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ロックマンX~Vermilion Warrior~

作者:setuna
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第90話:Sadness

ルナは作業をしながらも、あまりのタイミングの悪さに舌打ちしたくなった。

ワクチンデータを奪取してきたゼロはエックスと共にアイリス達の拠点にワクチンデータを届けようとしたのだが、タイミング悪く軍規を曲げてアイリスのためにワクチンデータを持ってきたカーネルとかち合ってしまった。

「ゼロ!!」

「来るなよエックス!!お前は後ろのアイリス達を守れ!!」

カーネルのサーベルをかわしながらワクチンのインストールを受けているアイリス達を守るように言う。

「畜生!何でこんなタイミングで!!」

「ルナ、急いでくれ!!」

早くアイリスのワクチンのインストールを終え、カーネルとゼロの戦いを止めなければ。

「止めろ!俺達がここで出会ったのは戦うためじゃない!!」

「うるさい!!どこで出会ったとしても私達は戦う運命だったろう!!」

ゼロは何とか戦いを避けようとするが、カーネルは聞く耳持たない。

「お前はアイリスを助けるためにここに来たんだろう!?」

「ワクチンのインストールは開始された……妹は助かる!!ふぬおぉぉ!!」

カーネルはサーベルをゼロに振り下ろそうとする。

「馬鹿…野郎っ!!」

カーネルが振り下ろしたサーベルをセイバーで受け止めるゼロだが、しかしカーネルの蹴りをまともに喰らって吹き飛ぶ。

「……そうか……時も場所も関係ないか…」

「分かりきったことをっ!!」

カーネルはゼロにサーベルでの突きを繰り出すが、ゼロは紙一重でそれをかわす。

「っ!!そうだな…お前に言葉でどうにかしようとしていた俺が馬鹿だったな!!」

ゼロはセイバーを振るってカーネルを斬り裂こうとするが、カーネルはそれを腕で受け止める。

しかしそれを見越していたゼロはロッドを抜くと、突きをカーネルの胴体に叩き込んで吹き飛ばす。

「ぬう!?」

「両腕と両足を斬り落としてでも大人しくなってもらうぞ!!」

「やれるものならやってみるが良い!!」

2人の激しい戦いに仲間達はどうすれば良いのか分からずに途方に暮れる。

「だああもう!!何だこりゃあ!?」

「どうしたんだ!?」

頭を抱えながら叫ぶルナにエックスは目を見開く。

「ワクチンのインストールは終わったのにアイリスの体がエラーだらけなんだよ!!しかも更にエラーが増えやがる!!」

「何ですって!?」

「そ…そんな…こんな綺麗な顔なのに体中エラーに蝕まれているなんて………」

「何でこんな短時間でエラーが増えるんだ…?まさか…」

困惑する仲間達、途中でルナはあることに気付いた。

ゼロの攻撃がカーネルに当たる度に、掠める度にエラーが増えることに。

それが正解だと言うようにカーネルにショットが直撃した瞬間、エラーがまた1つ増えた。

「っ!ゼロ!!カーネルに攻撃するな!!カーネルのダメージがアイリスの体にエラーって形で影響を及ぼしている!!」

「何だと!?」

「くっ…余計なことを…」

ゼロとの決着を着けたいカーネルからすればルナの言葉は余計なことだった。

「以前、彼女が言っていたのは……」

それはあの大樹で体を休めていた時にアイリスと交わした会話である。

『2人で……1人……?』

『ええ、人間で言うところの双子かしら?詳しいことは知らされていないんだけどね…ゼロも兄さんから聞いてると思うけど私と兄さんは元々1体のレプリロイドだったの』

『ああ、カーネルから聞いたことがあるが…未だに信じられないところがあるな』

『ふふ、そう思うわよね?私達は過去に地球を何度も救った“力”と“優しさ”を兼ね備えた蒼いレプリロイド…レプリロイドがロボットって呼ばれていた時代の話なんだけど…そんなロボットの再来を願って造られたらしいけど……無理だったみたいね』

『その“優しさ”と“強さ”を兼ね備えたロボット…まるでエックスみたいだな』

『あ、確かにそうかも』

『アイリス、そろそろ戻るぞ。お前の仲間達が心配しているだろうしな』

ゼロはアイリスの手を引きながら拠点を目指す。

アイリスは手に伝わる温もりを感じながらゼロを見つめた。

『(でも例え失敗の末にこうなったとしても私はそれで良かった……私が私だからルインやエックス、エイリアさんにケイン博士達……そしてあなたに会えたんだから。私が私だから芽生えた想い………そして私はこの“想い”を信じる……いつかみんなで笑い合える日がまた来るって……どんな障害にも負けない“愛”がきっとあるって…)』

ギュっと、ゼロの手を握るアイリス。

『アイリス?どうした?』

『ふふ、何でもない』

アイリスとの会話を思い出したゼロは怒りの表情をカーネルに向けた。

「カーネル、お前は知っていたのか?お前のダメージがアイリスにも影響を与えることを…」

「…………」

「そうか…この………大馬鹿野郎っ!!」

カーネルの無言を肯定と捉えたゼロはアイリスに心の中で負担を与えることを謝罪しながらカーネルを殴り飛ばした。

「ぐっ!?」

「お前は!!自分のプライドと闘争心を満たすために、たった1人の妹まで巻き込むのか!?アイリスの命と未来…お前のプライドと闘争心のどっちが重いのか分からないのだとしたら……お前はどうしようもない大馬鹿野郎だーーーっ!!!」

ゼロはセイバーを放り投げるとカーネルを両拳で滅多打ちにする。

「だああっ!!」

「ぐおっ!?」

渾身の一撃がカーネルの腹部に入り、側頭部に回し蹴りを叩き込んで吹き飛ばす。

「くっ!!調子に乗るなゼロ!!」

斬擊を飛ばすカーネルだが、ゼロはかわそうともせずにダッシュ、エアダッシュを駆使してカーネルとの距離を詰める。

そして手にエネルギーを纏わせながらカーネルの懐に入った。

「これで終わりだカーネル!!落鳳波!!!」

カーネルのアーマーにエネルギーを纏わせた指をめり込ませ、そのエネルギーをカーネルに注ぎ込んだ。

「ぐああああ!?」

「落鳳波のエネルギーをお前の体内に一気に流し込んでやる!!流石のお前もこれには耐えられないだろう!!」

どれだけ頑強なアーマーでも内部は補強のしようがない。

ゼロは覚えてはいないが、カウンターハンター事件の際にシグマに操られていた時にエックスとの戦いでもアースクラッシュで同じ戦法を使用していた。

カーネルが急激に流し込まれるエネルギーに耐えきれずに内部爆発を起こし、煙が晴れると内部の機構が露になったカーネルは膝を付いた。

「終わりだカーネル。これ以上はアイリスに負担をかけられん」

「……確かに私の負けのようだな…」

「カーネル!投降してくれ!!確かに今回の戦いを引き起こしたレプリフォースの罪は重いかもしれないが、生きて罪を償ってくれ!!頼む…お願いだ…俺達は…もうこれ以上知人を失いたくないんだ…!!」

「エックス……カーネル…アイリスの命と未来…どちらが大切なのかは…お前も分かっているんだろう?」

「………分かった。こんな状態では戦うどころか満足に動くこともままならん」

道連れにするために自爆すると言う選択肢もあるが、ゼロ達はそれを許さないだろう。

「良かった…」

知人をこれ以上失わずに済んで良かったとエックスは安堵した。

ゼロはカーネルに手を差し出し、カーネルもまたそれに手を伸ばした時である。

何かを貫くような音が響いたのは。

「な…っ?」

「っ!!」

「あ…ああ…!?」

「あ、あいつは…!?」

突如鈍い痛みがカーネルを襲い、それから異物を確認する。

自身の動力炉付近から出ているのはビームサーベルの光で、あまりにも突然すぎる事態に、カーネルもゼロもエックスとルナも動けない。

状況の把握も出来ずにただ唖然とするばかりで、激戦を終えて慢心創痍の状態がその間を広げる。

「どうやら彼の情報は正しかったようですね…いけませんねえ…皆さん…イレギュラーは処分しなくては……」

「き、貴様は…」

カーネルが震えながら背後を見遣ると行方不明となっていたA級のイレギュラーハンター・ディザイアがカーネルをビームサーベルで貫いていた。

「ディザイ…ア…お前…」

「お久しぶりですねえエックス。見ていて下さい。あなたが処分出来なかったイレギュラーをこの私が処分するところをね!!」

ディザイアがサーベルを握る手に力を込めた。

「てめえ!止めろ!!」

それが何を意味するのかを悟ったルナが叫ぶが、ディザイアは狂気に満ちた笑みを浮かべながら叫んだ。

「クーーークックック!!死ーーねーーー!!カーネルーーーーーッ!!忌々しいイレギュラーーーーーッ!!!!」

ディザイアのビームサーベルの光が炸裂し、カーネルは爆散し、ゼロは爆風で吹き飛ばされる。

「ゼロ!!…ディザイア…貴様…!!」

「ふふふ…やった…遂にやったぞ…!!遂に私はレプリフォース最強の剣士。カーネルを倒したのだーーーーー!!!」

狂ったように笑いながらカーネルの部品を踏み付けるディザイア。

それに対してエックスはバスターを構えたがそれよりも早く動いた者がいた。

「ーーーーーっ!!!」

悲痛な表情を浮かべるアイリスにエックス達は目を見開いた。

カプセルを割って出てきたアイリスはエラーの影響か満足に動けないようだ。

「おやおや、良いタイミングで目を覚ましましたねえ」

「ディザイア、お前はーーーっ!!」

サードアーマーを身に纏い、怒りに任せてダブルチャージショットを放つエックス。

ディザイアはサーベルでそれらを掻き消す。

「アイリス!!」

駆け寄るルナだが、アイリスからの反応はない。

「……いの……」

「え?」

「痛いの……胸に穴が開いたように……足りない……何かが……」

少しずつ、少しずつカーネルの残骸に近寄るアイリス。

「ぐあっ!?」

ディザイアに弾き飛ばされ、壁に叩き付けられたエックス。

「ふっふっふ…どうだエックス?パワーアップした私の力は?」

「(今までのディザイアとは違う…一体何があったんだディザイアに?)」

「丁度良い、エックス。お前をここで殺し、ここにいるイレギュラー共を皆殺しにするとしよう。」

「ここにいる者達はみんなレプリフォースじゃない…!!彼らは平和のために自分達に出来ることをしようとしたんだ…断じてイレギュラーじゃない!!」

「愚かな、レプリフォースに関わるもの全てを滅ぼさねば今回のイレギュラーは消えませんよ。本当に理解に苦しみますよ、あなたみたいな愚か者に何でルインさんは……ん?」

ディザイアはカーネルの残骸に触れようとするアイリスに気付いて一瞬で距離を詰めるとアイリスを蹴り飛ばした。

「アイリス!!」

エックスが叫ぶが、蹴り飛ばされたアイリスはピクリとも動かない。

どうやら気絶したようだ。

「てめえ、戦う力がない彼女にまで攻撃するとはどう言うことだあっ!!?」

「イレギュラーですよ?イレギュラーに戦闘型も非戦闘型も関係ない。それにこれは私が有効活用してあげますよ」

その言葉に今まで動かなかったゼロの手が僅かに動いた。

「さあ、終わりの時ですよエックス。あなたを殺して私はルインさんを手に入れるんだ!!」

その言葉にエックスは怒りの表情を浮かべる。

「何だと…!?」

「あなたさえいなくなればルインさんは私の物となる!!私だけを見てくれるんだ!!」

エックスはバスターとなった腕に力を込める。

「ふざけるな…!!これ以上彼女を傷つけられてたまるか!!」

ダブルチャージショットを放つが、ディザイアは溜め息を吐きながらサーベルで弾く。

「やれやれ、分かりませんか?最早あなたと私とでは次元が……うぐっ!?」

ゼロの拳がディザイアの顔面に入り、ディザイアは受け身を取ることすら出来ずに仰向けに倒れた。

「はあ…はあ…!!」

「ぐ、ぐうう…ゼロ…き、貴様はイレギュラーを…イレギュラーを庇おうとするそいつを庇おうと言うのかあ!!?」

「黙れ…カーネルもアイリス達もイレギュラーじゃない…俺からすればお前の方が遥かに質の悪いイレギュラーだ!!」

顔を押さえながらゼロを睨むディザイアだが、ゼロもまた怒りの形相で睨みながら言う。

「わ、私がイレギュラーだと!?ふざけ…」

「ダブルサイクロン!!」

エックスはディザイアにチャージダブルサイクロンを放ち、更にダメージを与える。

「くっ!!流石に2対1では分が悪いか…覚えていろイレギュラー共!!」

カーネルの残骸と共に転送の光に包まれていくディザイアにゼロは手を伸ばしながら叫んだ。

「待て!!カーネルのパーツを返せ!!」

しかし無情にもディザイアはカーネルのパーツと共に転送されてしまう。

周囲に重たい空気がのし掛かる。

「畜生が…」

ルナは吐き捨てながら、アイリスの腫れた頬を痛ましげに見つめるのだった。 
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