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聖剣を抜かず

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第三章

 ワイバーンを一撃で倒した碧にだ、美奈代は言った。
「あの、何か」
「どうしたんじゃ」
「はい、碧さんはワイルドですね」
「職業が野生児じゃしのう」
「そのことを置いても」
「わらわはじゃな」
「かなりです」
 ワイルドだというのだ。
「まことに」
「自分でもそう思うけえ」
「ならず者もモンスターも薙ぎ倒され」
「美奈代ちゃんも助けてくれてのう」
「私はそれ程」
 謙遜して言うが美奈代は術で碧をいつもサポートしている。
「戦っていませんが」
「いやいや、それがじゃ」
「ちゃんとですか」
「わらわを助けてくれてるけえ」
 屈託のない笑顔で言うのだった、それは幼女のそれの如き澄んだものだった。
「嬉しいけえ」
「そうだといいですが、ただ」
「今度は何じゃけえ」
「これはという殿方に婿にならぬかと」
「婿探しは駄目じゃけえ?」
「駄目ではないですが所謂逆ナンは」
 それはと言う美奈代だった。
「あまり」
「そう言うがわらわは家の跡継ぎを探してるけえ」
「起きた世界のですよね」
「そしてこの世界でも婿を探してるけえ」
 だからだというのだ。
「だからじゃけえ」
「いいと思った男の人にですか」
「声をかけてるけえが」 
 それでもとだ、碧は美奈代と共に倒したワイバーンが姿を変えた金塊を拾いながらそのうえで彼女に話した。
「まだ誰もじゃけえ」
「はいと言ってくれないですか」
「起きている時もじゃけえ、お陰でわらわはキスもまだじゃけえ」
「いきなり婿にならぬかと言われたら」
 それならとだ、美奈代は碧に答えた。
「誰もドン引きしますさかい」
「それでか」
「はい、ですから」
 それでというのだ。
「誰も頷きませんよ」
「そうだったけえ」
「はい、デートでもです」
「引くかのう」
「そうなりますよ、ましてや」
「婿、結婚となると」
「誰も引きますから」
 それがどれだけ重要なことか知っていてというのだ。
「仕方ないですよ」
「そうじゃけえ」
「といいますか」
 美奈代は碧にさらに話した。
「お婿さんはお一人ですよね」
「わらわは浮気は嫌いじゃけえ」
「婚約をされるとどうでしょうか」
「それを実家のお父さんとお母さんにじゃな」
「言われては」
「その手があったのう」
「はい、どうでしょうか」
 金塊を拾いつつ碧に提案した、ワイバーンは強力なモンスターだけあって金塊もかなりの量になっている。
「それで」
「そうじゃな、ではな」
「それならですね」
「今度実家に帰った時にお父さんとお母さんに提案するけえ」
「そうされて下さい」
 こうした話をしつつだった、二人は金塊を拾い終えると冒険の旅を続けた。碧は婿探しは両親にしてもらおうと美奈代の言葉を受け入れて決めたが。 
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