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王と針

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第一章

               王と針
 デンマークの王ホルゲル=ダンスケは偉大な王だった、聡明であり覇気に満ち戦においてはまさに無敵だった。
 その強さには教皇からローマ皇帝の冠を授けられたシャルルマーニュですらもこう言う程であった。
「余と余が誇る騎士達を以てしてもデンマークは攻め取れぬ」
「あの王がいる限りですね」
「それは適わないことですか」
「皇帝を以てしても」
「デンマークを降すことは」
「あの男がいる限りな」
 到底と言うのだった。
「無理だ、諦めるしかない」
「ホルゲル=ダンスケ王がいる限り」
「流石にですか」
「そうなる」 
 長身で逞しく見事な髭を生やした顔での言葉だった、シャルルマーニュは質素な身なりの中でひときわ目立つ見事な剣を見つつ苦い顔で言った。
 とかくダンスケは強大であった、その武は人とは到底思えぬものであり巨人のものと言ってよかった。実際に彼は極めて大きな身体を持っていた。
 服を仕立てるには十二人もの仕立て屋が必要だった、宮廷に入ったばかりの若い騎士はその仕立て屋達を見ていぶかしんだ。
「宮中の服のかなりを仕立てている者達か」
「違うぞ」
 彼の言葉を聞いて傍にいた年配の騎士がすぐに言ってきた。
「あれはな」
「どういうことですか」
「王の為の仕立て屋達だ」
「十二人の仕立て屋達全員がですか」
「そうだ、王のお身体は知っていよう」
「デンマークにいる者ならば」
 誰でもとだ、若い騎士は年配の騎士の言葉に答えた。
「それならば」
「そうだな、ではだ」
「あのお身体だからですか」
「十二人もの仕立て屋達が必要なのだ」
「そういうことですか」
「これでわかったな」
「はい」
 若い騎士は年配の騎士に強い声で応えた。
「あの方のお身体なら」
「当然のことだな」
「至極」
 こう答えた、ダンスケの身体は巨人かと思うまでに大きく並の者が立っている彼の肩に届くには梯子をかけて登らねばならなかった。とにかく彼は大きかった。
 それで十二人の仕立て屋達は力を合わせて彼の服を作っていた、その服も言うまでもなく実に大きなものだった。
「ううむ、ここまで大きいとはな」
「違うな」
「これ程までの服は我が王だけだ」
「我が王だけが着られるものだ」
「では頑張ってな」
「我等も服を作っていこう」 
 いつもこう話して服を作ることに対して頑張っていた、そんな彼等にダンスケも確かなまるで雷の様な声で言った。
「常に感謝しておる」
「我々の仕事にですか」
「そう言って頂けますか」
「余はこの通りの身体だ」
 自分のあまりにも大きな身体のことを言うのだった。
「服一つ作ることも容易ではない」
「勿体ない、我等が王ならばです」
「我等も喜んで働かせて頂きます」
「そして服を作らせて頂きます」
「これからも」
「そう言ってくれるか、そなた達の心は受けた」
 自身の心にとだ、ダンスケは自分の前に控える仕立て屋達に述べた。
「ではだ」
「では?」
「ではといいますと」
「そなた達を友として扱う」
 王である自分自身のというのだ。 
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