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猿顔

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第二章

「もうな」
「ああ、それじゃあな」
「そうさせてもらうな」
「御前がいいってうんならな」
「それならな」
「好きに言ってくれよ」
 こう言って実際にだった。
 日吉は猿と呼ばれ続けた、時折猿知恵とも言われたが基本成績は悪くないので馬鹿にされることはなかった。
 そして猿と言われつつだ、彼は暮らしていたが。
 その中でだ、彼はある日友人にこう言われた。
「御前この前隣のクラスの岩波が聖帝って言ってたぞ」
「おい、それって確かな」
 その言われ方についてだ、日吉はすぐに眉を顰めさせて言った。
「あの世紀末救世主の漫画の」
「ああ、南斗のな」
「あのキャラだったな」
「そうだよ」
「何でその言われ方なんだよ」
 日吉は友人の話に首を傾げさせて言った。
「あの漫画の主人公なんだよ、というか猿とか猿にちなんだ仇名で言われてもな」
「それでもか」
「そんな仇名言われたのはじめてだよ」
 まさにというのだ。
「何でそう言われたんだよ」
「いや、サルザーってな」
「あのキャラの名前をもじってか」
「それでだよ」
「あいつ俺をそう呼んだのか」
「ああ、だから聖帝だよ」
「そういうことか、やっぱり猿か」
 ここでだ、彼も理解したのだった。
「そういうことか」
「ああ、わかったよな」
「今度も猿か、やっぱり俺ってな」
「猿だな」
「そうなんだな」
「何でもかんでもな」
「俺は猿か、じゃあな」
 ここでもだ、日吉は受け入れている顔で話した。見れば髪の毛も短いうえにやや茶色がかっていて余計に猿に見える。
「もうそれでな」
「いいんだな」
「いいさ」
 まさにと言うのだった。
「それでな」
「じゃああいつにもそう言っておくな」
「そうしてもいいさ」
 こう言うのだった、そしてだった。
 日吉は聖帝だのサルザーだの言われる様にもなった、だがそれも受け入れて日常を過ごしていた。そうしてだった。
 高校時代を過ごした、それは大学でもだった。通っている大学の学部は生物学部で哺乳類のことを学んでいたが。
 このことについてだ、彼は大学の教授にこう言われていた。
「君はどうも動物園に向いてるかもな」
「動物園ですか」
「そこで働くことにな」
 こう彼に言うのだった。
「向いてるかもな」
「そうですか」
「動物一匹一匹に目を向けて気遣う」
「だからですか」
「しかも進んで接することも出来る」
 こうしたことも出来るからだというのだ。
「だからな」
「俺は動物園に向いてますか」
「そこで働くことにな、だからな」
「大学を卒業したら」
「博物館の学芸員の資格を手に入れてだ」
 日本では動物園は博物館法において規定されている、だから勤務には学芸員の資格が必要となるのだ。
「そうしてそのうえで」
「動物園で働くとですか」
「いいと思うがどうだ」
「考えさせて下さい」
 まずはこう返事をした、そしてだった。
 日吉は休日に動物園に行った、そうして動物園の中の様々な生きもの達を観ていった。 
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