| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ロックマンX~Vermilion Warrior~

作者:setuna
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第72話:Falling in love

現在、エックスとルインはトレーニングルームで白衣を身に纏っているエイリアに見守られながら模擬戦を行っている。

『模擬戦を始める前にエックスに幾つか言っておくことがあるわ。サードアーマーの復元が出来たんだけど、やっぱり解析が不完全で完璧ではないの。この模擬戦はどれだけサードアーマーの再現が出来たかのテストでもあるから、2人共、お願いね』

「「了解!!」」

エイリアが復元したレプリカのサードアーマーを身に纏ったエックスがルインにチャージショットを放つ。

「たあっ!!」

対するルインもZXセイバーでそれを斬り裂いて掻き消し、バスターに変形させてを構えるとショットを連射する。

エックスはそれをエアダッシュを駆使して回避し、特殊武器を繰り出す。

「レイスプラッシャー!!」

タイガードの特殊武器を放ち、ルインに回避行動を取らせるとチャージを終えたバスターを大型ドリルに変形させる。

「トルネードファング!!」

「フリージングドラゴン!!」

LXアーマーに換装したルインはチャージしたハルバードを振るって氷龍を召喚し、エックスに放つ。

チャージトルネードファングのドリルと氷龍は激突し、ドリルによって氷龍がガリガリと削られていく。

「トライアードサンダー!!」

氷龍が砕けたのと同時にチャージトライアードサンダーを繰り出し、ルインもFXアーマーに換装してチャージしたナックルバスターを構えた。

「メガトンクラッシュ!!」

チャージトライアードサンダーの拳とFXアーマーのメガトンクラッシュが激突し、あまりの衝撃にサードアーマーが耐えきれず崩壊してしまう。

「「あっ!!?」」

『……耐久性に問題ありね…ありがとう、2人共………』

エイリアのガッカリしたような声色に何故か此方が悪いことをしたような感じを覚えた。

『エックス、耐久性以外にもサードアーマーに問題がないかを聞きたいから来てくれる?』

「ああ、分かった。それじゃあルイン。次の仕事までゆっくり休んでくれ」

「うん」

エックスがトレーニングルームを後にしてエイリアの元に行き、ルインはライフボトルを口に含んだ。

「ルイン副隊長、休憩中に失礼します」

「ディザイア?どうしたの?」

声に反応してルインは振り返ると、ライフボトルを飲むのを止めて珍しい来訪者を出迎える。

ディザイアは手に資料の束を持っていた。

「資料をお届けに来ました。他の者がお忙しそうでしたので、私が代わりに…」

ディザイアは現在のハンターベースで貴重なA級ハンターのため、隊長や副隊長のエックスやルインの次に多忙な職務に追われるディザイアは滅多にルインと会うことはない。

だが、たまにはルインの顔を見たいと言うその気持ちから、ディザイアは偶然廊下で会ったハンターに頼んで、資料を届ける役目を買って出たのだ。

「ありがとう。ごめんね、ディザイアも忙しいのに面倒かけちゃって……」

ルインが資料を受け取りながら言うと、ディザイアは気にするなと言いたげに手を振る。

「いえ、お気になさらないでください。部隊の運用に必要なものですし、副隊長が喜んでくれれば私も嬉しいですから」

「優しいんだね。ありがとうディザイア」

ルインは微笑み、それを見たディザイアはその笑顔に胸が高鳴る。

彼はルインに恋をしていた。

ディザイアが知る特A級ハンターは傲慢で部下をゴミのように見る者ばかりだったが、ルインは違った。

明るく、気立てが良く、常に笑顔を絶やさない、花のような可憐な女性。

だが訓練の時は非常に厳しく、部下達の泣き言は一切許さないが、それは立場上仕方の無いことだ。

公私混同しないところも彼が惹かれるところだ。

ルインは、ディザイアが今まで特A級ハンターに抱いていた暗いイメージを払拭した。

ルインに対して感じている感情が恋愛感情というものだと、彼が自覚するのにそう時間はかからなかった。

「(しかし彼女は特A級ハンターで、副隊長の身分。それから最初の大戦で多くの戦果を挙げ、前の事件でもエックス隊長と共にあのシグマを打ち倒した方だ…)」

ただのA級ハンターで戦果も並の自分ではあまりにも不釣り合いすぎる。

だが、ルインを見つめ、会話を重ねていくうちに、次第に彼女への恋慕も強くなっていく。

ディザイアはルインがもっと明るく笑える日が早く来るように頑張りたいと、サーベルを振るい続けている。

「さてと、そろそろ部屋に戻るよ。仕事があるし、ソニアも待たせてるからね」

「ソニア…あのサイバーエルフですか」

彼が初めてソニアを見た時、あの子はまだ赤ん坊だったが、エネルゲン水晶と食物の摂取によって大分成長した。

現在では可愛らしい容姿のためにハンターベースの…主に女性型レプリロイドのマスコットとなっていた。

現在はルインと共に出撃し、彼女のパートナーとして戦っている。

しかしディザイアは常々疑問を感じていた。

傷を癒したりすることが出来たりするのは勿論、あんな小さい身体だと言うのに穴に落ちかけた重量級のレプリロイドを軽々と引き上げたり、火炎弾や電撃弾、凍結弾の嵐をイレギュラーに見舞う。

目下、特殊0部隊隊長のゼロと並んでパワーファイターではなかろうかとイレギュラーハンター達の間で囁かれている。

「う~ん、まあソニアは少しお転婆だからねえ」

あの戦いぶりをお転婆で済ませられるのは多分エックスとルインくらいしかいないだろうが。ふと、ディザイアが床を見ると1枚の紙切れが落ちていた。

それに気づいたルインは、ディザイアの視線を追うと慌てて拾う。

よく見ると紙切れは写真だったようで、写真にはエックスとルインが並び、中央にソニアが写っている。

「写真ですか」

「うん。ケイン博士が撮ってくれたの、家族写真みたいな感じ」

ルインは写真を見つめながら穏やかに告げた。

写真の中のルインはエックスと同じで優しく微笑んでいる。

「あの、副隊長…」

「何?」

「あなたは……その、エックス隊長のことがお好きなんですか?」

ディザイアは思い切って、ストレートに聞いてみた。

ルインのような色恋沙汰に疎いタイプには遠回しに聞くよりもストレートに聞いた方がいいと判断したからだ。

「え?…う~ん…エックスは私の憧れの人…かな…?多分」

「憧れ…ですか?」

「うん、私がハンターになった時から…ね」

ルインの言葉の意味が分からなかったディザイアは首を傾げた。

ルインがエックスより後にハンターになったのは知っているが、当時のエックスはB級でルインは特A級。

ランクは当然彼女の方が格上で実力とて同じ。

ルインがエックスに憧れる要素など何処にも無いはずだ。

「エックスはね…心が強い人なの。どんなに苦しい時もどんなに悲しい時もどんなに悩んでいる時も最後の最後には必ず乗り越えてしまう人…私はそんなエックスに憧れてるんだ。異性として好きかどうかはまだ分かんないや、でもエックスと一緒にいれば不思議と安心出来て、幸せな気持ちになれるんだ」

「(…それが“愛”という感情なんですよルインさん)」

ディザイアは、ルインとエックスを見ると互いが好意を抱いているのではないかと察していた。

この返答はある程度予想していたものの、いざ本人の口から言われると、とても辛くて悲しかった。

内面の辛さを顔に出さないよう、あえて笑おうとする。

ディザイアの胸中など知らないルインは、照れた表情をしながら、写真に視線を戻した。

「何となく…」

「え…?」

「何となく副隊長の言いたいことや気持ちが分かる気がします。私も同じですから…」

「え?何々?君、好きな人がいるの?」

それを聞いたルインは興味津々といった様子でディザイアに聞いてくる。

第17精鋭部隊副隊長であり、歴戦の特A級ハンターとはいえ、こういったところはやっぱり十代後半くらいの年頃の娘である。

「あ…はい……」

彼なりに遠まわしに想いを伝えたつもりだったのだが、鈍感なルインには伝わらなかったようである。

ルインがディザイアを異性としてそういう対象として見ていないのだから、仕方のないことではあるが。

「ねえねえ、ディザイアが好きな人って誰なの?私に教えてくれる?」

ルインが好奇心で目を輝かせながら、ディザイアの顔を見上げてくる。

「そ、それは……」

こんなに近くで彼女の顔を見たのは初めてだったので、ディザイアは動揺する。

「わ、私の好きな人は……」

「うんうん、誰なの?」

目の前にいるあなたですと、彼は言おうとしたが…。

「……黙秘させて頂きます」

恥ずかしくて土壇場で言えなかった。

「え~?」

ルインは頬を膨らませて不満そうに怒ってみせる。

「す、すみません………」

困った顔をするディザイアがおかしいのか、ルインはクスリと笑う。

「まあいいや。話してくれる気になったら教えてね?楽しみにしてるからね!!」

「……はい。(ルインさん、すみません。今はまだ言えません。もっと強くなったら…あなたの隣に立てるようになったらその時は必ず言います。ルインさん、私はあなたを愛しています…と。)では、私はそろそろ戻ります。ルイン副隊長も頑張ってください」

「ありがとう。君もあまり無茶はしないでね?ゼロみたいに後先考えずの無鉄砲じゃないから大丈夫とは思うけどね」

「はい」

彼はルインの言葉に柔らかく笑うと、身を翻す。

「」これからも頑張ってね、ディザイア」

肩越しに見ると、ルインが笑顔で見送っている。

それに応えるように会釈して、部屋から出て行った。

「(見ていてください、ルインさん。私はあなたを必ず守れるくらいに強くなってみせます。そしてあなたが幸せに暮らせる世界を築いてみせます)」

ディザイアはサーベルを握り締め、心に固く誓った。

全ては愛する人のために。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧