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ロックマンX~Vermilion Warrior~

作者:setuna
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第93話:Death Flower Heart

ゼロがシグマと対峙する直前に、エックスとゼロよりも先にデスフラワーに到着していたルインは圧倒的な力で近衛兵を薙ぎ払いながらある扉の前に辿り着いた。

扉から感じる凄まじいエネルギー反応はジェネラルに間違いないだろう。

ルインは扉を殴り飛ばして中に入るとジェネラルと相対する。

「ジェネラル!!」

「やはり来たか…イレギュラーハンター・ルイン」

ジェネラルの背後にはデスフラワーのエネルギー炉があり、デスフラワーの主砲であるデスシード砲の充電を行っていた。

それを見たルインの表情は更に冷たくなる。

「レプリフォース最高司令官・ジェネラル、あなたをイレギュラーとして処分します。あなたのせいで罪なき人々が大勢が死んだ。その責任をあなたの命で贖ってもらいます」

冷然と告げるルインにジェネラルは玉座からゆっくりと立ち上がった。

「……イレギュラーか…いや、今更言い訳はすまい。あの時にカーネルを止めていれば彼も大勢の部下を失うことはなかっただろうが、もう我々は後戻りなど出来ん」

ジェネラルは大型のブースターを展開し、戦闘体勢に入るとルインを睨み据えた。

「…………」

「レプリフォースはもうイレギュラーの汚名からは逃れられん。だが、私もこのまま無抵抗のまま討たれるわけにもいかん…最後の一兵卒まで守るために全力で抵抗させてもらうぞ!!最早言葉は要らぬ!!掛かって来るがいい!!若き力よ!!」

「イレギュラーが…何を偉そうにっ!!アースクラッシュ!!!」

憤怒の表情でオーバードライブを発動し、アースクラッシュをジェネラルに放つルイン。

「がああああああっっ!!!」

「まだ終わらない!!」

もう片方の拳からもアースクラッシュを繰り出してジェネラルに叩き込む。

アースクラッシュの連続攻撃はジェネラルの頑強なアーマーを持ってしても無事で済む威力ではない。

「ぐっ…成る程…これがレプリフォースの将校達を打ち破った力か…流石はエックスとゼロと並び称されるレプリロイド…だが…!!」

ジェネラルのリーチを警戒し、充分に距離を取っていたはずのルインに目掛けてジェネラルの拳が文字通り飛んでくる。

所謂、ロケットパンチだ。

「うあ…っ!!」

まともに受けたルインは吹き飛ぶ。

元々巨人であるジェネラルと通常の人型であるルインとでは絶大なリーチの差がある事など子供だって見れば分かる。

そのリーチを警戒し間合いは誤り無く取っていたつもりであったが、ジェネラルは拳そのものを発射させると言う予想外の攻撃を繰り出してきたのだった。

「(いや、考えてみれば有り得ない武装じゃない。ジェネラルの巨体を考えれば)」

ジェネラルは巨体であるためにパワーは絶大だが、どうしても機動性は低くなる。

その巨体を少しでも迅速に動かすために大型のブースターや、行動のタイムラグを補うために様々な武器を内臓しているのではないか。

ロケットパンチもジェネラルの弱点を補うための武器だろうと予想したルインは起き上がってジェネラルを睨み付けた。

「ダブルチャージウェーブ!!」

反撃でチャージショット2発とセイバーによる衝撃波を放つルイン。

今のジェネラルには両腕が無いためリーチ差を有効的に克服する術が無い。 

このタイミングで攻撃すればジェネラルには反撃手段は無いはずだとルインは判断したのだ。

そしてオーバードライブの恩恵でセミチャージショットが連続で放てるようになったルインはダブルチャージウェーブに続いてセミチャージショットを連射する。

「甘いわ!!」

拳を外した付け根に現れたのは巨大な銃口であった。

ジェネラルは即座にエネルギーチャージをすると凄まじい威力を持つ光弾を連続でルインに向けて放ってきた。

「そ、そんな!?」

ダブルチャージウェーブは光弾で相殺され、セミチャージショットに至っては光弾に弾かれてしまった。

「この程度で終わりではないぞ!!」

腰部の武器からも光弾を発射し、凄まじい火力の攻撃に咄嗟にルインはHXアーマーに換装するとエアダッシュで無数の光弾を回避した。

「(くっ、強い…)」

もう後がないためか自身へのダメージをまるで顧みる事無く、命を投げ出して攻撃を仕掛けてくる。

それをレプリフォース最高司令官たるジェネラルが行えば当然、その猛威は極めて凄まじいものがある。

「私は負けぬ!!共に独立国家の建設を目指して散って逝った部下達のためにも私は決して負ける訳にはいかんのだ!!」

無数の光弾を放ちながらジェネラルの巨体が猛烈な勢いでルインに迫り、彼女を押し潰さんとばかりに体当たりを仕掛けてくる。

「負けられないのは…こっちだって同じなんだよジェネラル!!レプリロイドだけの国家なんて夢物語。そんな下らない理想に取り付かれて本来なら止めなければならなかったお前が部下の暴走を助長させていながら、偉そうに!!」

体当たりをダッシュでかわしながら、OXアーマーに換装するとルインは掌に内蔵された武器、Ωナックルのチャージを終えると拳を床に叩き込む。

「これならどう!?裂光覇!!」

衝撃波と共に光の柱がジェネラルに迫る。

ジェネラルは咄嗟に防御するが、裂光覇の威力は凄まじくジェネラルのボディに大きな損傷を与える。

「ぐうう!!これしきのことで!!」

ジェネラルがその巨体で勢いよく床に着地すると凄まじい衝撃波がルインを襲う。

「くっ!!…さっきの発言はそっくりそのままあなたに返してやる!!あなた達の暴走のために傷付いて死んでいった仲間や人々の為にも…私はイレギュラーなんかに絶対に負けられないんだ!!ダブルチャージウェーブ!!」

何とか耐えきり、至近距離で繰り出したダブルチャージウェーブがジェネラルに炸裂した。

「ぬあああああっ!!」

全エネルギーを防御に回し、何とかダブルチャージウェーブを耐えきったジェネラル。

しかし耐えられることなど予想していたルインは両拳にエネルギーを収束させていた。

「ダブルアースクラッシュ!!」

ジェネラルに直接拳を叩き込んで、拳に収束させたそのエネルギーを爆発させるルイン。

ダブルアースクラッシュのエネルギーを直接叩き込まれたジェネラルはよろめきながら仰向けに倒れた。

「はあ…はあ…勝…った」

正直かなりギリギリの勝利だった。

肩で荒く息をし、床に膝をつくルイン。

ここまで殆ど小休止も挟まずに戦い続けたせいかもしれない。

「だけど…これで…これでようやく…後はデスフラワーのエネルギー充電を…」

エネルギー充電を中断すればようやく戦いが終わると思ったルインはコントロールパネルのある場所に向かおうとしたが、そこには…。

「ヒュ~、凄え、凄えよあんた。正直キバトドスに負けたあんたじゃ捨て身の戦法をしてくるジェネラルには勝てねえんじゃねえのかと思っていたぜ」

口笛を吹きながら拍手を送る黄色いボディのレプリロイドがコントロールパネルを破壊しながらルインを見つめていたのであった。

ルインはコントロールパネルを破壊したレプリロイドを睨み付けるとふらつきながらも構えた。

ジェネラルとの戦いでエネルギーも体力も限界に近付いているが、OXアーマーの精神高揚で無理矢理押し流す。

「おお、戦う気力はあるのかよ。結構結構、エックスもそうだが、あんたを引き裂く時が来るのを楽しみにしてたんだぜ……にしても」

肉体的にも精神的にもボロボロなルインと戦闘不能となっているジェネラルを見遣りながらニヤリと笑う。

「虫の息の小娘と朽ちた老兵のツーショットってのも滑稽だな」

「はあ…はあ…虫の息…?虫の息かどうかは…お前の体で確かめてみろおっ!!アースクラッシュ!!」

「おっと!!」

ダッシュで距離を詰めてアースクラッシュで殴り掛かるが、レプリロイドはそれを跳躍してかわす。

「危ねえ危ねえ、やっぱりスピードはエックスとゼロを上回るか…そんなボロボロの体なのに本当に凄えよ…でもなあ」

「この…!!」

バスターをチャージしながら構えるルインだが、こちらを向いたレプリロイドの顔に目を見開く。

「ルイン先輩!!」

「え…!?ダブ…ル…!?」

その顔は自分の部隊に配属された新人のダブルの顔。

あまりのことに思わずバスターのチャージを中断してしまう。

「ルイン先輩、止めてデシーっ!!」

「な、何で!?」

バスターのチャージどころか動きすら止めてしまったルインを見たダブルは嘲笑を浮かべた。

「馬ー鹿!!」

ダブルは腕からブレードを出してルインの腹部に突き刺した。

「がはっ!?」

「へっへっへ…あんたもこういう手に弱そうだと思ってやってみたが、ビンゴだぜ」

ルインは傷口を押さえながらダブルを睨む。

「っ…まさか君はスパイだったの…!?まさかあのスカイラグーンを襲ったノットベレーとイレギオンも君が…!?」

「それは俺様じゃない。あのお方のスパイはレプリフォースにもいてね、ノットベレーとイレギオンのパーツもそいつらが手配した。イレギュラーハンターとレプリフォースを戦わせるためにな!!」

「あのお方…!?」

「あんたも良ーく知っている人物だぜ!!あんたとエックス達と戦いたいと言う欲望を抱いていたドラグーンを唆してスカイラグーンを墜とし、俺達を使ってレプリフォースに濡れ衣を着せたのも!!ジェネラルに革命を唆せたのも!!全てシグマ様による人類抹殺ゲームのためだったのさーっ!!嬉しい誤算だったのはあんただぜルイン!!あんたがぶちギレて大暴れしてくれたお陰で予定より早くレプリフォース共を宇宙に追いやることが出来た。シグマ様もあんたに感謝してたぜー!!」

ダブルは顔を本来の物に戻すとルインをブレードで斬り刻んでいく。

「ディザイアの野郎はあんたが原因で自分でイレギュラーになって、目当ての物も簡単に入手出来たとシグマ様も言っていたぜ、ありがとよルイン先輩!!俺達を助けてくれてよー!!」

「…………」

ダブルの言葉にルインは反応もせず、ただ斬り刻まれるだけである。

「まんまと踊らされてるてめえらの自滅する様には笑わせてもらったぜぇーーーっ!!」

「(私の…せい…?私が、レプリフォースを追い詰めたからシグマの計画が早まった…それにディザイアがイレギュラー化したって…どういうこと…?…全部、私の…せい…?)」

「反撃さえ出来ねえ状態とは残念だが…まあ、とどめは楽しみながらやらせてもらうぜぇ!!」

笑いながらダブルはルインを吹き飛ばす。

傷口から血が吹き出るが、それに紛れ込んだものが…。

「ひーひゃひゃ!!……!?」

ダブルの顔にかかったのは血だけではなかった。

それはルインの涙である。

「う…うああああああ!!!」

自分ではもうどうにも出来ない感情がルインを支配して無意識のうちにルインの拳にエネルギーを収束させた。

そして拳を構えて裂光覇を体当たりの要領で直接ダブルに叩き込む。

流石のダブルも裂光覇のエネルギーを収束させた一撃には耐えられなかったのかダブルの体が引き裂かれた。

「あ…ぐっ、何だ…この…パワーは……俺の体が……引き……裂か…れた…?」

本体であるコアがボディから離されたことと、ボディ自体に深刻なダメージを受けたダブルは液体金属となって飛び散った。

ルインは残ったコアを踏み砕くと、デスフラワーのエネルギー炉を睨んだ。

「自爆してでも止めてやる!!」

もう殆ど自棄に近かったのかもしれない。

ルインはエネルギー炉を破壊しようとするが、真横からジェネラルのロケットパンチによって体を掴まれて妨害される。

「!?」

「私が言うのも何だが、自棄を起こして命を無駄にするな」

「うるさい!!放して!!」

癇癪を起こした子供のように暴れるルインだが、ジェネラルは無言でエネルギー炉に向かう。

「待て…待て!!」

何とか抜け出してジェネラルを追いかけようとするルインだが、また誰かに止められた。

振り返るとアルティメットアーマーを纏ったエックスがルインの腕を掴んでいた。

「エックス!?」

見慣れないアーマー…しかも今までとは趣が違う物に目を見開くが、エックスは構わずジェネラルに視線を向けて彼の行動の意味を察したのか悲しげに顔を歪めたがゆっくりと頷くと、暴れるルインをエックスは羽交い締めして止める。

エネルギーも体力も底を尽きかけているはずなのにこのパワーだ。

念のためアルティメットアーマーを纏っていて正解だったかもしれない。

フォースアーマーでは抑え切れなかっただろうから。

「放してよ!!私、前に言ったよね!?私の邪魔をしたら………え?」

次の瞬間、腕を引かれてルインはエックスに抱き締められていた。

「殺したいなら殺せばいい。俺は例え殺されても君を絶対に放さない」

「何で…何で…止め…るの…?私が…私が暴走したせいでシグマの計画が早まって……こんな…ディザイアも私のせいでイレギュラー化したって…」

顔を涙でぐしゃぐしゃにしながらルインは必死に言葉を紡ごうとする。

「あんなことがあったんだ…誰も君を責められないよ。俺達もシグマの策略に気付けなかったんだ…それにディザイアに対しても今の君を見たら悲しむだけだ…彼は君を愛していたんだ。君を1人の女性として」

「ディザイアが…嘘…」

「本当だよ、彼は確かに間違えてしまった。だけど彼はイレギュラー化しても君のことを考えて行動していた。人間が不完全であるように、俺達レプリロイドだって不完全な存在だ。完璧な存在なんていないんだ。それを教えてくれたのは君だろう?それに俺にはディザイアがイレギュラーとなってしまった気持ちが痛い程に分かる。“愛”とは抑えることの出来ない感情なんだ。それは時として人を狂わせる。ディザイアが君への愛ゆえにイレギュラーとなったように…。」

「…………」

「そして人を狂わせることもある愛は時として人に光と希望を、無限の力を与える。エックス…君はそうやって過酷な運命に逆らい続けていたのだな」

ルインを見遣った後、エックスを見つめて微笑んだ。

「このデスフラワーのエネルギー炉は私が止める。エックス、ルイン。愚かな我々を許してくれたまえ…。生き残った者達を頼む…」

そう言った後、ジェネラルはエックスとルインに敬礼し、エネルギー炉に落下していく。

「待って…待ってよ…私…謝り…」

ルインが言い切る前にデスフラワーのエネルギー炉が爆発した。

「ジェネラル!!」

「くっ!!」

ルインを抱いて、エックスはジェネラルの行動を無駄にしないためにアルティメットアーマーのバーニアを噴かしてこの場を離脱するのだった。

大分エネルギー炉から離れたエックスはもうルインが暴れないことを察してアルティメットアーマーをフォースアーマーに戻すとサブタンクをルインに差し出した。

「……馬鹿だなあ…私…みんながいるのに1人で背負い込んで、勝手に暴走して…」

比較的安全な場所に連れ込まれたルインはサブタンクでエネルギーを補充しながら自嘲しながら呟いた。

そしてエックスはルインの隣に座りながら口を開いた。

「…ルイン、こんな時だけど君に伝えたいことがあるんだ。」

「え…?」

「俺は…ルイン…君が好きだ。君を1人の女性として愛している。」

「…っ!!」

いきなりの告白にルインは頬を朱色に染めながらエックスを見つめる。

「ずっとずっと君が好きだった。でも俺はどうしようもない臆病者なんだ。君が俺じゃない誰かを好きだったらどうしようってね。ゼロや君が引っ張って支えてくれなければ、俺はただの悩んでばかりの意気地無しだもんな…」

自嘲するように言うエックスにルインは寂しげに見つめる。

「エックス…」

「今でも怖くて仕方ないんだ。君が俺じゃない他の誰かが好きなんじゃないかって…ビクビクしてるんだよ」

「…………」

「…ディザイアは君に全てを捧げてでも君を愛した。傷つくことも恐れずに…。だから俺も勇気を振り絞らなきゃ、彼に面目ないしね…聞かせてくれないか?君の気持ちを……」

「私は……」

動力炉の部分に手を遣りながら、ディザイアとの会話を思い出す。

あの時は気付けなかったが、ディザイアは遠回しに想いを伝えてくれたのだろう。

そして気付けなかったばかりか、ディザイアのイレギュラー化の原因となってしまった。

「(そんな私にエックスの気持ちに応える資格なんてあるのかな…?)」

『あのねえルインちゃん』

「(誰…?)」

『今、私はルインちゃんの心の中で話してるの。ルインちゃんはエックス君のこと嫌いなの?』

「(嫌い…じゃないよ)」

『だったらさ、エックス君以外の人に特別な感情を抱いたりする?心が温かくなったり、動悸が…この表現はおかしいかな?…激しくなったりするの?』

「(…しない……エックスと一緒にいる時しか…)」

『それでいいの、ルインちゃん。人を好きになるのに資格とか関係ないの。バッファリオ君も言ってたじゃない。自分の気持ちに素直になった方がいいって!!自分の気持ちに嘘ついたらそれこそディザイア君に申し訳ないよ!!』

「(…うん)」

自分の中に響いてきた声に心の中で頷いて、エックスを見つめる。

「さ、さっきの…その…あの言葉…本当なの?」

「…俺が君のことを好きだということかな?」

「う、うん…」

「本当だよ」

「……私、恋愛のこと…あまり分からないよ?」

「構わない。」

「私、時々突っ走っちゃうし…。今回だってそれで迷惑かけて…」

「でも、それが君の良いところでもあるだろ?」

「こ、これからも…エ、エックスの…こと…沢山…困…らせ…るかも…しれないよ……?」

涙を流しながら言うルインにエックスは優しく微笑んだ。

「構わないさ。俺は君がいいんだ…」

「ありがとう…私もね…エックスのこと大好きだよ」

「ルイン…」

「この戦い…絶対に生き残ろうね」

「ああ、必ず…決着を着けようゼロと一緒に」

2人は共に歩み出した。

この先に希望の光があることを信じて。

そしてゼロもパワーアップした力で近衛兵を薙ぎ払いながら先に進んだ。

「近い…奴の邪悪な気配が…」

エネルギー反応よりもひしひしと感じるシグマの邪悪な気配にゼロに襲い掛かって来た近衛兵もエネルギー反応と言う形で気付いたのか動きが止まった。

「確かあそこはアイリスから渡されたマップデータではデスフラワーの司令室…だったな、こいつらの聖域でこんな気配がすると言うことは……奴がいると言うことか…」

立ち止まっている近衛兵を無視して、ゼロはこの事態の元凶を潰しに向かう。

「(今度こそケリを着けてやる。俺達を…そして罪なき者達の運命を弄んだ奴を俺は絶対に許さん!!)」

しばらく進むとシグマの邪悪な気配のせいで気付きにくいが、感じなれた清廉とした気配を2つ感じた。

更に奥に進むと目の前にはエックスとルインがいた。

「ゼロ…」

「待ってたよ」

ルインの纏う気配は普段と比べて荒々しいが、ビストレオの輸送列車で会った時よりも幾分落ち着いている。

どうやら正気に戻れたようだ。

「ふっ、一番乗りかと思ったら先を越されていたか…お前達も気付いているか?」

「ああ、シグマだな」

「本当にしつこい奴だね。まあいいよ、何度でも蘇るなら何度でも斬り刻んで消してやる」

いくら正気に戻ってもOXアーマーの精神高揚で狂暴性が増しているのか普段のルインならば絶対に言わないことを言っている。

「そう言えばルイン。そのアーマー…ええと、何と言えばいいのか…」

もどかしそうに言葉を選びながら要領を得ない問い掛けをしてくるゼロ。 

エックスも彼がルインに何を言わんとしているのかは分かる。

何しろ今のルインのエネルギー反応はゼロと同一だ。

エックスとゼロはエネルギー反応に頼らない気配察知でルインのみの気配を感知出来るが、やはり自分と同じエネルギー反応と言うのは落ち着かないのだろう。

「ん…?ああ、このアーマーね。ライト博士に引き出してもらった私の秘められた最後の力らしいよ。この力を使ってると妙に落ち着かなくなるけど…」

「あのイレギュラー化みたいな状態もそのアーマーの影響みたいな物か…大丈夫なのかお前は」

「大丈夫、少なくてももうあんな無茶はしないから…」

それだけ言うとルインは奥の方を見遣ると、エックスとゼロも同様に見遣る。

「あそこに奴がいる。」

「奴が全ての元凶だ。」

「行こう、ゼロ、ルイン…懐かしい未来への扉をみんなの力で開きに!!」

エックス達は迷いを感じさせない足取りで、シグマのいる場所に向かうのであった。 
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