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ぶるぶる

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第三章

「僕も何もなかったよ」
「幽霊は実は怖くない、ですね」
「妖怪もね、大体幽霊は」
 史織が見たそれについてだ、淳は信号待ちの中で話した。夜の信号は闇の中で普段よりも目立っている。
「魂だよね」
「人に身体があるかないかですね」
「そう、身体があったら人間でね」
「身体がないと幽霊ですね」
「人間は心だからね」
「その人がどうかですね」
「若し怖い人が実体がなくなったら」
 その時はというのだ。
「怖い幽霊になるから」
「そうですよね」
「それでいい人が実体がなくなったら」
 淳はさらに話した、バックミラーに映る自分の顔は若い時より皺が増えて太っていた。髪の毛が減っていないだけましだとも内心思った。
「いい幽霊だよ」
「人次第ですね」
「だから怨みを飲んで死んだ人は」
「怨霊になりますね」
「そう、生きていてもね」
「怨念の塊ですね」
「怨念の塊の人が実体がなくなった」
 身体、それがというのだ。
「それが怨霊だよ」
「その人自体がそもそも怖いってことですね」
「そうなってるんだよ」
「そういうことですね」
「それで妖怪もね」
 こちらもというのだ。
「いい妖怪がいて」
「悪い妖怪もいる」
「悪い妖怪なら問題だけれど」
「悪い人が問題なのと同じで」
「いい妖怪ならね」
 それならというのだ。
「別にね」
「いいってことですね」
「そうなるね、じゃあ」
「はい、お家までですね」
「あと少しだよ」
「いつもすいません」
 史織は叔父に微笑んでお礼を話した。
「迎えに来てくれて」
「いやいや、女の子はね」
 自分に礼を言う姪にだ、淳は笑って話した。
「出来る限り夜一人で歩くべきじゃないから」
「だからですか」
「だから僕が迎えに行けたら」
 その時はというのだ。
「こうしてね」
「見送ってくれますか」
「そうだよ、危ない目に遭うよりはね」
 可愛い姪、兄の子がというのだ。
「こうした方がずっといいよ」
「そういうものですか」
「うん、じゃあね」
「お家にですね」
「帰ろうね、僕も史織ちゃんを送ったら」
 淳はそれからのことも考えつつ姪に話した。
「お家に帰って」
「叔父さんのお家ですね」
「女房と一緒に阪神の試合を観ながら」
 淳は阪神ファンだ、尚これは彼の兄も史織も同じだ。史織は実はかなりの虎キチで阪神が負けると不機嫌になる。
「焼酎飲むさ」
「焼酎ですか」
「これが好きなんだよ」 
 この酒がというのだ。
「だからね」
「お家に帰ったらですか」
「焼酎飲むよ」
 阪神の試合を観ながらというのだ。
「そうするよ」
「そうですか、じゃあ私も勉強しながらラジオで聴きます」
「今日は勝てばいいね」
「絶対に」
 史織は燃える声で言った、そしてだった。
 淳が運転する車は遂に史織の家に到着した、淳は車を彼女の家の玄関の前に停めてそこから彼女のドアを開けたが。 
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