八条学園騒動記
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第五百六話 イッカククジラの牙その一
イッカククジラの牙
ナンはダンと共に八条学園の中の水族館に入った、そしてすぐにイッカククジラのコーナーに向かったが。
海豚用の大きな水槽の中にいる腹が白く背は黒とブラウンの斑点模様の海豚に似た鯨を見てだ、ナンはダンに言った。
「角っていうか牙ないわよ」
「今見ているのは雌だからな」
ダンはすぐにこう答えた。
「だからだ」
「ああ、そういえば」
「雌には牙がない」
「そうだったわね」
「牙があるのは雄だ」
こちらだというのだ。
「だからだ」
「雄を見るべきね」
「雄はあれだ」
水槽の向こう側にいるその一本の牙がある個体を指差しての言葉だ。
「わかるな」
「ええ、随分長い牙ね」
見れば身体の半分くらいの長さだ、それでナンも言った。
「あれだけ長いとね」
「引っ掛けたりか」
「しないの?」
「どうもしないみたいだな」
ダンはすぐにこう答えた。
「それに引っ掛けてもだ」
「折れてなの」
「それで終わりだろうな」
「突き刺さって逃げられなくなるとかない?」
「ないみたいだ、何しろあの牙がだ」
それ自体がというのだ。
「感覚器官だからな」
「あっ、そうなの」
「だからだ」
「あの牙があるから」
「かえってな」
「ぶつかったりしないのね」
「そうらしい」
牙がいいセンサーになってというのだ。
「どうもな」
「そうなのね、しかし」
「しかし?」
「あの牙普通に何だって思うわよね」
「そうだな、ユニコーンの角みたいだ」
「というかそのままよね」
「本当にな、しかし」
「しかし?」
「イッカククジラはどの星でも少ない」
棲息している星ではというのだ。
「寒い海にいる種類が大抵だからな」
「まあこんな変わった鯨はね」
それこそと言うのだった。
「少ないわよね」
「それはわかるな」
「ええ」
こうダンに答えた。
「私もね」
「だからこの水族館でもな」
「やっと来てくれた」
「そんな感じだ」
まさにというのだ。
「レアだ」
「そうよね、やっぱり」
「恐竜程でもないが」
「恐竜はあらゆる意味でレアよね」
「数も飼育の仕方でもな」
その両方でというのだ。
「かなりだ」
「それでその恐竜と比べたらましでも」
「やはりレアはレアだ」
そうした生きものだというのだ。
「このイッカクはな」
「そうよね」
「そして北極というか寒帯はな」
そうした気候の地域はというのだ。
「面白い生きものが多い」
「ああ、シロクマとかね」
「キツネも違う」
「ホッキョクギツネよね」
「夏の身体は青がかった銀色でだ」
そしてというのだ。
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