えていた。

「すまないマッコイーン…」

チャージしたブレードを大上段で振り下ろすと、チャージブレードをまともに受けたマッコイーンは縦に一刀両断され、そのまま海の藻屑と消えた。

「本当にすまない…だが、俺も…前に進むしかないんだ…」

気落ちするエックスに対してダイナモにハンターベースが襲撃を受けていると連絡を受けるのはもう間もなくであった。 
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