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デート・ア・ライブ〜崇宮暁夜の物語〜

作者:瑠璃色
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堕ちた精霊の降臨

「あ--あれは・・・っ!」

凍り付いた街を走っていた十香は、視界の先に見えた光景に戦慄した。開けた道路の上に、士道と、先日見た青い髪の少女、それに暁夜とAST達の姿が確認できたのである。

そして、人形を駆る少女が後退し、周囲の大気を吸い込むように仰け反らせる。

「---っ」

十香は、腹の底がゾクッと冷えるのを感じた。それは、なんとなく、危険だとわかる。本能が訴えている。 この感覚は、十香が〈鏖殺公〉で渾身の一撃を放とうとする寸前と、非常に良く似た空気の震え方をしているのである。

「・・・っ、シドー!」

十香は声を張り上げた。だがそんなことをしても意味が無いのは分かりきっている。 十香は、踵を地面に突き立てた。

「〈鏖殺公〉・・・ッ!」

そして、その名を呼ぶ。十香の最強の剣であり、玉座。 形を持った奇跡の名を。

「・・・っ、く--」

しかし、何も起こらない。十香は顔を歪めた。それもそのはず。十香の精霊の力は士道によって封印されている。今の彼女はただの人間と変わらない。最初は戸惑った。 だけれど、士道と共に人間としての生活をするために必要な事だということが理解出来てきた。

正直--十香は、今の生活がたまらなく楽しい。

折紙は未だに鼻持ちならないし、暁夜や琴里、令音も、信用に足る訳では無い。でも、士道と一緒に過ごす日常は、今まで感じたことがないくらい輝きに溢れていた。

--だが。

「〈鏖殺公〉--〈鏖殺公〉っ!〈鏖殺公〉・・・ッ!」

士道を救うために、今、要らないはずの力を再度求めなければならなかった。幾度も幾度も、地面に踵を突き立てるが、〈鏖殺公〉は顕現しない。

「く--頼む・・・出てくれ、〈鏖殺公〉・・っ!」

歯を噛み締め、眉根を寄せ、泣いてしまいそうになりながらも、地面を蹴り続ける。

--その瞬間、少女が〈氷結傀儡〉の頭部を、元の位置に戻す。

「・・・っ!」

ゆらゆら、ぐらぐらと、十香の精神状態が、不安定になる。意識が飛んでしまいそうなほどのストレスが、十香の頭の中を蹂躙する。

「く--ぁ、ぁああああああああッ!」

そして、〈氷結傀儡〉がその口元から凝縮された冷気を発した瞬間--




「くっ…!?」

「なっ…!?」

互いに己の武器をぶつけ合っていた暁夜とリンレイが、四糸乃の天使〈氷結傀儡〉から放たれた凄まじい冷気の奔流に驚きの声を上げる。周囲に展開したAST隊員達の攻撃は周囲の雨に阻まれ、四糸乃にかすりもしない。ただ、彼らよりも驚いたのは、彼女のそばにいた士道だ。

「な--」

放たれた冷気の奔流。それが士道の命を刈り取る一撃だと予想がついたからだ。このタイミングと速度では-到底避けられない。暁夜の精霊の力をもってしても、間に合うかどうか。ましてや、暁夜の天使は顕現するのに多少の時間がいる。不完全な状態で顕現することも可能だが、その場合は大きなリスクを伴う。それでも、この時の暁夜はそんなことは考えなかった。ただ、士道を助けたい一心で、己の精霊の名を叫ぶ。

「〈明星堕天《ルシフェル》〉ッ!!」

瞬間、暁夜の全身を紅黒い霧が覆い始めた。それに伴い、近接特化型CRユニット<モルドレッド>を装着しているリンレイが容易く吹き飛ばされた。まるで新聞紙のように。そして--暁夜の全身を覆う紅黒い霧が球体に姿を変えた。

宙に浮く黒い球体。それは目を瞑る士道を守るように移動した。そして直撃。冷気の奔流により、黒い球体が砕け散る。壊されたのではない。それを待っていたかのように黒い球体は自ら砕けたのだ。

「ぐ--ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!」

砕け散った球体から獣のような叫び声が発せられた。そして、その日その地に堕ちた精霊が降臨した。 
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