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弱い敵も

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第五章

「いや、今回はな」
「何かとやな」
「考えさせられる冒険やったな」
「ああ、モンスターはあらかた倒してな」
「洞窟は安全にした」
「ギルドの依頼は果たしたにしても」
「それでもな」 
 こうハリムに言うのだった。
「最下級のモンスターでもな」
「決して侮るな」
「そのことを思い知らされたな」
「そんな冒険やったな」
「僕等は星のモンでな」
 アミンはハリムに真剣な顔で話した。
「この世界では圧倒的に強い」
「それでもやな」
「そや、強うてもな」
「最下級のモンスターでも侮るな」
「そのうえで全力で戦え」
「そうして勝てってことやな」
「獅子は鼠も全力で倒す」
 アミンはこの言葉も出した。
「そういうことやな」
「その通りやな」
「今回のことは戒めになったわ」 
 自戒、それになったと言うのだった。
 このことを今認識したその時にだった、アミンの手に。
 あるものが宿った、それは何かというと。
 一冊の書だった、アミンはその書を手にしてハリムに話した。
「不思議な書や」
「確かアラビアンナイトの」
「ハールーン=アル=ラシードが読んでたな」
「あの書やな」
「持ってるとな」
 神具であるこの書をというのだ。
「知力が上がって術を唱える速さもな」
「上がるか」
「そうした神具や」
 心の中で語ってくる声がそう教えているというのだ。
「この神具はな」
「そうなんか」
「そや、そしてな」
 アミンはさらに話した。
「神具に加えて僕自身もな」
「強くなったか」
「神託を適えた」
 それでというのだ。
「あらゆる力がこれまでより一回りな」
「強うなったんやな」
「そうなったわ」
 まさにというのだ。
「有り難いことにな」
「それは何よりやな」
「ああ、ほな今度はな」
 アミンはラクサ、麺を食べつつ話した。
「この酒と料理を楽しんでな」
「それからやな」
「次の場所に行こうな」
 こう言うのだった。
「そうしよな」
「そやな、おいら達のやることはこれからや」
「そやからな」
 神託を適えたがまだ自分達にはやるべきことがある、このことをわかっているからだった。アミンはハリムにこのことを言った。そうして店を出た時に一歩足を進めるのだった。


弱い敵も   完


                  2019・3・23 
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